昨日の記事の例文に対応する「エネ アン ペ ケ ヤ ケラミㇱカリ。」を、esuparの助けを借りつつ、アイヌ語Universal Dependenciesで解析してみた。
# text = エネ アン ペ ケ ヤ ケラミㇱカリ。
1 エネ ene ADV 副詞 _ 2 advmod _ _
2 アン an VERB 自動詞 _ 3 acl _ _
3 ペ pe NOUN 名詞 _ 5 obj _ _
4-5 ケ _ _ _ _ _ _ _ _
4 ㇰ k= PART 人称接辞 _ 5 nsubj _ SpaceAfter=No
5 エ e VERB 他動詞 _ 8 advcl _ _
6 ヤ ya SCONJ 接続助詞 _ 5 mark _ _
7-8 ケラミㇱカリ _ _ _ _ _ _ _ SpaceAfter=No
7 ㇰ k= PART 人称接辞 _ 8 nsubj _ _
8 エラミㇱカリ eramiskari VERB 他動詞 _ 0 root _ _
9 。 . PUNCT 記号 _ 8 punct _ _
何といってもヤヤコシイのは、一人称単数主語の「ㇰ」(k=)が、直後の動詞「エ」あるいは「エラミㇱカリ」とアンシェヌマンを起こして、「ケ」「ケラミㇱカリ」になってしまっている点だ。縮約の一種だとみなせば、何とかUniversal Dependenciesで書けるのだが、それにしてもヤヤコシイ。
また、「エラミㇱカリ」は他動詞なので、本来は目的語を必要とするのだが、この文では「エネ アン ペ ケ ヤ」全体を受けている。とすると、advcl (連用修飾節)ではなくccomp (節目的語)で繫いだ方が、あるいは適切なのかもしれない。一方、昨日の記事の例文との比較を考えるなら、advclの方がいいような気もする。何とも悩ましい。
ただ、私(安岡孝一)が見る限り、少なくともこの例文に関しては、アイヌ語とイラヴ語でかなり言語構造が違う。残念ながら、アイヌ語Universal Dependenciesの知識は、イラヴ語への転用が難しそうである。どちらも日本国内の言語のはずなのに、なかなか大変だなぁ。