1. はじめに・プロフィール
こんにちは、Udemy講師のMaruchin Techです。
本稿では、2024年から2025年にかけて、約1年でAWS認定資格の全冠を達成した記録を公開します。
UdemyではAWS認定資格対策をはじめ、ITや製造・SCM DXなどの講座を展開しています。本記事が皆さんの学習の一助となれば幸いです。
著者プロフィール(Maruchin Tech)
大学(情報工学)卒業後、自動車メーカー(7年)、ITコンサルタント(1年)、SIer(4年)を経て2024年に独立。
2018年、自動車メーカー在籍時にAWS案件に参画して以来、主に開発要員としてAWSを用いたシステム開発に従事。2022年より本業の傍らUdemy講師として活動を開始。AWSをはじめとしたパブリッククラウドの講座を複数リリースし、本稿執筆時点でのべ9万人の受講生を抱える。
AWS認定試験の取得
「最初に一番出題範囲が広く難しいSAPを取得すれば、あとは楽になる」と考え、逆張りの戦略を取りました。
▼ 取得順序のタイムライン
SAP(2024/8) → SAA → DEA → AIF → MLA → SCS → DVA → SOA → DOP → ANS → MLS → CLF
※一部は再認定を含みます。
2. 各認定試験の難易度
ここからは、講師目線での難易度評価を紹介します。
〇 Foundational(基礎レベル)
CLF (Cloud Practitioner)
パブリッククラウドの基礎知識やAWSサービスの用途が分かっていれば、エンジニアなら難なく合格できます。ただし、Cloud Adoption Framework (CAF) や Well-Architected Framework、詳細なサポートプランの違いなど、実務では意識しにくいフレームワーク・契約周りが出題されるため、満点を目指すなら専用の対策が必要です。
AIF (AI Practitioner)
2024年に追加された、AIエンジニアおよびビジネスパーソン向け資格です。生成AIブームを反映し、Amazon Bedrock(ガードレール、エージェント機能)や、SageMaker JumpStart、責任あるAIといった概念が問われます。インフラ知識とは独立したAI領域の知識(プロンプトエンジニアリングの基礎など)が必要なため、インフラエンジニアでも無対策では合格できません。
※私はEarly Adopter期間に受験したため、問題数が多く意外と大変でした。
〇 Associate(中級レベル)
SAA (Solutions Architect - Associate)
AWS認定の登竜門とされますが、バージョンC03以降、難易度は跳ね上がっています。以前のようなシンプルにサービス名を問うような問題は減り、コンテナ(ECS/EKS)、サーバーレス(Lambda, Aurora Serverless)、コスト最適化など、プロフェッショナルレベルに近い判断力が求められます。実務経験者でも油断できない資格です。
DVA (Developer - Associate)
個人的にAssociateレベルで最も難しいと感じました。Code Familyの変更(CodeCommit/CodeStarの廃止等)に加え、CLIコマンドのオプション、IAMポリシーのJSON記述、Lambdaのバージョン管理やX-Rayによるデバッグなど、「実装者」としての解像度が求められます。
SOA (SysOps Administrator - Associate)
今回の全冠の中で、唯一満点(1000点)を取得しました。私が受験したのはC02ですが、2025年後半リリースのC03からは難化されています。AWS Organizationsを用いたマルチアカウント管理や、CloudFormationのトラブルシューティングなど、運用自動化のスキルが鍵になります。
DEA (Data Engineer - Associate)
実務でデータ分析ツールを長く扱っていたため、スムーズに合格できました。旧データ分析専門資格(DAS)の範囲が再構成されたイメージです。Glue (Crawler, DataBrew), Athena, Redshift, Lake Formationの権限管理などが頻出です。SQLの基礎知識も問われます。
MLA (Machine Learning Engineer - Associate)
Amazon SageMakerの機能理解が全てです。SageMaker Data Wrangler, Feature Store, PipelinesといったMLOps機能の知識が必須。立ち位置的にはAIFの上位互換ですが、問われる範囲は異なります。AIFはAIや生成AIの基礎的概念に重点が問われるのに対し、MLAはSageMakerによる機械学習パイプラインが主体となります。AIF同様Early Adopterで受験したため長丁場でした。
〇 Professional(上級レベル)
SAP (Solutions Architect - Professional)
一般に最難関と呼ばれる資格です。サービス範囲が膨大で、問題文も長文です。私はこれを最初に取得することで、AWSサービスの全体像を網羅的にインプットしました。最初に一番高い山を登ることで心理的ハードルを下げる戦略は、ある程度の経験者には有効です。
Disaster Recovery (RPO/RTO) 設計や、Migration Hubを用いた移行戦略などが重要です。マルチアカウント、マルチリージョン展開が主たるテーマであるため、AWS Organizations関連のサービスや機能が多く出題されます。
DOP (DevOps Engineer - Professional)
個人的に、全認定資格の中で最も難しいと感じました。私は開発ツールの実務経験が少なかったため、CodePipelineやCodeDeployのデプロイ戦略(Blue/Green, Canary, All-at-once)、CloudFormation StackSetsなどの挙動を理解するのに苦労しました。
〇 Specialty(専門レベル)
SCS (Security - Specialty)
セキュリティサービス(GuardDuty, Security Hub, KMS, WAF)やインシデント対応の手順が問われます。実務でセキュリティ設計に慣れていたため、比較的スムーズでした。IAMの権限境界(Permissions Boundary)や信頼ポリシーの深い理解が必須です。
ANS (Advanced Networking - Specialty)
Specialtyレベルでは最高難度です。Transit GatewayやDirect Connectを用いた「複数リージョン・複数VPC・オンプレミス」の複雑なネットワーク構造を、頭の中で描画しながら解く必要があります。知識だけで解ける問題が少なく、右脳をフルに活用する、骨の折れる試験です。BGPやRoute 53のDNSSECなども範囲です。
MLS (Machine Learning - Specialty)
AIF、MLAの延長線上にあり、MLA取得後であればかなり簡単に感じます。
※本資格は2025年4月に廃止予定です。
3. よくある質問 (FAQ) とTips
SNSや学習コミュニティでよく聞かれる質問に対して、経験論的にまとめました。
Category 1: キャリア・価値・コスト
Q. AWS全冠する価値はあるか?
これは意見が分かれます。
- 価値はある派→「就職面接のアピール」「昇進の条件」「自己研鑽」など
- 価値はない派→あくまで資格は座学であり、実務経験の方が重要。
そもそも、勉強というのは自分自身で価値を見出す必要があります。私の場合、会社員時代には昇進のためにSAAやSAPなどを取得しましたが、現在は講師としてPRになるために全冠しました。
また、全冠する必要性は通常ないと思います。ご自身の専門性(開発ならDVA/DOP、インフラならSAA/SAP/ANSなど)に合わせて取得すれば十分実用的だと思います。
Q. 全冠にかかる費用は?
概算で総額約30~40万円程度です(再受験なし、税別)。
- Foundational: 2万円 × 2
- Associate: 3万円 × 5
- Professional/Specialty: 4万円 × 5
(※合格時に付与される半額クーポンを次回以降に使用することで、実質コストを抑えています)
Q. 会社からの評価はどう変わりましたか?
あまり変わりませんでした。当時在籍していた会社(NTTデータやアクセンチュア)ではAWSプロフェッショナル試験や高度情報技術者試験等の上級試験を保有している人が多かったため、資格取得だけでは差別化ができません。あくまで昇進試験やプロジェクトの推奨資格として有効でした。
Q. 実務未経験ですが、資格を取れば転職できますか?
企業のレベルによりますが、上流工程(コンサル、SIer)では資格はアピールにはなることは少ないと感じます。多く現場では、実務経験(クライアントへの説明、社内調整などの泥臭い人間関係)の方が重視されると思います。一方、キャリアマッチや入社後の案件選択には有利に働くと思います。自分の専門性と取得資格の一貫性があることが重要です。
Category 2: 学習方法・テクニック
Q. 英語リソースと日本語リソース、どちらで勉強すべき?
必ず英語も視野に入れてください。AIFやMLAなどの新設試験は、日本語の翻訳精度が不安定だったり、情報が少なかったりします。試験本番でも、問題文の意味が不明瞭な場合は、画面上のボタンで原文(英語)を確認する癖をつけると、誤答を防げます。また、AWSのドキュメントは英語が前提であり、サービス名や機能も英語です。今はAI翻訳の精度が上がっていますが、情報は常に英語の方が迅速なので、英語に慣れることが必須となります。
Q. 「簡単」「難しい」というネットの情報を信じていい?
「簡単・難しい」は主観であり、実務経験に依存します。私のUdemy講義でもお伝えしていますが、例えばIT未経験の方にはCLFすら難関です。私の場合、データ分析やセキュリティは実務経験があったため「簡単」と感じましたが、開発ツールやネットワーク系(DOP, ANS)は実務経験が薄く、非常に「難しく」感じました。他人の評価より、自分の得意・不得意分野を見極めることが大切です。
Q. インプット(動画・書籍)とアウトプット(模擬試験・ハンズオン)の比率は?
初期(SAAに合格するまで)はインプット重視ですが、ある程度AWSのサービスが把握できたら徐々にアウトプットの比重を増やします。AWSに限らず、まずは森を見て、その後に細かい木を見ていきます。逆に、いきなりドキュメントやBlackBeltを見ると必ず挫折します。
Q. ハンズオン(実機操作)なしで「暗記」だけで合格できますか?
合格自体はできると思います。しかし、ハンズオン、実務経験なしで全冠すると現場で苦労します。現場で求められるのは構築だけでなく、説明や報告も含まれるため、実務経験を言語化するスキルなども必要です。
Q. 公式ドキュメント(Black Belt等)はどう活用すべきですか?
新サービスの深掘り、サービスの背景を知るために活用します。
Category 3: 試験本番・システムに関するTips
Q. テストセンター受験と自宅受験(OnVUE)、どちらがおすすめ?
私は全ての試験を自宅で受験しています。単にテストセンターに行くのが面倒だからという理由が大きいです。ただし、自宅では集中できない場合は、近所のレンタルオフィス等を借りていました。
Q. 試験当日の時間配分やメンタル管理のコツは?
月並みですが、十分な睡眠と対策が必須。またSAPやDOPでは時間が足らなくなる可能性があります。また、Pro試験は150分とかなりの長丁場であるため、集中力が切れます。私は受験30分前にはカフェインの入った栄養ドリンク(モンスター、ユンケルなど)を飲んでいました。
Category 4: モチベーション・マインドセット
Q. AWSの資格は更新し続ける必要はある?
財布との相談です。上述の通り、決して安くはない(特に最近の円安の影響)ので、必要な資格を更新すればいいと思います。会社によっては補助が出るので、その場合はたくさん受ければいいと思います。
Q. 勉強のやる気が出ない時期はどう乗り越えましたか?
モチベーションがない時は寝ます。十分な睡眠とリセット、昼寝も重要です。
Q. 常にアップデートされる情報のキャッチアップ方法は?
AWS BlogやSNSのテック系インフルエンサーのフォローなど。ただし、完全にキャッチアップするのは不可能です。無理のない範囲で80%を目指す勉強方法で良いと思います(頑張って覚えても数年後にはアプデされる or 消えるサービスも多いので)。
4. サマリーとNext Step
AWS認定資格は、取得自体がゴールではなく、実務で使いこなすための「パスポート」のようなものです。全冠を通じて知識の体系化や言語化に活用できたと思います。
私のUdemy講座では、こうした試験対策の知識に加え、ハンズオンを交えた「現場で使えるAWS」を解説しています。
独学に限界を感じている方、最短距離で合格を目指したい方は、ぜひ講座でお会いしましょう!
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