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簡単にPythonスクリプトから実行ファイルを作れるNUITKA-Utilities hinted-compilationの使い方

Last updated at Posted at 2020-01-29

はじめに

Pythonスクリプトを他人に渡したいとき、相手のPCでも環境構築するのは手間です。可能なら実行ファイルにしたいと思います。それを実現する便利なモジュールとして、PyinstallerやNuitkaがあります。後者はCに変換してからコンパイルを行い、実行ファイルの容量が小さい、実行速度が速いといった特徴があるそうです。

Nuitkaはコンパイルした後、実行してImportErrorが出たら修正するなど面倒なことがあります(Pyinstallerも)。そこでNUITKA-Utilitiesのhinted-compilationを用いて、Pythonスクリプトを一度走らせて使用したモジュールを把握してからコンパイルすることで失敗が減ります。とても簡単に使えて便利だったのでPyinstallerとの比較を交えて紹介したいと思います。

参考

こちらでNUITKA-Utilitiesを知りました。hinted-compilation以外のスクリプトの使い方はこちらをご参考にしてください。
Qiita:NUITKA-Utilitiesで簡単Pythonコンパイル

1. NUITKA-Utilitiesの準備

NUITKA-Utilitiesをダウンロードします。GitHub:NUITKA-Utilities
予めnuitka, pysimplegui, MinGWのインストールを行います。Anaconda環境の場合は、以下の通りです。

conda install -c conda-forge nuitka
conda install -c conda-forge pysimplegui

MinGWのインストールは少し注意が必要で、インストール済みのPythonのアーキテクチャと合わせる必要があります。コマンドプロンプトにPythonと打ち込んで確認します。

C:\>python
Python 3.7.4 (default, Aug  9 2019, 18:34:13) [MSC v.1915 64 bit (AMD64)] :: Anaconda, 
Inc. on win32

Let'sプログラミング:MinGW-w64のダウンロードとインストールを参考にMinGWをインストールします。
上記の例ではPythonが64bitなので、MinGWのインストーラのArchitectureをx86_x64に変更します。
MinGWinstaller.png

PATHがちゃんと通っているか確認します。

C:\>gcc --version
gcc (x86_64-posix-seh-rev0, Built by MinGW-W64 project) 8.1.0
Copyright (C) 2018 Free Software Foundation, Inc.
This is free software; see the source for copying conditions.  There is NO
warranty; not even for MERCHANTABILITY or FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE.

別のバージョンがもともとあるなどでPATHを設定したくないときは、MinGWのインストール先のmingw-w64.batを実行すれば良いです。

2. NUITKA-Utilities hinted-compilationの使い方

説明のために、コンパイルしたいスクリプトファイルの名前をyourscript.pyとします。

  1. NUITKA-Utilities\hinted-compilationディレクトリに移動して、以下のようにスクリプトを実行します。
    スクリプトが実行され、使用されたモジュールがjsonファイルに書き出されます。

     python get-hints.py yourscript.py
    
  2. 続いて以下のようにスクリプトを実行します。このときyourscript.pyと先程のjsonファイルは同じ階層に置きます。

     python nuitka-hints.py yourscript.py
    

これだけでPythonスクリプトファイルから実行ファイルが作れます。ファイルを一つにまとめたい場合は、onefile-maker-windows.pyを使用します。

3. ファイル容量、実行速度・起動速度の比較

コード

SPI3で出てきた問題を題材にコードを書きました。これを例に実行速度と起動速度を計測します。

import numpy as np
import time

def coin_prob(N=1000000):
    """
    10円1枚、5円玉2枚、1円5枚を投げて、
    表が出たコインの金額を足す。
    15円になる確率はいくらか。
    """
    coins = np.array([10,5,5,1,1,1,1,1])
    count=0
    for _ in range(N):
        heads_or_tails = np.random.randint(0,2,len(coins)) #0か1
        if np.sum(coins*heads_or_tails) == 15:
            count += 1
    print("確率は{}".format(count/N))

def main():
    """
    10回の平均時間と標準偏差を求める。
    """
    elapsed_times = []
    for _ in range(10):
        start = time.time()
        coin_prob()
        end = time.time()
        elapsed_times.append(end-start)

    ave_time = np.average(elapsed_times)
    std_time = np.std(elapsed_times)
    print("処理時間={0}±{1}".format(ave_time,std_time))

if __name__ == "__main__":
    start_all = time.time()
    main()
    end_all = time.time()
    print("総経過時間{}".format(end_all-start_all))

Pyinstaller、Nuitka双方とも一つのファイルにまとめるオプションはつけていません。

余談ですが、Pyinstaller、Nuitkaともにすんなり行かず、少し苦しみました。
Pyinstallerはこちらの記事を参考に解決しました。
Qiita:Pyinstallerを使ってPythonコードから生成した実行ファイルについて、実行時エラーModuleNotFoundErrorを回避
Nuitkaはmkl関係でうまく行かずこちらで解決。
ぬうぱんの備忘録:conda 環境下で mkl のロードに失敗するときの対処法あれこれ

ファイル容量

はじめにNuitkaはファイル容量が小さいと言いましたが、そうでもありませんでした。
これから改良が続いて、余計なモジュールをインポートしなくなるといいですね。

Original Pyinstaller Nuitka
1.02KB 569MB 623MB

実行速度

コイン投げ試行1セットの処理時間として、10回の平均と標準偏差を示します。
本旨に外れますが、Numba jitも比較に入れました。高速化を求めるならこちらを使ったほうが良いです。

Original Pyinstaller Nuitka Numba jit
Time s 18.44±0.54 18.30±0.26 4.275±0.076 0.2299±0.1281
Gain 1.000 1.008 4.314 80.21

起動速度

Windows Server 2003 Resource Kit Toolsのtimeit.exeでプログラムの起動から終了までの時間を計測し、プログラム内部でのmain関数の処理時間との差として、3回計測を行いました。

Original Pyinstaller Nuitka
Time ms 213.3±2.8 235.8±2.2 88.39±1.72
Gain 1.000 0.905 2.414

まとめ

ファイル容量を除いて、実行速度・起動速度の点では、Pyinstallerより優れた性能がでました。Pyinstallerよりはエラーが少なく、簡単なのでおすすめです。

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