柔道整復業界における電子カルテ義務化の見通し
結論
オンライン資格確認義務化(2024 年12 月)とオンライン請求システム稼働目標(2026 年度前後)が連動し、柔道整復施術所は2028 – 2030 年頃までに電子カルテ相当のデジタル施術録を備えなければ業務継続が困難になる公算が高い。
⸻
-
オンライン請求の義務化・拡大方針
• 規制改革実施計画(2022・2023)で「原則オンライン請求」を検討するよう厚労省に指示
• 2025 年3 月 WG 中間報告
• 現行の受領委任制度は維持
• 施術所から審査支払機関へオンライン提出のみ受理
• 既存業務と接続できる簡素・セキュアなシステムを設計
• オンライン資格確認端末の原則設置義務(2024 年12 月2 日以降)
• 紙保険証廃止に合わせ、施術所受付が完全デジタル化
• 高齢施術者等「やむを得ない事由」以外は導入必須 -
審査支払方式改革案
• 請求・審査・支払いを公的審査支払機関(国保連・支払基金)へ一本化し、不正防止と施術者への確実支払いを両立
• モデル案- 施術所→審査支払機関へオンライン請求
- 柔整専用審査委員会で審査
- 保険者決定後、当該機関から施術所へ振込
• 保険者は原則として審査支払機関へ業務委託
• システム・審査基準を国保連と支払基金で共通化
• 課題
• 支払基金は柔整審査ノウハウが乏しい
• 当面は国保連中心+コンピュータチェック併用で段階的統一へ
-
電子カルテ導入に関する制度・助成の展望
• 医科領域では標準型電子カルテを2030 年までに全国展開
• 患者情報共有インフラが柔整にも波及する可能性大
• 柔整特有の電子カルテ義務・助成制度は現時点で未整備
• 施術録の法的要件も明記なし
• IT 導入補助金など汎用支援策は利用可能
• 実務ではレセコン一体型電子施術録が普及し始め、受付〜請求をデジタル化する動きが顕在化 -
業界団体・ベンダーの対応
• 全国柔道整復師会ほか団体
• オンライン請求・資格確認に関するセミナーやソフト提供
• ベンダー各社
• 電子カルテ機能+資格確認対応を標準搭載
• 2026 年度運用開始を見据えたアップデート計画
• 制度確定後は導入支援サービスが加速し、紙台帳+代行請求依存の施術所は置き去りになる恐れ -
推奨ロードマップ(施術所向け)
年度 必須対応 備考
2024 オンライン資格確認端末導入 顔認証付きリーダー等
2025 XML 出力対応レセコン選定 WG 最終報告反映
2026 オンライン請求試行参加 国保連・支払基金テスト環境
2027 完全オンライン請求切替 紙請求停止想定
2028 – 2030 電子カルテ相当施術録標準運用 医科標準型電子カルテ連携
⸻
参考資料
• 規制改革実施計画(2022・2023)
• 厚生労働省「柔道整復療養費オンライン請求 WG 中間とりまとめ」(2025 / 03 / 12)
• 厚生労働省通知「柔道整復施術所におけるオンライン資格確認について」(2025 / 02 / 28)
• 医療 DX 推進本部資料「標準型電子カルテの開発と導入工程表」(2024)
• 国保連・支払基金合同検討会資料各種