はじめに
「AWSを勉強したいけれど、自分のアカウントで課金されるのが怖い」という相談を受けることが多くあります。
実際、「リソースを消し忘れて数万円の請求が来た」という事象は、AWS学習者においてよく発生する課題です。EC2 インスタンスの停止忘れ、NAT Gateway の消し忘れなど理由は様々ですが、自身の AWS アカウントで本番同様の操作をする行為自体が、学習者にとって心理的ハードルとなっています。
Udemy の In-Course Labs は、このような課題を解決してくれる機能です。私自身、Udemy 講師として In-Course Labs をコースに組み込んでおります。本記事では、In-Course Labs の仕様・制限事項、学習効率を最大化するための活用のコツについて、整理してみたいと思います。
- 著者のUdemyリンク:[https://www.udemy.com/user/shan-wang-wan-jun-2/]
- 著者のYouTubeリンク:[https://www.youtube.com/@Maruchintechch]
1. In-Course Labsとは?:ブラウザで動く本物のAWS
In-Course Labs は、Udemy のコース内に組み込まれたハンズオン学習機能です。裏側では Vocareum という教育用ラボプラットフォームが稼働しており、学習者に対して AWS の実アカウントが一時的に払い出される仕組みになっています。
受講生側のアクションはシンプルです。コース内のラボ対象動画を開くだけで、AWS マネジメントコンソールが立ち上がります。ブラウザのみで本物の AWS サービスを操作することができます。
2. In-Course Labs の主なメリット
In-Course Labs の主なメリットです。
追加費用が不要(Udemy プランに含まれる)
対象プラン(後述)に加入していれば、ラボの利用に追加の AWS 使用料は発生しません。個人の AWS アカウントを用意する必要もなく、クレジットカードの登録も不要です。「うっかり課金」のリスクがゼロになるため、安全に操作を試すことができます。
アカウント作成が不要
AWS アカウントの作成、IAM ユーザーの設定、MFA(多要素認証)の有効化など、In-Course Labs ではこれらの準備工程がすべて省略され、インターネット環境さえあればハンズオンに入ることができます。
PC 環境を汚さない「安全なサンドボックス」
払い出される環境は、隔離されています。操作を誤っても実業務への影響はなく、セッション終了時にはリソースが自動的にクリーンアップされます。「壊しても大丈夫」という前提で試行錯誤できる環境は、技術習得において重要です。
3. 対象プランと利用制限
In-Course Lab の仕様と制約について紹介します。
利用可能な対象プラン
利用可能: Udemy Personal Plan(定額制)、Udemy Business Pro
動画視聴のみ(環境利用不可): Udemy Business Enterprise(※Pro Add-onが必要)、Marketplace(単品でのコース購入)
単品購入の場合は「ラボの解説動画」は視聴できますが、実際に手を動かす Workspace にはアクセスできません。環境を利用するには、Personal Plan等への加入が必要になります。
1セッション=最大60分の使い切り
Workspace を起動した瞬間からタイマーが開始されます。60分が経過すると Workspace は自動的にシャットダウンされ、作成したリソースやデータはすべて削除(リセット)されます。
毎回新しいアカウントが払い出される
Lab を開くたび(or セッション制限を超過)に、新しい AWS アカウント ID、アクセスキーが発行されます。認証情報はそのセッション限りで無効化されます。なお、Personal Plan の場合は利用上限が設けられています(27時間分)。通常の学習ペースであれば枯渇することはありません。
4. 使用できないサービス
教育用の Sandbox 環境であるため、AWS Organizations の SCP により機能制限(ガードレール)が設けられています。
利用可能な主なサービス(基本機能は網羅)
- EC2、Lambda、S3、DynamoDB、API Gateway、VPC、ELB、Route 53、RDS、Aurora、ElastiCache
- Athena、Glue、Kinesis、SNS、SQS、EventBridge
- CloudFormation、CloudWatch、CloudTrail、Systems Manager
- 開発系(CodeBuild、CodeCommit、CodeDeploy、CodePipeline)
- AI系の一部(SageMaker、Bedrock)、KMS、Secrets Manager など
利用できない主なサービス(セキュリティ、高額サービス)
- コンテナ系:ECS、ECR
- サーバーレスオーケストレーション:Step Functions
- 配信・エッジ:CloudFront
- セキュリティ・管理系:Cognito、WAF、GuardDuty、Inspector、Security Hub、Config、Macie、Shield、Detective、ACM
- AI/ML系:Comprehend、Rekognition、Polly、Translate、Textract、Transcribe、Lex、Kendra、Personalize、Forecast
その他 IAM に関する制限
IAM ロールの一覧表示(iam:ListRoles)や作成(iam:CreateRole)は可能ですが、ロールの詳細閲覧(iam:GetRole)やポリシーの読み取り(iam:GetRolePolicy)は拒否されます。Lambda 実行ロールなどが必要な場合は、既存のものを流用するのではなく、セッションごとに自身で新規作成するアプローチが基本となります。
5. 講師が推奨する学習スタイル
① デュアルディスプレイでの「動画+作業」並行学習
In-Course Lab は解説動画と Workspace で構成されます。片方の画面に Udemy の解説動画を表示し、もう片方の画面に AWS Workspace を立ち上げます。
② 事前に動画を視聴して「全体像」を把握
60分のタイマーは起動後から減り始めます。可能であれば、先に動画を1.5倍速等で一通り視聴し、アーキテクチャの全体像と手順を把握してから Workspace を起動するのが定石です。
③ 構築した後に、あえて「壊す」「他の方法を試す」
Lab の手順通りに構築できたら、Sandbox 環境を活かして、あえて壊したり、他の方法を試してみてください。本番環境ではできないこうしたトライアルがトラブルシューティング能力を養います。ただし、高額なリソースを起動するとコスト上限に達する可能性があるため、ご注意ください。
6. おわりに
In-Course Labs は、「追加料金なし・環境構築不要・安全なサンドボックス」という、AWS 初学者にとって理想的な学習環境を提供してくれます。
AWS の学習コストやリスクに悩んでいた方は、ぜひこの機に In-Course Labs の環境を使い倒してみてください。
プロフィール
[Maruchin Tech]
AWS、製造業・SCM DXを専門とするUdemy講師。新卒で日産自動車に入社。その後アクセンチュア、NTTデータを経て独立。大手製造業の基幹システム刷新やDXプロジェクトにおいて、要件定義からアーキテクチャ設計までをリード。現在は「現場で本当に使える技術と視点」をテーマに、エンジニア教育に従事。
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