今回初めてリレーブログを担当させていただくメカトラックスの永里です。
弊社(メカトラックス)は、主に電子機器の開発を手がけていますが、オリジナル製品としてRaspberry Pi の業務用途向け周辺モジュールを開発しています。今回、これら製品を使用し、SORACOM Airにて稼動する屋外IoT/M2M計測機器のデモを紹介致します。
今回は前編として主にハードウエア構成を中心に、近日中に後編としてSORACOMのサービスを使ったデータ送信まわりについて予定しています。
本投稿からのお問い合わせが多く、「Pi-field(パイフィールド)」という名称で、製品化致しました。
詳細は、こちらを参照ください。
通信はワイヤレスになったけど、電気はいるよね?
SORACOMのサービスを利用することで、日本国内のほぼどんな所からでもワイヤレスでデータ送信するシステムは構築できます。ただ、どんなシステムでも当たり前ですが電源は必要ですので(笑)、今回は最も一般的な太陽光パネル+蓄電池(バッテリー)で電源を構成し、通信はSORACOM Airを使用することで、完全スタンドアロンで稼動する仕組みを構築しました。
大まかなハードウエア構成図
太陽光パネル+蓄電池で電源を構成する場合、太陽電池充放電コントローラ(チャージコントローラ)を使用すると便利です、というか使用しないとキツイです(笑)。チャージコントローラはカンタンに言うと、昼間は太陽光パネルで発電された電力を蓄電池へ充電しつつシステムへ給電、太陽光パネルが機能しない夜は蓄電池から給電といった動作を自動で切り替えて行う機器で、今回は㈱電菱のSA-MN05-8を使用しました。(価格は実売で4000円前後です、ググると出てきます)。結線も直感的で分かりやすいです。
SA-MN05-8については、メーカの公式サイト・ドキュメント等を参照ください。弊社での技術的サポートは致しかねますので予めご了承ください
あとは、ラズベリーパイ(今回は model B+を使用)、SORACOM Air でデータ通信を行うラズパイ用3G通信モジュール「3GPI」を使用しますが、これらに対して、上掲の構成図を見て頂きたいのですが、ラズパイ用電源管理モジュール「slee-Pi」を経由して給電しています。
太陽光パネルと蓄電池の容量と「slee-Pi」
システムの消費電力は、使用するセンサーや周辺機器、測定やデータ送信を含む処理の頻度などで決定されます。当然、消費電力を下げれば、太陽光パネルと蓄電池の容量も小さく(=安価に)出来ますので、最適なシステム構成・処理内容を検討することになります。
一方、システムとして測定や送信を行わない待機状態が許容できるのであれば、例えば測定とデータ送信は10分間隔、それら処理は1分もあれば完了する場合、残りの9分は電源を落としてできるだけ消費電力を抑えたいところです。そこでネックになるのが、ラズパイ自体をシャットダウンしてしまうと、人の手を介さない限り、再起動が出来ないということです。。。ここで「slee-Pi」(スリーピー)が活躍します。
ラズパイ用電源管理モジュール「slee-Pi」(スリーピー)
詳細は公式サイトを参照ください。カンタンに言うと、「slee-Pi」を使うとラズパイの間欠動作が可能となります。測定やデータ処理・送信の時にだけシステムを起動、それらに終了後にシャットダウン⇒電源断といった一連の処理をスケジューリングできます。また「slee-Pi」は広範な入力電圧に対応していますので、今回のようなチャージコントローラからの12V電源に対しても、ラズパイと「3GPI」側に5Vでの電源供給が可能となります。(「slee-Pi」はDC 6V~35Vまでの電源に対応)
ラズパイ用3G通信モジュール「3GPI」(スリー ジー パイ)
電源周りとスケジューリング動作が最適化できたら、あとはデータ送信部です。
データ送信にはセルラー(3G)のネットワークを活用し、回線はSORACOM Air、通信モジュールにはラズパイ用3G通信モジュール「3GPI」を使用します。3GPIの詳細は公式サイトを参照ください。「3GPI」はラズパイに特化した3G通信モジュールで、通信モジュールのドライバーや通信断時の自動再接続機能などを搭載したLinuxベースのOSも一緒に提供していますので、非常にカンタンに安定した3G通信が可能となります。
3GPIでのSORACOM Airの使用事例はこちら(クラスメソッド様ブログ)参照ください。
システムの外観/内部構成
ラズパイを使用したセンサーデータの取扱いについては事例も豊富ですので割愛します。今回は、温度/湿度センサーをI2C経由でラズパイに接続して10分に1回測定、クラウドに対してSORACOM Air経由でデータ送信しています。「slee-Pi」を使用することで測定・送信時以外は電源を落として低消費電力化を実現しており、常時稼動の場合と比較して消費電力は約80%削減されています。待機時の消費電力削減の効果がご理解頂けるかと思います。また、通信料に関しても(アットマークテクノ様ブログ)から引用させていただくと、
1KByte × 60sec/min × 60min/hour × 24hour/day × 30day/month = 約2.5GB/month
(Air基本料金) + (Air従量課金分) = (10円/day 30day/month) + (0.2円/MB 2500MB/month) = (300) + (500) = 約800円/month
とありますので、10分毎だと、
1KByte × 10min/hour × 24hour/day × 30day/month = 約7MB/month
(Air基本料金) + (Air従量課金分) = (10円/day 30day/month) + (0.2円/MB 7MB/month) = (300) + (1.4) = 約302円/month
となり、ほぼ基本料金でいけると思います。
以下に諸々写真を掲載します。
全体外観(裏側から)
システムはタカチ製防水ボックスの内部に配置し、これらボックスと太陽光パネルはミスミのアルミフレームで1セットにまとめてます。
ボックス内部その1
左側がチャージコントローラー、右側がラズパイ+「slee-Pi」+「3GPI」です。分かりづらいですが、この順序でラズパイ上にスタックされてます。「slee-Pi」、「3GPI」はラズパイにスタックしての併用が可能で、特別な配線も不要で非常にシンプルです。各機器の取り付け金具は適当に自作してます。
ボックス内部その2
蓄電池が見えるアングルで撮影したものです。
以上、ソフトウエア系の投稿が多いQiitaでは異色な内容と思いますが、太陽光パネルを使った完全スタンドアローンな計測システムについて、主にハードウエアの面からブログを書いてみました。近日中に、SORACOMのサービスを使ったデータ送信・ソフトウエア周りのブログと投稿予定ですので、そちらも是非ご覧ください。
※2015.11.30 後編を公開しました。
※2021.05.26 リンク切れ等修正しました。
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