1. 概要

この記事では、IPv6 によるマルチキャストの実現方法を Golang のサンプルコードで例示します。

2. はじめに

前回の記事 “IPv4 によるマルチキャスト” では、IPv4 によるマルチキャストの実現方法を Golang サンプルコードで例示しました。
今回の記事では、IPv6 によるマルチキャストを取り上げます。
なぜ、IPv4 ではなく、わざわざ IPv6 を利用するのか？
それは、ネットワーク設計の要件によっては、IPv6 のエニーキャストも、とても有用であるため、IPv6 のエニーキャストについて投稿する前に、IPv6 のマルチキャストの実現方法について取り上げました。
マルチキャスト、エニーキャスト、ユニキャスト、ブロードキャストなど、それぞれの意味については下記のリンクをご参照ください。

また、UDP やマルチキャストの有用性については、前回の記事 “IPv4 によるマルチキャスト” をご参照ください。
今回は、前回と同じように、マルチキャスト送信サーバー x 1、マルチキャスト受信サーバー x 2 のミニマム構成により、マルチキャストの実現方法を Golang サンプルコードで例示します。

3. 環境

RHEL-7 系
Go 1.9

4. 設計

IPv6 マルチキャスト送信側 x 1
- sender1（[ff02::1%eth0]:56789）
IPv6 マルチキャスト受信側 x 2
- receiver1（[ff02::1]:56789）
- receiver2（[ff02::1]:56789）

5. IPv6 マルチキャストアドレス

IPv6 では、ff00::/8 ブロックにあるアドレスを、マルチキャストアドレスと呼びます。
そして、そのレンジにある ff02::/16 ブロックの IPv6 アドレスは、Link-Local マルチキャストアドレスといい、02 によりそのスコープを Link-Local に限定する事で、単一リンク内（単一サブネット内）に対してのマルチキャストを可能としています。
更に、ff02::1/128 アドレスの ::1 は、全ノードマルチキャストアドレスといい、対象マルチキャストグループの全ノードへのマルチキャストが可能となります。
（::2 は、全ルータマルチキャストアドレスといい、対象マルチキャストグループの全ルータへの配送が可能）

この記事では、ff02::1 のリンクローカルスコープの全ノードマルチキャストアドレスと 56789 ポートを例示に使用します。

6. Golang サンプルコード

@ sender1
$ sudo nvim ~/go/ipv6_multicast_sender.go

~/go/ipv6_multicast_sender.go

package main

import (
	"fmt"
	"net"
	"strconv"
	"time"
)

func main() {
	ipv6 := "[ff02::1%eth0]"
	port := ":56789"
	addr := ipv6 + port
	wait_time := 1
	format := "Message "

	fmt.Println("Sender:", addr)
	conn, err := net.Dial("udp", addr)
	_error(err)
	defer conn.Close()

	c := 0
	for {
		time.Sleep(time.Duration(wait_time) * time.Second)
		message := format + strconv.Itoa(c)
		conn.Write([]byte(message))
		fmt.Printf("%s\n", message)
		c++
	}
}

func _error(_err error) {
	if _err != nil {
		panic(_err)
	}
}

@ receiver1, 2

$ sudo nvim ~/go/ipv6_multicast_receiver.go

~/go/ipv6_multicast_receiver.go

package main

import (
	"fmt"
	"net"
)

func main() {
	ipv6 := "[ff02::1]"
	port := ":56789"
	addr := ipv6 + port
	fmt.Println("Receiver:", addr)
	udp_addr, err := net.ResolveUDPAddr("udp", addr)
	_error(err)

	listener, err := net.ListenMulticastUDP("udp", nil, udp_addr)
	_error(err)
	defer listener.Close()

	buffer := make([]byte, 1240)
	for {
		length, remoteAddress, err := listener.ReadFrom(buffer)
		_error(err)

		fmt.Printf("Sender: %v\n", remoteAddress)
		fmt.Printf("Contents: %s\n", string(buffer[:length]))
	}
}

func _error(_err error) {
	if _err != nil {
		panic(_err)
	}
}

7. Golang サンプル実行

@ receiver1, 2
$ sudo go run ~/go/ipv6_multicast_receiver.go

@ sender1
$ sudo go run ~/go/ipv6_multicast_sender.go

8. まとめ

この記事では、IPv6 によるマルチキャストの実現方法を Golang のサンプルコードで例示しました。
UDP マルチキャストは、効率的な死活監視設計や、自律ネットワーク設計、あるいは No Cluster データリソース設計など、要件や用途によっては有用な使い方が可能となりえます。
そして、IPv6 のエニーキャストも、ネットワーク設計の要件によってはとても有用であるため、IPv6 のエニーキャストについて投稿する前に、今回は IPv6 のマルチキャストの実現方法について取り上げました。