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組織全体でのEVMによるプロジェクト進捗管理(3/3)  : 組織全体でEVM管理をやってみた

Last updated at Posted at 2023-11-27

■SPIとCPIの収集を開始

すべてプロジェクトで週報にSPI, CPIの計算結果を記載するようにし、閾値を超えた場合は異常と判断し、管理層に詳細な報告を行うというルールを設けました。
SPI, CPIは1.00が正常値で、今回は0.80を閾値としました。これは、残業を最大20%程度までと想定した閾値です。
現場の負荷を軽減するために、進捗管理表のデータからSPI, CPIを計算するツールを提供しました。

最初は計測を行わないプロジェクトもありましたが、管理層からの強い要請や個別のフォローにより、最終的にほぼすべてのプロジェクトのSPI, CPIが毎週報告されるようになりました。

■収集してわかったこと①

SPI, CPIはプロジェクトの規模や期間に関係なく、すべてのプロジェクトの状況を共通の指標/閾値で確認できることが明らかになりました。
これは100以上のプロジェクトを確認する経営層にとって、非常に大きなメリットとなりました。すべてのプロジェクトのSPI, CPIを一覧で見ることができます。
以下の図は実際のプロジェクトのEVMデータ一覧の抜粋です。
EVM7.png
成熟度が上がり、閾値以下となっていたプロジェクトが減少していることが確認できます。これは閾値を超える前に対策が取られるようになったためです。

■収集してわかったこと②

SPI, CPIのデータから、ある程度、要因が推測できるようになりました。
以下の図は、SPIとCPIの値から推測される要因を示したものです。
EVM6.png

横軸はSPIで中心の1.00が計画通りで、右がスケジュール前倒し、左がスケジュール遅れを表します。
縦軸はCPIで中心の1.00が計画通りで、上が開発効率高、下が開発効率低を表します。
斜めの軸はコスト(消費工数)を表し、軸の上側がコスト余り、下側がコスト超過(残業)を表します。

閾値が0.80なので、それ以下の部分は危険であることは明らかですが、右下の部分も危険となっています。これはSPIが高くCPIが低いため、前倒しに見えますが、開発効率が低いのを工数を投入して対処しているだけなので、健全な状態ではありません。最終的にコスト超過で終わるリスクがあります。SPIが低い場合は残業してコストをかければ1.00に戻せますが、CPIが低い場合は残業しても改善しません。開発効率を向上させるか、再計画するしか対応策はありません。

左上の部分も不思議な状況です。開発効率が高く、コストも余っているのに、スケジュールが遅れている状態です。これは、複数のプロジェクトを兼務している場合によく見られます。片方のプロジェクトが忙しくて、もう片方のプロジェクトに工数を割けていないようなケースです。また、新型コロナで1週間休んだというようなケースもありました。

右上の順調すぎるのも、実は注意が必要です。順調ではあるけれども、見積もり精度が低いという課題があると考えられます。また、想定していたものより品質が低い可能性もあるかもしれません。

SPI, CPIが1.00付近にずっといるのも、少し異常です。見積りの精度が100%ということは、少し考えにくいですよね。一見正常に見えるこのケースは、調査すると、リーダー自身の工数や計画外の不具合対応の工数を計上していなかったり、与えられた時間をすべて使い切ろうとしていたりといった事例がありました。

このように、SPI, CPIは単に閾値以下であれば危険というだけでなく、SPIとCPIの値から何が起こっている可能性があるのかを推測でき、それを基に現場のリーダーにヒアリングすることで問題の有無を判断しやすくなります。

■収集してわかったこと③

驚くべきことに、管理層やリーダーだけでなく、メンバもEVMについて意識するようになりました。

SPI, CPIの乖離の要因を問われるため、それに対して説明できる必要があります。このため、毎回、「ふりかえり」を行うのと同じ状態になり、閾値を超える前に改善しようという意識が生まれました。また、SPI, CPIの値は進捗管理表に連動して計算できるため、メンバもそれを確認し、意識するようになりました。

リスクマージンを意識するようになり、残業がコスト増につながるという認識が伝わり、当初の課題の一つが解決しました。
特に、CPIの低下は残業では解決しないということが理解され、管理手法や開発手法を学びたい(学びなおしたい)という人も増えました。

■まとめ

改善したかった以下の二点は、全プロジェクトに対してEVMのSPI, CPIを導入することで解決しました。
・管理層が必要とする、定量的で客観的な指標を用いて、各プロジェクトの状況を見える化したい。
・現場のリーダーに、残業がコスト増につながることを認識させたい。

自分たちが達成したい目標を明確にし、EVMをその目標達成のツールとして活用したことで、良い成果が得られました。

もしこの記事が参考になったのであれば幸いです。ぜひ、あなたの組織でも試してみてください。

組織全体でのEVMによるプロジェクト進捗管理(1/3) : 進捗管理の課題
組織全体でのEVMによるプロジェクト進捗管理(2/3)  : EVMの運用可能性を考える
組織全体でのEVMによるプロジェクト進捗管理(3/3)  : 組織全体でEVM管理をやってみた

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