ITエンジニアが第二種電気工事士に合格するまで
はじめに
普段はITエンジニアとして、PythonやAI・画像処理などを中心に扱っていますが、今回、第二種電気工事士を受験して無事に合格しました。
受験のきっかけは、寝る前のスマホ断ちのために、何かスマホを使わずに取り組める趣味が欲しかったことと、SNSで「ITエンジニアに関連する業務独占資格として『工事担任者』がある」という投稿を見かけたことでした。
IT領域には少ない「業務独占資格」という響きに惹かれ、詳しく調べてみたのが始まりです。
ただ、調べていく中で、工事担任者は通信設備寄りの資格である一方、第二種電気工事士であれば、自宅のコンセントや照明など、身近な電気設備について実用的な知識・技術も身につくことが分かりました。
もともと仕事柄ハードウェア領域にも関心があったため、
「ITとは少し領域が外れるけれど、自分にとってより役立つはず」
と考え、挑戦を決意しました。
この記事では、
- なぜ第二種電気工事士を受験したのか
- 学科試験をどう勉強したか
- 技能試験をどう練習したか
- 実際に受験して感じたこと
- IT系の資格勉強との違い
などを、合格体験記としてまとめます。
これから第二種電気工事士を受験する人や、IT・ソフトウェア系から電気分野にも興味を持っている人の参考になればと思います。
第二種電気工事士を受けようと思った理由
第二種電気工事士を取ろうと思った理由は、単純に資格が必要だったというより、
- 手に職という意味でも、業務独占資格に興味があった
- 電気そのものに興味があった
- ソフトウェア以外の技術分野にも触れてみたかった
- ハードウェアや設備についての理解を増やしたかった
- 実際に手を動かして何かを作る資格に興味があった
- スマホ断ちのための隙間時間で取り組めるものを見つけたかった
といった理由が大きかったです。
普段はPC上で完結する作業が多いので、ケーブルを切ったり、被覆を剥いたり、器具を接続したりする技能試験はかなり新鮮でした。
第二種電気工事士の試験について
第二種電気工事士の試験は、大きく分けて以下の2段階です。
- 学科試験
- 技能試験
学科試験に合格すると技能試験へ進み、技能試験にも合格すると第二種電気工事士試験の合格となります。
学科試験
学科試験では、
- 電気の基礎理論
- 配電理論
- 配線設計
- 電気機器
- 工事方法
- 電気工事に関する法令
- 配線図
- 工具・材料・器具
などが出題されます。
自分は CBT方式 で受験しました。
技能試験
技能試験では、事前に公開されている候補問題の中から1問が出題されます。
実際に、
- 電線を切断する
- 被覆を剥く
- リングスリーブを圧着する
- スイッチやコンセントに接続する
- 指定された回路を完成させる
といった作業を時間内に行います。
学科試験編
学科試験の勉強方法
学科試験については、基本的には
過去問をとにかく解いて、分からないところがあれば参考書を開いて理解する
という進め方をしました。
たぶん王道は、参考書で一通り勉強してから過去問を解く方法だと思います。
ただ、最初から全範囲を完全に理解しようとすると、現場経験もなく、実物を見たこともない自分からすると、工具やケーブルの種類など暗記することが多く、少しげんなりしてしまいました。
そこで、最初から問題という文脈を通して学ぶようにしました。
問題を解きながら、
「この工具はここで使うんだ」
「この器具とこれは一緒に使うんだ」
といった形で、配線図や実際の状況とセットで覚える方が、自分には合っていました。
そのうえで参考書に戻った方が、個人的には理解しやすかったと思います。
ここについては、自分が高校時代に理系の勉強をしていたこともあり、電気の基礎理論がある程度分かっていたため、初見でも比較的解けたという面もあると思います。
実際には、
- 一度ざっと暗記部分だけでも全体を見る
- 過去問を解く
- 分からなかったところを参考書やChatGPTなどで確認する
- 再び過去問を解く
という流れで進めました。
最終的には、ぎりぎり合格ではなく50点満点中45点だったので、学科については、この勉強方法で大きく間違ってはいなかったのではないかと思います。
使用した教材
使用した教材は以下です。
- 参考書:ぜんぶ絵で見て覚える第2種電気工事士筆記試験 すい〜っと合格
- 過去問:第二種電気工事士試験 筆記試験 過去問題集
- Webサイト:電気工事士2種過去問道場
学科で苦戦したところ
個人的に苦戦したのは以下のあたりでした。
電気理論
特に、
- 三相交流
- 力率
など、高校物理では習わなかった部分です。
ここら辺は問題の型があるので、1〜2回解けば慣れてきますが、初見では分かりにくく、苦戦した部分でした。
また、実物のイメージがつきにくい部分でもあったので、そういう意味でも難しく感じました。
配線図・器具
ここが一番の問題でした。
ボックス内の接続方法や、コネクタの種類・最小個数を問う問題、必要なケーブル数を問う問題などがありますが、初見では実際の配線を見たことがないため、イメージがつきづらく、よく分かりませんでした。
自分の場合は、問題を大量に解いていくうちに少しずつ法則が理解できるようになりましたが、それまでは、
「これはもうパターンで暗記するしかないのでは?」
と思うくらい分からない部分でした。
実際、ほかの受験者もこの辺りでつまずいている印象があります。
配線図や器具の問題は、実務経験などがないとイメージしにくい分野だと思いました。
時間とお金に余裕がある人は、技能試験の対策も並行して行うと、実物を触りながら理解できるので分かりやすいかもしれません。
CBT方式で受験してみた感想
今回、学科試験はCBT方式で受験しました。
理由としては、
- 会場が近かった
- 自分が勉強を始めるのが遅かった
- 筆記方式よりも遅い時期に受験できた
という点があります。
個人的には、過去問道場などのWebサイトを中心に模試を受けたり問題を解いたりしていたため、受験時点で紙の試験よりもPC上で回答する形式に慣れており、違和感はありませんでした。
サイトによっては実際のCBT試験の流れに近い形で模試を受けられるものもあったので、そういう意味でもCBT方式の方が対策しやすいのではないかと思いました。
ただし、CBT方式の会場はビルの一角など、少し分かりにくい場所にあることもあります。
案内看板などが出ていない場合もあるため、事前に場所や駐車場、公共交通機関などを確認して、当日は余裕を持って行動した方がよいと思います。
自分は当日、会場を探して10分くらい迷いました。
CBT方式で感じたメリット・デメリットは以下のような印象でした。
良かったところ
- 受験日時を比較的選びやすい
- 場所を選びやすい
- PC操作なので回答しやすい
- 問題用紙やマークシートを扱わなくてよい
- 点数がその場で分かるので、合格・不合格の判断がしやすい
気になったところ
- 配線図などは紙の方が見やすい場合もある
- 問題用紙に直接書き込むことができない
- PC画面上で問題を確認することに慣れていない人は少し戸惑うかもしれない
技能試験編
技能試験の準備
技能試験では、工具と材料を用意して練習しました。
基本的には、HOZANなどのメーカーが第二種電気工事士向けの工具と材料のセットを販売しているので、それを買えば大きく外すことはないと思います。
早めに買った方が安いという話も見かけたので、自分は学科試験を受ける前に購入しました。
自分が購入したのは、HOZAN DK-28と3回分の練習材料が付いたセットで、割引込みでだいたい5万円くらいだったと思います。
使用した主な工具は以下です。
- VVFストリッパー
- 圧着工具
- ペンチ
- ニッパー
- ドライバー
- 電工ナイフ
- スケール
実際には、VVFストリッパーを使うことでかなり作業時間を短縮できました。
候補問題の練習方法
技能試験では候補問題が事前に公開されています。
そのため、
候補問題を実際に作って練習する
というのが基本になります。
教材動画は多数ありますが、自分は使用する工具や部材の仕様が一致しているHOZAN公式YouTubeチャンネルを中心に参照しました。
工具や材料が同じなので、動画と実際の作業との差が少なく、迷いにくかったです。
実際に取り組んだステップ
STEP 1:単位作業の基本習得
まずは動画を見ながら、
- 電線のストリップ
- 器具への結線
- リングスリーブの圧着
など、基本動作を一通り練習しました。
STEP 2:1周目(精度重視)
制限時間は意識せず、動画の手順と施工条件を一つひとつ確認しながら慎重に作成しました。
STEP 3:2周目(スピード意識)
標準的な手順が頭に入った段階で、時間を測りながら全問作成しました。
目標は40分以内です。
STEP 4:3周目(弱点補強)
間違えた問題や、時間がかかった候補問題のみを抽出して再チャレンジしました。
STEP 5:前日仕上げ
配線が複雑なパターンの複線図を確認しつつ、苦手な単位作業を最後に確認しました。
複線図について
学科試験である程度基礎ができていたため、候補問題を作成する直前に2〜3回手書きして復習する程度で、比較的スムーズに対応できました。
練習回数
- 候補問題を一通り:2周
- 苦手問題:3周
- 試験直前:3時間程度
このような感じでした。
最初の頃は、候補問題を1問作って片付けるだけで2時間近くかかり、1日1問やるのがやっとでした。
2周目からようやく1日2〜3問できるようになったので、学科試験が終わってから技能試験の練習を始める場合は、だいたいこれくらいのペースになるのではないかと思います。
ただし、1日3問やるとかなり疲れます。
疲れてくると凡ミスも増えるので、できれば早めに取り組んで、1日最大2問くらいのペースでゆっくり3周するくらいが良いのではないかと思いました。
試験直前は何をやっても緊張するので、翌日に疲れを残さない程度に、緊張のはけ口として少し手を動かすくらいでもよいと思います。
苦手だった問題としては、アウトレットボックスを使う問題がありました。
コネクタなど使用する器具が多く、ボックス内で配線がごちゃごちゃしやすかったため苦手でした。
また、3路スイッチや4路スイッチが登場する問題も、単純に作業量が多いうえ、配線がややこしいので苦手でした。
技能試験で難しかったところ
電線の長さについては、多少の許容範囲があるため、正直そこまで神経質になる部分ではありませんでした。
というより、時間がシビアなので、こういった細かいところを気にしなくても済むようにするための練習なのかもしれません。
リングスリーブの圧着
ここが一番難しかった部分です。
リングスリーブは、電線の外側の被覆を噛んでしまうと欠陥になります。
一方で、剥いた芯線が出すぎてもよくないため、ちょうどよい位置に調整する必要があります。
この「ちょうどいい加減」を合わせるのが難しかったです。
また、リングスリーブには刻印ミスという欠陥もあります。
ただ、刻印については学科試験でも同じ内容が出題されるため、学科試験を通過した段階であれば、知識としてはそこまで問題にならないと思います。
問題は、物理的な作業性の悪さです。
例えば、
- 小スリーブに1.6mm × 4本
- 2.0mm × 1本 + 1.6mm × 2本
といった組み合わせでは、スリーブの中が電線でかなり窮屈になります。
線を入れること自体にも力が必要なうえ、そこから各電線の位置を調整し、先ほどの「ちょうどいい加減」に揃えなければなりません。
手先の器用さと握力の両方が求められる難所でした。
そして何より、圧着工具がとにかく固い。
ここは技能練習の中でもかなり嫌になった部分でした。
機器の接続
作業そのものよりも、
どの線をどこにつなぐか
を間違えないことの方が重要だと感じました。
普通にしていると簡単に思えますが、ボックス内でまとまった電線は、一目ではどこがどこにつながっているのか分かりにくくなります。
3路スイッチや4路スイッチ、端子台なども、慣れていなければ判断しにくい部分です。
特に複線図を確認せず勢いで作業するとミスしやすいため、
- 複線図を丁寧に書く
- 複線図と照らし合わせながら、都度確認して作業する
ことを意識しました。
技能試験で意識したこと
個人的に一番意識したのは、
速く作ることよりも、欠陥を出さないように丁寧に作ること
でした。
技能試験には制限時間がありますが、慣れてくるとある程度時間には余裕ができます。
そのため、
- 複線図をさぼらない
- 接続先を確認する
- 圧着刻印を確認する
- 芯線の長さを確認する
- 器具への差し込みを確認する
- 最後に複線図と全体を見直す
といった確認を優先しました。
実際に試験を受けてみて
学科試験
実際に受けてみると、思っていたよりも難易度が高かった印象でした。
何度か見直しをして、時間いっぱい取り組もうと思っていたのですが、どうしても分からない問題が1問あり、
「もう分からん!」
となって、1時間程度時間を残して終了しました。
ただ、結果は思っていたよりもできていたので良かったです。
また、CBT方式ではすぐに点数が分かったので、合格発表まで変にドキドキせずに済んだのも、個人的にはうれしい点でした。
技能試験
技能試験当日は、かなり緊張しました。
理由としては、自分の当初の予定より練習に時間がかかっていたので、
「ここで落ちたら、また何時間も練習することになる……」
と思っており、絶対に落ちたくないという気持ちが強かったからです。
また、動画を参考にして練習していたとはいえ、一度も誰かに自分が作ったものを評価してもらっていなかったので、
「本当にこれで合っているのか?」
という不安もありました。
ただ、候補問題を事前に何度か作っていたため、
「全く知らないものをその場で作る」
という試験ではありません。
体験談もたくさん公開されていたので、その点では比較的落ち着いて進めることができました。
しっかり練習していれば、不注意や当日のトラブルなどがなければ十分に合格を狙える試験だと感じました。
当日出た問題
候補問題は、
No.13
でした。
作業時間
約30分で作業完了
残り10分を見直しに使用
試験後の感想
試験開始前に行われる「材料確認」の段階で器具を確認したところ、アウトレットボックスや3路・4路スイッチが入っていないことが分かり、まずは大きな安心感がありました。
材料を見た段階で、
「No.13だ」
とすぐに特定できました。
頭の中でパッと複線図が思い浮かぶくらい描き慣れていた問題だったため、作業自体は終始落ち着いて、順調に進めることができました。
30分程度で施工を終え、残りの10分間は施工条件との照らし合わせや、圧着マークの再確認に使いました。
それでも、
「自分が気づいていないどこかに、一発アウトの欠陥があるのではないか……」
という不安は最後まで消えず、合格発表まではずっとドキドキしていました。
合格して感じたこと
実際に受験してみて、第二種電気工事士はかなり面白い資格でした。
特にIT系の資格試験と違い、
知識だけでなく、実際に手を動かして完成させる
という技能試験がある点が印象的でした。
普段ソフトウェアを扱っていると、
入力
↓
処理
↓
出力
という世界になりがちですが、電気工事では、
電線
↓
器具
↓
接続
↓
実際の回路
として、物理的に結果が残ります。
自分の手で作ったものが、そのまま実際の回路になる感覚は、普段のプログラミングとはまた違った面白さがありました。
ITエンジニアが電工2種を取る意味
第二種電気工事士を取ったからといって、すぐにITの仕事が大きく変わるわけではありません。
ただ、
- サーバ
- IoT
- 制御
- 工場設備
- インフラ
- ロボット
- センサー
- エッジデバイス
など、ソフトウェアと物理設備がつながる分野では、電気の基礎知識があることは無駄にはならないと思っています。
AIやソフトウェアだけを見るのではなく、
「そのソフトウェアが最終的に何を動かしているのか」
まで理解できる範囲を少しずつ広げていきたいと思っています。
これから受験する人へ
第二種電気工事士を受験して感じたのは、
学科は過去問、技能は実際に手を動かす
という、非常に分かりやすい試験だということです。
特に技能試験は、動画を見るだけではなかなか上達しません。
実際に、
- 電線を切る
- 被覆を剥く
- 圧着する
- 器具につなぐ
ところまで一度やってみると、一気に理解しやすくなります。
最初は40分以内に完成する気がしなくても、何度か作っているとかなり速くなります。
これから受験する人は、早めに工具を用意して、実際に触ってみるのがおすすめです。
まとめ
今回、第二種電気工事士を受験して無事に合格することができました。
個人的には、
- 学科試験は過去問中心で対策
- 技能試験は候補問題を実際に作る
- 速度よりも欠陥を出さないことを優先
- ITとは違う「物理的にものを作る面白さ」がある
というのが大きな感想でした。
普段はソフトウェアやAIを扱っていますが、こうした電気・ハードウェア側の知識も少しずつ増やしていきたいと思います。
今後は、資格を取って終わりではなく、実際に何か作ったり、ITと電気を組み合わせたりすることにも挑戦してみたいです。