この記事でわかること
- 対象読者: Cursor Pro を契約していて、ChatGPT / Gemini との会話を使い捨てにしたくない人
- 解決する課題: チャットが散らばり、過去の知見を横断検索・要約できない
- 得られる成果: 「一言指示」でチャットを Markdown に蓄積し、溜まったログを横断分析できる vault が 初回セットアップ約5分 で動く
設計用プロンプト兼 Obsidian vault テンプレートを CC0 で公開しています。private 運用を前提 にしているので、clone してそのまま使えます。
https://github.com/L4pisLazuli/cursor_obsidian_templete
なぜ ChatGPT だけだと「資産」にならないのか
こんな状態、ありませんか?
- あのとき AI に聞いた解決策、どのスレッドだったか思い出せない
- Gemini と ChatGPT と Cursor で話が分断され、同じ質問を何度もしている
- ログは残っているが、横断して要約・比較する手段がない
私も同じでした。Cursor のチャットは便利ですが、セッションをまたいだ「自分専用の知識ベース」にはなりません。Obsidian に Markdown で溜めても、いつ・どこに・何を保存するか を毎回考えるのは面倒です。
そこで作ったのが、Cursor Agent がルールに従って自動運用する Obsidian vault テンプレート です。人間が覚えるのは日本語の一言だけ。あとはエージェントが temp → persistent → analysis の流れを守ります。
単なる「フォルダ分け」ではない:このテンプレの3つの設計
Cursor × Obsidian の組み合わせ自体は珍しくありません。差が出るのは 運用ルールを Agent に実装しているか です。
| 設計 | 何が起きるか |
|---|---|
| 使い捨て temp | promote 指示がなければセッション終了時に chats/temp/ を削除。ノートが増え続けない |
| 個人文脈の注入 | 新規チャット・分析時に profile/user.md を参照。毎回自己紹介しなくてよい |
| 分析の鮮度管理 |
analysis/ ノートは sources_updated で参照元の更新を追跡。古い要約を放置しない |
フォルダ構成だけ真似しても運用は続きません。トリガー文言・削除タイミング・メタデータ更新までルール化 しているのが、このテンプレの本体です。
5分で試す:最短セットアップ
まず動かしてから設計を読む、で十分です。
手順
- テンプレートを private リポジトリ に clone
- Obsidian で「フォルダを vault として開く」
-
profile/user.example.mdをprofile/user.mdにコピーし、個人設定を記入 - Cursor アプリで同じフォルダを開く
- Agent にこう言う:
この会話を chats/temp/ に保存して
成功するとこうなる
-
chats/temp/YYYY-MM-DD-HHmmss.mdが自動作成される - YAML frontmatter(
created/tags/source/status)が付く - 続けて「蓄積して」と言えば
chats/persistent/YYYY-MM-DD-トピック.mdへ昇格する
Templater は README の手順どおり入れてください(+数分)。ルールの動作確認だけなら、手順 1〜5 で十分 です。
ルートB(既存 Vault ユーザー向け): すでに Obsidian vault を運用しているなら、テンプレ全体を clone しなくてもよい。リポジトリから
.cursor/rules/を既存 vault にコピーし、chats/temp/・chats/persistent/・analysis/フォルダとprofile/user.mdを足せば、同じワークフローが使える。今のノート構成を壊さずに試せる。
導入前と導入後:何が変わるか
| 観点 | 導入前(チャットアプリ中心) | 導入後(この vault) |
|---|---|---|
| 保存 | スレッドごとに埋もれる |
persistent/ にトピック名で整理 |
| 検索 | サービス内検索に依存 | Obsidian のタグ・リンク・グラフで横断 |
| 分析 | コピペして都度説明 | 「persistent の〇〇について分析して」で analysis/ に出力 |
| マルチソース | サービスごとに分断 |
source: cursor | gemini | chatgpt で同一土俵 |
| 運用コスト | 保存ルールを人間が覚える |
.cursor/rules/ に書いてエージェントが実行 |
| ノートの肥大化 | 下書きが残り続ける | promote されない temp は自動削除 |
仕組み:チャット → 蓄積 → 分析の3層フロー
chats/temp/ ← 一時チャット(promote されなければセッション終了で削除)
↓「蓄積して」
chats/persistent/ ← 価値のある会話だけ長期保存
↓「分析して」
analysis/ ← persistent を横断分析した結果
Gemini や ChatGPT のやり取りを手動コピペで入れても、source フィールドで区別し、同じワークフローで分析できます。
書く(一次処理)のは AI、検収(git diff)してコミットするのは人間、読んで辿るのも人間 — 確率論的に揺れる AI の出力を、決定論的な Git の差分管理でサニタイズする。この「セーフティネット」を組み込んでいるのが、単なる Markdown 置き場との違いです。
なぜ保管先が Obsidian か
エージェントが書くのはただの Markdown です。Obsidian で開くことで人間側の体験が変わります。
- frontmatter のタグで横断検索
-
relatedや[[リンク]]でグラフがつながる - スマホアプリからも読める
ルール設計の要点(.cursor/rules/)
6 つのルールを glob で振る舞いを切り替える 設計にしています。1 ルール 1 関心で、常時適用は vault-core.mdc だけです。
| ルール | 適用範囲 | 役割 |
|---|---|---|
vault-core.mdc |
常時 | 全体方針・トリガー・モデル使い分け |
chat-temp.mdc |
chats/temp/** |
一時保存・自動削除・promote 手順 |
chat-persistent.mdc |
chats/persistent/** |
蓄積ノート構造化・アーカイブ |
analysis-workflow.mdc |
analysis/** |
横断分析・sources_updated 管理 |
obsidian-frontmatter.mdc |
全 **/*.md
|
YAML スキーマ統一 |
git-workflow.mdc |
Git 関連 | private 前提のコミット運用 |
vault-core.mdc のワークフロー定義はこうなっています。
- 新規チャット → chats/temp/ に無言で自動作成
- 「蓄積して」「保存して」→ chats/persistent/ へ昇格(promote)
- 「分析して」→ chats/persistent/ を横断検索し analysis/ に作成
- 新規チャット・分析時は profile/user.md を参照
ポイント: 人間はトリガー文言だけ覚えればよく、ファイル名の命名・タグ変更・移動先の判断は Agent がルールに従って実行します。
実際の使い方:指示は日本語の一言
| やりたいこと | 指示例 |
|---|---|
| 一時保存 | 「この会話を temp に保存して」 |
| 蓄積(promote) | 「蓄積して」「persistent に移して」 |
| 横断分析 | 「persistent の API設計について分析して」 |
| 整理 | 「temp の古いノートを整理して」 |
| アーカイブ | 「この persistent をアーカイブして」 |
promote で Agent がやること
「蓄積して」と言うと、Agent は次を自動実行します。
-
chats/temp/→chats/persistent/へ移動 -
tagsのtempをpersistentに変更 -
statusをactiveに更新 - ファイル名を
YYYY-MM-DD-トピック.mdにリネーム
分析のモデル使い分け
- 日常の会話・保存・promote → Auto(軽いモデル)で十分
-
横断分析(
analysis/作成) → Opus など高性能モデルに投げる想定
「垂れ流しは安く、まとめだけ高いモデル」— この設計がコストと品質のバランスを取りやすくします。
出力イメージ(同梱サンプル)
テンプレートには運用例が入っています。
蓄積ノート(chats/persistent/2026-07-01-vault-design.md):
## 概要
## 要点
## 関連リンク
分析ノート(analysis/2026-07-01-analysis-vault-setup.md):
## 分析対象
## 要約
## 洞察
## 未解決事項
## 参照元
分析ノートには sources_updated(参照元の最終確認日)も付き、persistent が更新されたら見直し対象かどうかを判断できます。
この構成が刺さる人・刺さらない人
刺さる人
- Cursor Pro を既に使っていて、課金先を Cursor に集約したい
- AI との会話を ナレッジとして残したい(調査メモ、設計議論、学習ログ)
- Obsidian または Markdown ベースの PKM に馴染みがある
- 「ルールを書いて Agent に任せる」運用に抵抗がない
刺さらない人
- コード生成だけ使い、チャットログを残す必要がない
- Obsidian を入れたくない(Markdown ビューアだけで十分、など)
- 完全自動の同期(ChatGPT 公式履歴の自動取り込み等)を期待している ※本テンプレは Cursor 中心 + 手動コピペ併用 が前提
ハマりどころと回避策
1. ルールが効かない
症状: 「保存して」と言ってもファイルが作られない。
原因: Cursor で vault フォルダをワークスペースとして開いていない、または Agent モードではない。
回避: リポジトリのルートを Cursor で開き直す。.cursor/rules/ が存在するか確認。
2. frontmatter がバラバラ
症状: タグや source が記事ごとに違う。
原因: ルールを無効化した、または手動作成時にテンプレートを使っていない。
回避: Templater のテンプレート(templates/)を使う。Agent への保存はルール経由に統一。
3. 機密情報をコミットしてしまう
症状: profile/user.md やノートに API キー・パスワードを書いたまま push した。
回避: このテンプレは private 運用を前提 としている。profile/user.md はコミットしてよいが、機密情報は書かない。誤って public リポジトリにした場合は、直ちにキーをローテーションし、profile/user.md を .gitignore に追加する。
4. 「分析して」の結果が薄い
症状: 要約が表面的。
原因: persistent/ の蓄積が少ない、またはトピックが散らばっている。
回避: promote 時にトピック名を英語ケバブケース(例: api-design)で統一。分析時はモデルを Opus 等に切り替える。
コスト感(前提を先に)
注意: 以下は 2026年7月時点の 個人の実測感 です。Cursor のプラン・枠・料金は変わる可能性があるため、必ず公式で最新を確認してください。
| 用途 | モデル | 感覚 |
|---|---|---|
| 日常チャット・保存・promote | Pro の Auto | 月あたり約4億トークン目安で、ほぼ収まる |
横断分析(analysis/ 作成) |
Opus 等 | たまに使う分なら API 枠内に収まる感覚 |
| コード生成 | Auto + API 併用 | Auto 枠は十分、エージェント指定は API 枠で調整 |
設計思想: 垂れ流しは Auto、まとめだけ高いモデル。これがコストを抑えつつ分析品質を保つコツです。
セットアップ(詳細)
- リポジトリを clone(private 運用前提)
- Obsidian で「フォルダを vault として開く」
-
profile/user.example.mdをprofile/user.mdにコピーし、個人設定を記入 - コミュニティプラグイン Templater を入れ、テンプレートフォルダを
templatesに設定 - Cursor アプリでこのフォルダを開く →
.cursor/rules/が自動参照される
初回セットアップの確認
- Obsidian でこのフォルダを vault として開けている
-
profile/user.mdが存在し、個人設定を記入済み - Templater の Template folder location が
templatesになっている - Cursor でチャット作成時に
chats/temp/に保存される
詳細な運用・frontmatter スキーマ・Git 運用はリポジトリの README を参照してください。
CC0 なので、改変・再配布・社内テンプレ化も自由です。
おわりに:AI との会話を「使い捨て」にしない
Cursor アプリの登場で、チャットとコード生成を ひとつの課金先 に寄せやすくなりました。あとは、その会話をどう資産化するかだけです。
このテンプレは「最小構成で回る」ことを優先しています。巨大なプラグイン構成や複雑な自動化は入れていません。6 つのルール + フォルダ分け + 一言トリガー で、初日から運用できます。
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