レントロールPDF/CSVから直接還元法Excelを生成する、不動産収益試算OSS「revenue-kun」を開発しています。
今回、revenue-kun v0.5.2がOpenAI Plugins Directoryに掲載されました。
これにより、従来のCLI、Docker、Local Web UIに加えて、次の3つのAI環境から利用できる導線が揃いました。
- ChatGPT:OpenAI Plugins Directory
- Codex:Codex Plugin
- Claude Code:Claude Code Plugin
この記事では、revenue-kunが何をするOSSなのか、どのような構成で複数のAIエージェント環境へ対応したのか、そして不動産実務でAIを使う際に重視した設計方針を紹介します。
revenue-kunとは
revenue-kunは、レントロールPDF/CSVから直接還元法Excelを生成する、Docker対応の不動産収益試算CLIです。
入力されたレントロールから賃料や稼働状況を整理し、直接還元法による収益試算用Excelを生成します。
主な対応機能は次のとおりです。
- CSV入力
- テキスト抽出可能なPDF入力
- 直接還元法Excelの生成
- CLI実行
- Docker実行
- Local Web UI
- Codex Plugin
- Claude Code Plugin
- OpenAI Plugins Directory
- Apache License 2.0
- local-first構成
生成されるExcelには、次の3シートが含まれます。
- 直接還元法_OER
- 直接還元法_費用詳細版
- 読み取りレントロール
単に最終的な価格だけを返すのではなく、読み取ったレントロールと計算過程をExcel上で確認できる構成にしています。
OpenAI Plugins Directoryへの掲載
revenue-kun v0.5.2は、OpenAI Plugins Directoryで公開されています。
Directory上では、次の情報で掲載されています。
- Name:revenue-kun
- Version:0.5.2
- Category:Productivity
- Subtitle:Turn rent rolls into Excel
- Developer:Koichi Matsuda / Signal Yield Advisory
ChatGPTのプラグイン画面で「revenue-kun」と検索すると表示され、追加できます。
外部向けには「OpenAI Plugins Directoryに掲載された」と表現しています。
OpenAIによる推奨、認定、公式製品という意味ではありません。
なぜ複数のAI環境へ対応したのか
生成AIを使った開発環境は、単一のサービスに集約されていません。
実際の開発や検証では、次のように用途が分かれます。
- ChatGPT:一般ユーザーが会話形式で利用
- Codex:コードベースを理解した開発・実行支援
- Claude Code:ターミナルを中心としたコード操作
- Docker:ローカル環境差を抑えた実行
- Local Web UI:コマンド操作に慣れていないユーザー向け
そのため、単独のAIサービス専用にするのではなく、同じOSSを複数の環境から利用できる形を目指しました。
重要なのは、AIエージェントごとに別の計算ロジックを持たせないことです。
計算処理の本体はrevenue-kun側に置き、Codex、Claude Code、ChatGPTは、その機能へアクセスするための入口として位置付けています。
Codex Plugin対応
Codex向けには、プラグインとして認識されるためのmanifest、Skill文書、Marketplace情報などをリポジトリに含めています。
Marketplaceの追加は、次のコマンドで行います。
codex plugin marketplace add signal-yield/revenue-kun
その後、Codexで/pluginsを開き、signal-yield Marketplaceからrevenue-kunをインストールします。
現時点では、次のコマンドは公開手順には使用していません。
codex plugin add revenue-kun@signal-yield
プラグイン対応では、単にmanifestを配置するだけでなく、AIエージェントがどのような条件でツールを使うのかをSkill文書として記述する必要があります。
不動産収益試算では、入力形式、出力内容、非対応範囲、計算結果の位置付けを明確にすることが特に重要です。
Claude Code Plugin対応
Claude Code向けにも、専用のplugin manifestとMarketplace情報を用意しています。
インストール手順は次のとおりです。
claude plugin marketplace add signal-yield/revenue-kun
claude plugin install revenue-kun@signal-yield
Codex PluginとClaude Code Pluginは、同じリポジトリ内で共存しています。
両者は異なるディレクトリ構成とmanifestを使用するため、それぞれのパッケージング要件を分離しながら、実行するrevenue-kun本体は共通化しています。
Docker対応
revenue-kunはDockerからも実行できます。
不動産実務で利用されるPC環境は統一されておらず、Pythonのバージョンや依存ライブラリの違いによる問題が発生しやすいためです。
Docker対応により、ホスト環境へ直接ライブラリを追加しなくても、比較的再現性の高い形で実行できます。
AIエージェントからローカルツールを実行する場合でも、環境差を小さくできることは重要です。
Local Web UI対応
CLIだけでは、ターミナル操作に慣れていない不動産実務者にとって利用のハードルが残ります。
そこで、ローカルで動作するWeb UIも用意しています。
ブラウザからレントロールファイルを指定し、内容を確認したうえで処理できる構成です。
ただし、これはクラウド上で提供するSaaSではありません。
revenue-kunはlocal-firstを基本としており、ユーザー自身のPCまたは管理する環境で動作させる設計です。
不動産のレントロールには、テナント名、賃料、契約条件などの機密情報が含まれる場合があります。
そのため、最初から外部サーバーへアップロードすることを前提とせず、ローカルで処理できる構成を重視しました。
ブラックボックスにしない
不動産AIでは、AIが出した数値をそのまま採用できるとは限りません。
特に収益価格の算定では、次のような前提によって結果が変わります。
- 賃料収入
- 空室率
- その他収入
- 運営費用
- 修繕費
- 還元利回り
- 一時的な収入や費用を算入するか
そのためrevenue-kunでは、最終結果だけを出力するのではなく、入力情報と計算過程をExcel上で確認できるようにしています。
生成AIは判断主体ではなく、レントロールの整理や試算資料作成を支援する役割です。
不動産鑑定や投資判断では、数値の根拠を説明できることが重要です。
テストとパッケージング検証
v0.5.2公開時点で、次のテストを確認しています。
- 全pytest:444 passed
- Skill tests:7 passed
- Codex packaging:12 passed
- Claude packaging:17 passed
AIエージェント向けプラグインでは、通常のアプリケーションテストに加えて、manifest、ファイル配置、Skill記述、パッケージング要件の検証が必要になります。
本体コードが動くだけではなく、各AI環境から正しく認識されることまで確認対象にしています。
現時点の制約
revenue-kunは、すべてのレントロールを自動処理できるものではありません。
現時点では、次の入力には対応していません。
- OCR
- スキャンPDF
- スマートフォンで撮影した画像
- 画像として保存されたレントロール
- hosted SaaS
PDFについては、文字情報を抽出できるテキストPDFが対象です。
また、出力される数値は不動産収益の試算値です。
不動産鑑定評価ではなく、投資、法律、税務上の助言を行うものでもありません。
最終的な判断は、入力資料や前提条件を確認したうえで、利用者自身が行う必要があります。
Apache License 2.0で公開
revenue-kunはApache License 2.0で公開しています。
コード、計算ロジック、出力構成、AIエージェント向けSkillを確認できます。
不動産AIでは、利便性だけでなく、どのような処理が行われているかを検証できることが重要だと考えています。
特定のAIサービスへ閉じたツールではなく、OSSとして確認・修正・拡張できる形を目指しています。
GitHub
リポジトリはこちらです。
GitHub Release:
OpenAI Plugins Directory:
おわりに
今回のv0.5.2では、CLIやDockerとして動作する不動産収益試算OSSを、Codex、Claude Code、ChatGPTから利用できる形まで拡張しました。
ただし、AIエージェント対応そのものが目的ではありません。
不動産実務で使われる計算処理を、AIに丸投げするのではなく、入力、前提、計算過程を確認できる形で接続することが目的です。
不動産鑑定や不動産AMの実務では、最終的な数値以上に、その数値がどのような資料と前提から作られたかが問われます。
生成AIと不動産実務を接続するうえでも、ブラックボックスではなく、検証可能な白箱OSSという方向を引き続き追求していきます。