以下の統計検定2級®︎対策動画で用いられているスライドの一部です。
統計検定®2級対策オリジナル問題であり、非公式です。
※統計検定®は一般財団法人統計質保証推進協会の登録商標です。
問題
ある学習塾で、100 名の生徒を対象に 2 回の模擬試験を実施した。1 回目の試験結果に基づき、成績上位 30 名を「高得点群」、成績下位 30 名を「低得点群」と定義した。1 回目の試験における高得点群の平均点を $\bar{x}_H$、低得点群の平均点を $\bar{x}_L$ とする。次に、2 回目の試験におけるそれぞれの群の平均点 $\bar{y}_H$ と $\bar{y}_L$ を算出したところ、$\bar{y}_H < \bar{x}_H$(高得点群の平均点が低下)かつ $\bar{y}_L > \bar{x}_L$(低得点群の平均点が上昇)という結果になった。
この現象に関する記述として、最も統計学的に妥当なものを次の①〜⑤のうちから一つ選べ。
① 2 回目の試験は、高得点群の生徒にとっては難化し、低得点群の生徒にとっては易化したため、このような結果になったと考えられる。
② 高得点群の生徒は 1 回目の結果に満足して油断し、一方で低得点群の生徒は結果に奮起して努力したため、このような差が生まれたと考えられる。
③ 1 回目の試験で極端に高い、あるいは低い点数を取った生徒の成績には、実力に加えて偶然の要因が影響している可能性が高い。2 回目の試験では、その偶然の要因が繰り返されるとは限らないため、両群の平均点は全体の平均値に近づく傾向がある。
④ このような結果は通常起こり得ない。何らかのデータ集計上の誤りがあったか、あるいは試験の採点基準が 1 回目と 2 回目で異なっていた可能性が高い。
⑤ この傾向が今後も継続するならば、最終的には高得点群と低得点群の生徒の平均点は完全に一致し、学力差はなくなると結論付けられる。
解答
③
ポイント解説:平均への回帰
この問題の核心は「 平均への回帰 」という統計的な現象を理解しているかどうかです。
概念の解説
私たちの身の回りの測定値の多くは、 「真の値(実力)」 と 「偶然の誤差」 の2つの要素で構成されていると考えることができます。
測定値 = 真の値 + 偶然の誤差
例えば、テストの点数で考えてみましょう。
- 真の値: その生徒が持つ本来の学力
- 偶然の誤差: 試験当日の体調、問題との相性、ヤマ勘が当たった/外れた、など
概念の解説
1回目の試験で 極端に高い点数 を取った生徒は、高い「真の学力」に加えて、「偶然の誤差」が プラス に大きく働いた可能性が高いです。(例:ヤマ勘が冴えわたった)
同様に、1回目の試験で 極端に低い点数 を取った生徒は、「真の学力」に加えて、「偶然の誤差」が マイナス に大きく働いた可能性が高いと考えられます。(例:体調が最悪だった)
概念の解説
2回目の試験では、偶然は偶然なので、1回目と同じように極端にプラスやマイナスに働くとは限りません。多くの場合、偶然の誤差の影響は1回目より小さくなります。
その結果、
- 1回目に非常に良かった人は、2回目には少し成績が下がる傾向がある。
- 1回目に非常に悪かった人は、2回目には少し成績が上がる傾向がある。
このように、 一度目の測定で極端な値を示したものが、二度目の測定では集団の平均値に近い値に「戻る(回帰する)」傾向 があること。これが「 平均への回帰 」です。
なぜこの概念が重要なのか?
「平均への回帰」を知らないと、 相関関係と因果関係を混同し、誤った結論を導いてしまう 危険性があります。
例えば、
- 「業績が最悪だった店舗の店長を交代させたら、翌月には業績が回復した。新しい店長は優秀に違いない!」
- 「すごく体調が悪い時に栄養ドリンクを飲んだら、翌日には少し良くなった。このドリンクは効果がある!」
なぜこの概念が重要なのか?
これらの出来事は、本当に店長交代や栄養ドリンクが原因でしょうか?
もちろん、その可能性もあります。しかし、業績や体調が「極端に悪い」状態だったため、何もしなくても「 平均への回帰 」によって自然に少しは改善した、という可能性も大いに考えられるのです。
この現象を念頭に置かないと、効果を過大評価したり、存在しない因果関係を見出したりする誤りを犯してしまいます。
解答の根拠
ある学習塾で、成績上位 30 名を「高得点群」、成績下位 30 名を「低得点群」と定義した。2 回目の試験では、高得点群の平均点は低下し、低得点群の平均点は上昇した。
まさに、この問題で起きている現象が「 平均への回帰 」です。
解答の根拠
-
高得点群: 1回目で成績が極端に良かった生徒たちは、「実力」に加えて「 偶然のプラス要因 」が重なった可能性が高いです。2回目では、その偶然が再現されにくいため、平均点は全体の平均値に近づきます。
-
低得点群: 1回目で成績が極端に悪かった生徒たちは、「実力」に加えて「 偶然のマイナス要因 」が重なった可能性が高いです。2回目では、その偶然が再現されにくいため、平均点は全体の平均値に近づきます。
この統計的なメカニズムを最も的確に説明しているのが、選択肢③です。
問題
ある農業研究所が、肥料 A, B の効果を比較するために実験を計画しました。
[1] 20 区画の実験農地を無作為に 10 区画ずつ 2 つのグループに分け、一方には肥料 A を、もう一方には肥料 B を使用しました。両群の母分散は等しいと仮定します。
| 肥料の種類 | 区画数 | 平均収穫量(kg) | 不偏分散 |
|---|---|---|---|
| 肥料 A | 10 | 55.0 | 12.0 |
| 肥料 B | 10 | 52.0 | 14.0 |
※なお、両群の収穫量は、それぞれ正規分布に従う母集団からの標本と仮定する。
母平均の差 $\mu_A - \mu_B$ の 95%信頼区間を求めます。プールした分散 $s_p^2$ は 13.0、自由度 18 の t 分布における上側 2.5%点は 2.101 です。信頼区間を求める式として正しいものを、次から一つ選べ。
① $3.0 \pm 2.101 \times \sqrt{13.0 \left(\frac{1}{10} + \frac{1}{10}\right)}$
② $3.0 \pm 1.960 \times \sqrt{13.0 \left(\frac{1}{10} + \frac{1}{10}\right)}$
③ $3.0 \pm 2.101 \times \sqrt{\frac{12.0}{10} + \frac{14.0}{10}}$
④ $(55.0 - 52.0) \pm 2.101 \times \frac{\sqrt{13.0}}{\sqrt{10}}$
⑤ $3.0 \pm 2.101 \times \sqrt{\frac{13.0}{10}}$
解答
①
問題
[2] 土地の肥沃度の違いを考慮し、計画を変更しました。10 箇所の畑をそれぞれ半分に区切り、片方に肥料 A、もう片方に肥料 B をランダムに割り当てました。収穫量の差 $d = (\text{A の収穫量}) - (\text{B の収穫量})$ を計算しました。
| 測定数 | 平均 | 不偏標準偏差 | |
|---|---|---|---|
| 差 $d$ | 10 | 3.0 | 4.0 |
※なお、収穫量の差 d は、正規分布に従う母集団からの標本と仮定する。
対応のあるデータとして母平均の差 $\mu_d$ の 95%信頼区間を求めます。自由度 9 の t 分布における上側 2.5%点は 2.262 です。信頼区間を求める式として正しいものを、次から一つ選べ。
① $3.0 \pm 2.262 \times \frac{4.0}{\sqrt{10}}$
② $3.0 \pm 1.960 \times \frac{4.0}{\sqrt{10}}$
③ $3.0 \pm 2.262 \times \frac{4.0^2}{\sqrt{10}}$
④ $3.0 \pm 2.262 \times \frac{4.0}{10}$
⑤ $3.0 \pm 2.306 \times \frac{4.0}{\sqrt{10}}$
解答
①
ポイント解説:独立な2標本 vs 対応のある2標本
この問題の核心は、 「独立な2標本」と「対応のある2標本」の違いを理解し、それぞれに適した統計手法を選択できるか どうかです。
どちらも「2つのグループの平均値の差」を評価しますが、データの構造が根本的に異なります。
1. 独立な2標本
-
状況: 比較したい2つのグループが、互いに何の関係もない個体から構成されている状況です。問題[1]のように、「20区画の農地をランダムに10区画ずつに分ける」のが典型例です。
-
分析: 2つのグループそれぞれの平均値とばらつきを基に「平均値の差」を評価します。ばらつきの情報を統合した「 プールした分散 」を用いることがあります。
-
信頼区間のイメージ: (Aの平均 - Bの平均) ± (係数) × (2群のばらつきを考慮した 標準誤差)
2. 対応のある2標本
-
状況: 比較したい2つのデータが、何らかの形でペアになっている状況です。問題[2]のように、「 同じ 畑を半分に分けてAとBを試す」のが典型例です。
-
分析: ペアに共通する要因(個体差)の影響を排除できる ことが最大のメリットです。ペアごとの 差 ($d = \text{A} - \text{B}$) を計算し、この「差のデータ」だけを分析します。
-
信頼区間のイメージ: (差の平均) ± (係数) × (差のデータのばらつきを考慮した 標準誤差)
なぜこの区別が重要なのか?
データの構造に合わせた分析手法を選ぶことは、統計的推論の信頼性を担保する上で極めて重要です。
もし、 対応のあるデータを誤って独立な2標本として分析してしまうと、本来除去できるはずだった個体差(畑の肥沃度の違いなど)が大きなノイズとして残り、ばらつきが過大に評価されます。
その結果、本当は効果に差があるのに「統計的に有意な差はない」という誤った結論に至る可能性が高まります。
解答の根拠:問題[1]
20 区画の実験農地を 無作為に 10 区画ずつ 2 つのグループに分け 、一方には肥料 A を、もう一方には肥料 B を使用した。
「無作為に分ける」という記述から、グループAとBには何の関連性もありません。したがって、これは 独立な2標本 の問題です。
独立な2標本の母平均の差の95%信頼区間の公式は以下の通りです。
(\bar{x}_A - \bar{x}_B) \pm t_{0.025}(n_A+n_B-2) \sqrt{s_p^2 \left(\frac{1}{n_A} + \frac{1}{n_B}\right)}
解答の根拠:問題[1]
問題文の値を代入します。
- 平均の差: $\bar{x}_A - \bar{x}_B = 55.0 - 52.0 = 3.0$
- 自由度18のt値: $t_{0.025}(18) = 2.101$
- プールした分散: $s_p^2 = 13.0$
- 標本サイズ: $n_A = 10, n_B = 10$
これらを公式に当てはめると、以下のようになり、選択肢①が正しい式となります。
$$
3.0 \pm 2.101 \times \sqrt{13.0 \left(\frac{1}{10} + \frac{1}{10}\right)}
$$
解答の根拠:問題[2]
10 箇所の異なる農家の畑を提供してもらい、 それぞれの畑を半分に区切って 、片方に肥料 A、もう片方に肥料 B をランダムに割り当てて使用した。
「それぞれの畑を半分に区切って」という記述から、「同じ畑」の中でAとBが比較されています。データは「畑」単位でペアになっています。
したがって、これは 対応のある2標本 の問題です。差のデータ $d$ を用いて、その母平均 $\mu_d$ の信頼区間を求めます。公式は以下の通りです。
$$
\bar{d} \pm t_{0.025}(n-1) \frac{s_d}{\sqrt{n}}
$$
解答の根拠:問題[2]
問題文の値を代入します。
- 差の平均: $\bar{d} = 3.0$
- 自由度 $n-1 = 9$ のt値: $t_{0.025}(9) = 2.262$
- 差の不偏標準偏差: $s_d = 4.0$
- ペアの数: $n = 10$
これらを公式に当てはめると、以下のようになり、選択肢①が正しい式となります。
$$
3.0 \pm 2.262 \times \frac{4.0}{\sqrt{10}}
$$