移動タイプについて
- 発注品が納入されると、棚卸資産の増加により、在庫勘定が借方に計上されます。
- では、その金額はいくらになるでしょうか?いくら棚卸資産が増えたかという在庫評価の方法として、SAP ERPでは、移動平均原価法と標準原価法の2通りがあります。
標準原価
- 標準原価法は、購入価格の変動に関わらず、ある一定の価格で品目の評価を行います。
- 通常、標準原価は、「品目+プラント」ごとに、設定します。
言い換えると、ひとつの品目に対して、プラントごとに異なる標準原価を設定可能です。
※パラメータ設定により
・「品目+会社コード」に、標準原価の設定も可能です。(SAP非推奨なので、通常不使用)
・「品目+プラント+評価タイプ」に、標準原価の設定も可能です。(要件により、標準原価の設定を、より細かく管理したい場合に使用します)
- 発注品入庫により、在庫金額は、入庫数量 × 標準原価 分だけ増加します。
- 標準原価は、ある一定期間変わることはありません。
- したがって、在庫金額は、あくまで品目マスタで設定されている標準原価 × 在庫数量 によって評価されることになります。
- 入庫請求仮勘定は、仕入先に対する債務の予定金額ですので、購買発注金額になります。
- 発注金額と「標準原価 × 入庫数量」が一致しない場合、その差額分が、借方、または、貸方に購入価格差異という費用勘定で発生します。
- 標準原価に設定されている品目を出庫した場合の消費金額は、「標準原価 × 出庫数量」で計算されます。
移動平均原価
- 移動平均原価法は、購入価格を品目の評価に、常にリアルタイムで反映させる方法です。
- 発注品入庫により、在庫金額は、購買発注金額により評価されます。
- 入庫請求仮勘定は、仕入先に対する債務の予定金額ですので、同様に購買発注金額となります。
- 借方、または、貸方においても購入価格差異は発生しません。
- 移動平均原価法においては、購買発注金額がリアルタイムで在庫勘定に反映されます。
- 在庫評価額は、購買発注金額分だけ増加し、在庫数量は入庫数量分だけ増加します。
- この時、品目の単価(つまり、移動平均原価)は、在庫合計金額 ÷ 在庫合計数量によって計算され、入庫と同時にリアルタイムで計算されます。
- 移動平均原価に設定されている品目を出庫した場合の消費金額は、「(出庫時点での)移動平均原価 × 出庫数量」で計算されます。
※入出庫伝票登録の重要項目である「移動タイプ」のパラメータ設定によっては、出庫金額を指定しての出庫も可能です。(但し通常、出庫金額指定は行いません。)
実地棚卸
- 実地棚卸は、以下のステップからなります。
①実地棚卸伝票登録
棚卸対象の品目を選択して、実地棚卸伝票を登録する。
②検数入力
棚卸実施後、検数結果をシステムに入力する。
③差異確認
差異一覧で帳簿在庫と検数結果の差異を確認します。
確認の結果、検数入力をやり直す場合、再検数処理を行います。
④差異決済
差異転記を行うと、在庫数量と在庫金額が更新されます。
差異分の入出庫伝票と会計伝票が自動登録され、棚卸差異が計上されます。