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組織全体でのEVMによるプロジェクト進捗管理(1/3) : 進捗管理の課題

Last updated at Posted at 2023-11-27

■はじめに

今回紹介するのは、SPI Japan 2020, SPI Japan 2023で私が報告した事例です。
ポイントが伝わりやすいように、改めて書き直したものです。

■背景

弊社はシステムおよびソフトウェアの委託開発を行っています。弊社はパナソニックグループの会社ですが、約半分の業務はグループ外のお客様からの委託を受けています。
委託の単位でプロジェクトを立ち上げるため、常時100以上のプロジェクトが稼働しています。プロジェクト規模も様々で、数十人規模のものから1人規模のものまで存在し、プロジェクトの期間も様々です。
各プロジェクトは進捗状況を週報として課長に報告し、課長がそれらをまとめて経営層に伝えるという形の運用が行われています。

■週報での報告内容

週報には計画に対する進捗状況やトピックが記載されます。しかし、「進捗率 30%」と記載されても、それが順調なのかどうかは判断できません。
そのため、「進捗率:計画 [30% → 36%] / 実績 [30% → 35%] (1日遅れ)」のように、計画と実績が先週と比べてどう変わったのかを明示するようにしています。

■週報での報告の課題

課長や部長は週報を見てプロジェクトの状況を把握します。
しかし、週報では遅れがないように記載されているにもかかわらず、残業が多いプロジェクトが存在します。また、「○日遅れ」が続いており、一向に改善しないプロジェクトも存在します。
しかし、週報を読んでも、その週に何を行ったのかが書かれているだけで、遅れの原因や残業が多い理由については明記されていません。
これは、管理層が必要とする情報が提供されていないという問題を示しています。

■なぜ週報と齟齬があるのか

現場のリーダーたちは強い責任感を持っており、顧客と合意した日程を守るために力を尽くしています。大丈夫です。それはちゃんと知っています。

しかし、少なくともその時点では、問題は自分たちで対処可能であり、大きな問題ではないと考えています。遅れが発生すると、自分たちで解決しようと、残業をしてでも遅れを取り戻そうとします。それでも遅れが残った場合は、翌週も引き続き頑張ります。

これは一面では素晴らしいことですが、一方で、残業がコスト増につながることに注意しなければなりません。委託開発の場合、「○○万円で○○を開発して」という契約のため、残業が多いと人件費が増え、結果的に赤字になるリスクがあります。
管理層が早めにその情報を得られれば、顧客側との調整や一時的な人員の追加などの対策を考えることができます。しかし、その情報がなければ対策も打てません。

現場のリーダーと管理層との間には、この点に関する意識の差があるようです。

■この状況を改善したい

上記を踏まえ、以下の点を改善したいと考えています。
 ・管理層が必要とする、定量的で客観的な指標を用いて、各プロジェクトの状況を見える化したい。
 ・現場のリーダーに、残業がコスト増につながることを認識させたい。

これらの課題を解決するために、EVM (Earned Value Management)の導入が有効ではないかと考えました。

EVMはプロジェクトの管理の一手法であり、経済産業省やIPAでも推奨されています。プロジェクトの状況をコストに換算して予兆管理が可能なため、これらの課題を解決できると考えたのです。

次回は、このEVMについて検討した内容を説明します。

組織全体でのEVMによるプロジェクト進捗管理(1/3) : 進捗管理の課題
組織全体でのEVMによるプロジェクト進捗管理(2/3)  : EVMの運用可能性を考える
組織全体でのEVMによるプロジェクト進捗管理(3/3)  : 組織全体でEVM管理をやってみた

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