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【SAR解析】Sentinel-1 SARを用いた郡山周辺の洪水解析

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Last updated at Posted at 2026-03-18

Sentinel-1 SARを用いた郡山周辺の洪水解析(2019年10月)

はじめに

本記事では、Sentinel-1のSARデータを用いて、郡山周辺における洪水の発生状況を「簡易的に」解析した結果をまとめました。

対象期間は、平常時に近い2019年9月24日と、洪水が発生した2019年10月12日で比較しました。

outputのコピー.gif

ちなみに、郡山での洪水解析は、最近発売された『SAR衛星データ入門』でも取り扱われています(pp.234-238)。この本では、マルチルック処理、局所的閾値法を適用して洪水の範囲を検出しようとしています。1

使用データ

本解析では、ASF(Alaska Satellite Facility)より取得したSentinel-1 GRDデータを使用しています。Cバンドです(波長は約5.5 cmで、植生の枝レベルで散乱する感じです)。

  • 2019年9月24日: S1A_IW_GRDH_1SDV_20190924T204259_20190924T204324_029168_034FDF_E269

  • 2019年10月12日:
    S1B_IW_GRDH_1SDV_20191012T204223_20191012T204248_018447_022C0C_CBFE

いずれも、IWモードのGRDプロダクトで、大きさとしては1.7GB程(分析ではこれの一部を切り取り使用)です。このデータから地表の後方散乱特性を解析します。 2


解析手法

SNAP処理

Sentinel-1データの前処理にはSNAPを用いた。処理フローは以下の通りです。

スクリーンショット 2026-03-10 18.25.20.png

手順 処理名 (Operator) 主な設定変数 (Parameters) 役割と目的
1 Read source: .SAFEファイル データの読み込み
2 Apply Orbit File Orbit State Vectors: Sentinel Precise
Poly Degree: 3
衛星の位置情報を最新の精密軌道情報に更新し、位置ズレを数mレベルまで修正するらしい
3 Thermal Noise Removal Selected Polarizations: VV, VH 画像内の暗い部分(水域など)に発生する熱ノイズ(背景ノイズ)を除去(詳細はまだ理解していない)
4 Calibration Output Sigma0 band: チェックON
Polarizations: VV, VH
最重要ステップ!: デジタル値(DN)を物理量である「後方散乱係数 $\sigma^0$」に変換
5 Speckle Filtering Filter: Refined Lee
Window Size: 7x7 (標準)
SAR特有のノイズ(スペックルノイズ)を、エッジを維持しつつ滑らかにする
6 Terrain Correction DEM: SRTM 1Sec HGT (Auto-download)
Map Projection: WGS84 (EPSG:4326)
地形の起伏による歪みを補正し、緯度経度を持つ地図座標に正しく投影する
7 Write (Export) Format: GeoTIFF / BigTIFF
Data Type: Float32
QGIS等で読み込める形式で書き出し。Float32

QGISでの処理

この処理で、TIFF画像ができます。ただ、これらをそのままQGISで表示すると、びっくりするくらい真っ黒になっています。

Sentinel-1 洪水解析結果

図:TIFF画像が真っ黒(出典:国土地理院の地理院地図(淡色地図)を加工して作成)

また、解析に必要な領域よりもずっと広い範囲をカバーしており、(PCスペックにもよりますが)その表示に時間もかかります。

そのため、QGISで追加の処理をします。
具体的には、必要な領域(郡山周辺)だけを切り取り、その上でラスタ計算機を使って線形値の後方散乱係数を、対数(デシベル)単位に変換します。

スクリーンショット 2026-03-18 19.20.03.png

スクリーンショット 2026-03-18 19.20.14.png

これが変換後のtiff画像です。Band1にVV偏波(赤色)、Band2にVH偏波(緑色)が含まれており、それを地図に落とし込んだものです。

この後は、赤色のVV偏波を利用して洪水域を探していきます(画像は白黒にしたもので分析します)。

洪水抽出の考え方(教科書的)

SARによる洪水抽出において大事になるのは、水域が以下の特徴を持っていることです。

電波が鏡面反射する 
→ 後方散乱(σ⁰値)が低くなる 
→ 画像上では暗く表現される

この特性を利用して、 低いσ⁰値の領域を水域として判別して、時系列比較により新たに出現した水域を抽出する、という方法で洪水域を把握します。


結果

2019年9月24日(平常時)

スクリーンショット 2026-03-18 18.27.08.png

平常時では、低後方散乱領域は主に既存の河川や水域に限定されています。


2019年10月12日(洪水時)

スクリーンショット 2026-03-18 18.26.50.png

洪水時では、低後方散乱領域が拡大している様子が確認できます。


前後比較

スクリーンショット 2026-03-18 18.29.43.png

2時期を比較する(差分を取る)ことで、新たに出現した水域(と思われる箇所)が識別可能です。今回は、一旦ここまでの解析にとどめます。


考察

2019年10月のデータでは、9月と比較して「低後方散乱領域の分布」が場所によって大きく変化しています。これは、水域の拡大を示唆するものであり、洪水による影響を反映していそうです。

一方で、SAR画像における低散乱領域は水域以外にも存在し得るため、単時点での判別には注意が必要(今回はそこまで踏み込めていない)。

まとめ

  • Sentinel-1 SARデータを用いて洪水解析を実施した。
  • SNAPによる前処理により、比較可能な後方散乱係数を取得した。
  • 時系列比較により水域(と思われる地域)の変化を確認した。
  1. 本記事では、すでにマルチルック処理のされているGRDに、Speckle Filteringを行います。

  2. VVとVHの2偏波データが含まれています。またSentinel-1の観測幅は250km、解像度は 5m × 20m です。

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