2026年10月7日、日本の土地価格の一次検討を支援する「tochi-satei-kun」がAgensiへ掲載されました。無料でダウンロードできます。この記事では、まず同梱サンプルを動かす手順を紹介し、その後に配布時に見直した出力先とテストを説明します。
Agensiは、AIエージェント向けのスキルを探して入手できる海外のマーケットプレイスです。作業の進め方や実行手順をまとめたスキルが、無料・有料で公開されています。開発者にとっては、作ったスキルを利用者へ届ける配布先の一つです。
Agensi
https://www.agensi.io/
同梱サンプルから試す
Agensiの掲載ページから配布ZIPを取得し、展開します。以下は、Pythonを実行できる環境で、展開先の親ディレクトリから始める手順です。依存パッケージはrequirements.txtで確認できます。必要に応じて、専用の仮想環境を用意してください。
配布ページ
cd tochi-satei-kun
python -m pip install -r requirements.txt
python scripts/main.py samples/sample_property.json samples/sample_mlit.csv samples/sample_koji.csv --json-out output/sample_result.json
この例では、物件条件、不動産取引価格のサンプル、公示価格のサンプルを渡し、JSONの保存先も指定しています。想定される出力は次の2つです。
・Excel:output/土地査定_MIN001_20260501.xlsx
・JSON:output/sample_result.json
同梱サンプルは合成データです。まず確認するのは、入力を読み込み、指定した場所に成果物を生成できるかです。サンプルの結果を、実在する物件の価値や推定精度の根拠として使うことはできません。
この記事はAgensi配布版を対象にしています。執筆時点では、以下で説明する出力先の修正はGitHub公開版へ未反映です。再現確認には上記の配布ZIPを使用してください。
使うデータと対象範囲
tochi-satei-kunは、日本の土地を対象とする一次査定ツールです。不動産取引価格情報のCSVを基にヘドニック回帰の係数を推定し、地価公示データのL01を時点修正や標準価格の確認に使います。結果はExcelに出力し、--json-outで保存先を指定した場合にはJSONも出力します。
L01は国土数値情報の「地価公示データ」です。取引価格データの分類名ではありません。L02は「都道府県地価調査データ」で、今回のツールでは未対応です。また、建物を含む取引は対象外です。
結果と計算過程を確認できるホワイトボックス型の構成にしています。ただし、用途は一次検討であり、正式な不動産鑑定評価や投資成果の保証を行うものではありません。
Excelの出力先を入力ファイルから切り離す
従来は、Excelの出力先を省略すると、物件入力ファイルが置かれたディレクトリを基準にoutputを作る設計でした。配布用ビルドでは、実行時のカレントディレクトリを基準に変更しました。
変更の要点を示すPythonの抜粋です。
from pathlib import Path
変更前のデフォルト出力先
default_out = Path(property_path).parent / "output"
配布用ビルドのデフォルト出力先
default_out = Path.cwd() / "output"
例えば、作業場所が /work/project、入力ファイルが /data/property.json にある場合、従来の標準出力先は /data/output、変更後は /work/project/output になります。参照用データの置き場に結果を混在させず、実行する作業と成果物をまとめやすくするための変更です。
ただし、Path.cwd()はリポジトリのルートを自動検出しません。ホームディレクトリから実行すれば、そこが基準になります。READMEとSKILL.mdには、作業ディレクトリへ移動して実行することと、その場所が出力先の基準になることをそろえて記載しました。
AIエージェントに実行させる場合も、起動時の作業ディレクトリを決めておく必要があります。
保存先と追加コピーを明示的に指定する
ExcelとJSONでは、保存先の指定方法が異なります。
・--out:Excelの出力ディレクトリを指定する
・--outを省略:Excelを実行時のカレントディレクトリ配下のoutputへ保存する
・--json-out:JSONの出力ファイルパスを指定する。省略時はJSONを出力しない
CLIの実行後にデスクトップへコピーする処理は、--copy-to-desktopを指定した場合だけ実行します。普段の実行で、利用者が意図しない場所にコピーを増やさないためです。
なお、利用者が明示的に選ぶ保存先は、作業ディレクトリ外にもできます。今回の変更はデフォルト動作の整理であり、ファイルシステムへのアクセスを制限するサンドボックスではありません。
説明と配布物を一緒にテストする
コードの変更に合わせて、人が読むREADMEと、AIエージェントが読むSKILL.mdも更新しました。手順書に古い保存先が残ると、処理が成功していても、実行後に成果物を探す場所を間違える原因になります。
開発環境では45件のpytestを通過しました。加えて、作業ディレクトリ外の入力ファイルを使うCLI実行と、配布ZIPを展開した状態での実行を確認しています。特に確認したのは、次の挙動です。
・外部の入力ファイルを読み込めること
・Excelの出力先を省略すると、実行場所のoutputへ保存されること
・CLIの通常実行でデスクトップへのコピーが発生しないこと
・配布ZIPの展開後も、同じ流れで実行できること
Windowsの深い階層のパスでもxlsxの生成を確認しましたが、Excelアプリで開くところまでは確認していません。ファイル生成とアプリ上での表示は、別の検証項目です。また、テストの通過件数は、不動産価格の推定精度を保証する指標ではありません。
ZIPの中身も配布仕様に含める
配布ZIPには、SKILL.md、README、requirements.txt、LICENSE、NOTICE、スクリプト、合成データのサンプルなどを含めています。pytestのテストコード、実行結果、キャッシュ、.gitなどは含めていません。上記の45件のテストは開発環境で実施したもので、ZIPだけでそのテスト一式を実行できる構成ではありません。
利用者が受け取るZIPを展開して動かすと、必要なファイルの入れ忘れや、開発環境にだけ依存する問題を確認しやすくなります。コードのテストと配布物のテストを分けておくことが重要です。
GitHubの公開ソースにはApache License 2.0のLICENSEとNOTICEがあります。Agensiでの利用・配布には同プラットフォームの適用条件もあるため、それぞれ確認してください。
自分のスキルを配布するときの確認事項
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入力元、作業ディレクトリ、出力先を別々に決める
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省略時の動作と、明示指定した場合の動作を説明する
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コードとREADME、SKILL.mdを同時に更新する
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開発環境に加え、配布ZIPを展開した状態でも動かす
Agensiへの掲載審査の通過は、推定精度や安全性の認証を意味しません。利用環境で動作を確認し、専門業務上の判断は別途行う必要があります。
まずは配布版のサンプルで、出力先とExcelの内容を確認してみてください。
参考リンク
GitHubの公開ソース
国土交通省 地価公示データ L01