統計検定準1級の勉強のための解説記事となります。下記にご了承いただける方のみ、お読みください。
以下の動画でも解説していますので、見やすいほうでご覧ください。
問題のポイント
・期待値の性質:$E[aX+b|C] = aE[X|C] + b$ ・・・①
・$P(A|B) = \frac{P(A \cap B)}{P(B)}$より、条件付き確率密度関数は、
f(z \mid z \geq c) =
\begin{cases}
\frac{f(z)}{P(z \geq c)} & (z \geq c) \\
0 & (z < c)
\end{cases} ・・・②
・条件付き期待値:$E[X|Y \geq c] = \int_{-\infty}^{\infty} x f(x \mid Y \geq c) dx$ ・・・③
解法ノート
解答
条件付き期待値と標準化
テストの得点を$X$とすると、条件より、$X$は平均65、標準偏差10の正規分布に従います。
よって、標準化した$Z$は、$Z = \frac{X - 65}{10}$と表されます。
ここで求めたい平均は、$E[X|X \geq 65]$と表記でき、$X=65+10Z$なので、
E[X|X \geq 65] = E[ 65+10Z| 65+10Z \geq 65] = E[65+10Z|Z \geq 0]
です。ここで、式①から、
E[X|X \geq 65] =65 + 10 \times E[Z | Z \geq 0]
となります。
条件付き確率密度関数の導出
今回の問題の条件付き確率密度関数は、式②に$c=0$を代入して、
f(z \mid z \geq 0) =
\begin{cases}
\frac{f(z)}{P(z \geq 0)} & (z \geq 0) \\
0 & (z < 0)
\end{cases}
と表されます。
$Z$は標準正規分布に従うため、$f(z) = \frac{1}{\sqrt{2\pi}} e^{-\frac{z^2}{2}}$です。
また、$z=0$が境界のとき、面積が半分ずつに分かれるため、$P(z \geq 0)= \int_{0}^{\infty} \frac{1}{\sqrt{2\pi}} e^{-\frac{x^2}{2}} dx = \frac{1}{2}$です。
よって、
f(z \mid z \geq 0) = \frac{f(z)}{P(z \geq 0)} =\frac{2}{\sqrt{2\pi}} e^{-\frac{z^2}{2}}
となります。
求めたい平均の導出
ここで、式③から
E[Z \mid Z \geq 0] = \int_{0}^{\infty} z × f(z \mid z \geq 0) dz= \sqrt{\frac{2}{\pi}} \int_{0}^{\infty} z e^{-\frac{z^2}{2}} dz
と表されます。
ここで、置換積分$t = \frac{z^2}{2}$を行うと、$\frac{dt}{dz} = z$ より、$dz = \frac{1}{z}dt$です。また、積分範囲は、$z = 0$ のとき $t = 0$、$z → ∞$ のとき $t → ∞$ となります。
よって、
E[Z | Z ≥ 0] = \sqrt{\frac{2}{\pi}} \int_{0}^{\infty} e^{-t} dt =\sqrt{\frac{2}{\pi}} \left[-e^{-t}\right]_{0}^{\infty} =\sqrt{\frac{2}{\pi}} \simeq 0.798
と求まるので、
E[X|X \geq 65] = 65 + 10 \times E[Z|Z \geq 0]=72.98
が導かれます。
参考)高校数学
置換積分の公式は以下となります。
\int f(g(x))g'(x)dx = \int f(u)du \quad (ただし、u = g(x))