移動タイプについて
- 在庫の移動がどのように行われたのかは、3桁の移動タイプによって識別されます。
在庫移動の際(入出庫伝票が登録される際)には、常に、移動タイプが必要になります。
入出庫伝票明細は、必ず、移動タイプをもちます。 - 主要な移動タイプは、SAP標準で用意されており、例えば、発注品入庫の場合は、移動タイプ:101、仕入返品の場合は、移動タイプ:122を使用します。
(SAP標準の移動タイプで要件を満たさない場合は、移動タイプの新規作成も可能です。) - 在庫数量が増えるのか減るのか、在庫金額が増えるのか減るのかといったことや、さらに、在庫金額に変化がある場合、どの勘定コードを使って仕訳が発生するのか等、在庫管理上、重要な事柄が移動タイプによって決まります。
在庫タイプ
- 在庫品が品質上良品であるどうかを識別する区分として、在庫タイプを使用します。
①利用可能在庫
良品であり、生産活動に投入したり、出荷したりできる在庫
②品質検査在庫
現在、品質検査を行っている在庫
③保留在庫
使用を差し止めている在庫 - 入庫登録時に、入庫されるモノの状態に応じて、在庫タイプを指定することができます。
- 在庫タイプの違いは会計上の仕訳には影響しません。
(=後述の在庫タイプ間の振替処理で、会計伝票は転記されません。)
- 利用可能在庫と他の2つの在庫タイプとの違いは、得意先への出荷、生産活動への投入目的での出庫は、利用可能在庫からのみ可能、ということです。
- 仕入先への返品、廃棄については、いずれの在庫タイプの在庫からも可能です。
※いずれも、厳密にはパラメータ設定に依存しますが、SAP標準の設定が上記の様になっており、通常では設定変更することは有りません。
- 品質検査在庫、保留在庫が良品と判断されて、使用できるようになった場合、利用可能在庫へ振替えてから出庫します。
- 在庫タイプの振替用の移動タイプが用意されていますので、該当する移動タイプを使用して、入出庫伝票を登録します。
※在庫タイプ間の振替の入出庫伝票登録では、会計伝票は転記されません。
入庫の影響
- 入出庫伝票の登録にともない、システムでは様々なデータがリアルタイムで更新されます。
(上図は、発注入庫時の例です。)
・在庫数量と在庫金額が増加し、品目マスタへ反映されます。
品目マスタでは、在庫数量と在庫金額をリアルタイムに把握可能です。
・財務会計(FI)モジュール側では、在庫計上と予定債務計上のために、会計仕訳伝票が
自動的に登録されます。
・また、入庫情報は購買発注伝票にも履歴情報として更新されます。
※厳密には、移動タイプ、品目マスタの設定等により、在庫金額が更新されない場合も有ります。
在庫金額が更新されない場合は、会計伝票も登録されません。
※在庫金額が更新されない入出庫伝票の例)
・在庫タイプの振替
・保管場所間転送
・在庫金額を管理しない品目(品目タイプが、「非評価品目」)の在庫移動。
・標準原価品目でありながら、標準原価が設定されていない場合の在庫移動。 など。
入出庫伝票の取消(訂正)
- 入出庫伝票が一旦登録されると、主要な項目を変更することはできません。
- 誤って入出庫伝票を登録した場合は、その入出庫伝票を取消して、再度登録を行います。
- 入出庫伝票の取消しを行うと、別の入出庫伝票が登録され、システム内では、もとの登録処理とまったく逆の処理が発生します。(発注入庫の取消しの場合、在庫数量が減り、会計側では、入庫時と逆の仕訳が発生します。)
- 取消し後、再度、正しい内容で入出庫伝票の登録を行います。
- 誤った内容をデータベースから消してしまうのではなく、やり直しのプロセスもすべて記録するという仕組みは、データの改ざんを防ぐというセキュリティ・ポリシーにもとづいています。
特殊在庫
- SAP ERPでは、様々な種類の在庫数量を把握することが可能です。
- 例えば、仕入先からの預かり在庫(受託品)、得意先への預け在庫(預託品)、外注先への支給在庫 等がシステムで管理できます。
在庫タイプと入出庫
- 前述した在庫タイプの振替処理に加えて、さらに、関連する在庫データと移動タイプの関連を表しています。
- 入庫保留在庫、売上返品は、自社資産ではありません(棚卸資産ではありませんので、実地棚卸処理においても対象外となります)。
- 仕入先からの納入時に、入庫保留在庫として入庫した場合、入出庫伝票は登録されますが、自社資産には計上されないため、会計伝票は発生しません。
品目間振替
- 品目コード間の振替処理を入出庫伝票を使用して行います。
- 品目マスタ 基本ビューの基本数量単位が同じであることが前提条件となります。
- 振替元の品目と、振替先の品目の原価が異なる場合、品目振替により発生する差額を在庫転送損、もしくは在庫転送益とする会計伝票もリアルタイム転記されます。
保管場所間転送<1ステップ手順>
- 同じプラント内の保管場所間の在庫転送を行うことができます。
- すべての在庫タイプにおいて転送処理が可能です。
- 1回の入出庫登録で、「転送元保管場所からの出庫」と「転送先保管場所への入庫」が同時に処理されます。(1ステップ手順)
- 保管場所間転送では、会計伝票は転記されません。
(後述のプラント間転送では、品目の原価に差異が有る場合、会計伝票が発生します。)
保管場所間転送<2ステップ手順>
- 同じプラント内の保管場所間の在庫転送を行うことができます。
- 利用可能在庫から利用可能在庫への転送のみ可能です。
- 移動タイプ:313で入出庫伝票を登録すると、一旦、転送中在庫になります。さらに、移動タイプ:315で入出庫伝票を登録すると、転送中在庫から利用可能在庫になります。(2ステップ)
- 保管場所間転送では、会計伝票は転記されません。
(後述のプラント間転送では、品目の原価に差異が有る場合、会計伝票が発生します。)
プラント間転送
- 異なるプラント間での在庫転送を行うことができます。
- 保管場所間転送と同じように、1ステップ、2ステップ両方の処理が可能です。
- プラント間転送(2ステップ)における転送中在庫はどこの保管場所にも属さない在庫として扱われます。
- プラント間転送では、品目の原価に差異が有る場合、会計伝票が発生します。
ロット管理
- 品目ごとに(正確には、「品目+プラント」ごと:次頁参照)、ロット管理を有効化します。
- 購買や生産での入庫登録時に、ロット番号を採番します。
- 出庫/在庫転送など在庫移動にともない、ロット番号を指定して出庫処理を行います。
- ロット管理を有効化した品目は、在庫移動時に、常にロット番号を指定する必要があります。
- 逆にロット管理を有効化していない品目には、ロット番号を採番することはできません。
- 在庫は、品目 > プラント > 保管場所 > ロット で管理されます。
- 在庫状況照会画面では、ロット番号ごとの在庫数量が把握可能です。
シリアル管理
- シリアル管理は、品目1単位を一意に採番して個体管理する場合に使用します。
- 品目マスタにシリアル番号プロファイルを設定することで、品目に対してシリアル管理を有効化することができます(「品目+プラント」に対して設定。次頁参照)。
- シリアル番号プロファイルは、カスタマイズ(パラメータ設定)で定義します。
- シリアル番号プロファイルでは、どういった処理においてシリアル番号の入力が必須/可能であるか等を設定します(例:入出庫処理:必須、製造指図登録時:任意、受注時:任意、出荷(出庫)時:必須 等)。
- 在庫状況照会画面では、シリアル管理している品目の在庫に対して、シリアル番号を一覧で照会可能です。