1.はじめに
Azure に関わると、次のような用語を目にすることがあります。
- Microsoft Cloud Adoption Framework(以降、CAF)
- Azure Landing Zone(以降、ALZ)
- Azure Well-Architected Framework(以降、WAF1)
これらは Azure の利用を進めるうえで登場する言葉ですが、個別に見ると全体像を理解しづらい場合があります。
また、CAF・ALZ・WAF を個別に解説した情報は多い一方で、3つの関係性まで体系的に整理された情報は多くありません。
そこで本記事では、CAF・ALZ・WAF の関係性を1枚の図にまとめ、全体像を理解することで、後続のドキュメントや解説記事、AI などから情報を得る際の理解の土台となることを目指します。
主に次のような方を対象としています。
- CAF・ALZ・WAF を初めて知る方
- CAF・ALZ・WAF の全体像や関係、役割を整理して理解したい方
CAF・ALZ・WAF を初めて学ぶ方でも理解できるよう、前提知識を置かずに解説しています。
詳細な説明には踏み込まず、全体像を理解することに焦点を当てます。
本記事では、Microsoft の公開情報をもとに、CAF・ALZ・WAF の関係性を整理・構造化しています。
より正確な定義や最新の内容については、以下の公式ドキュメントをご覧ください。
| リンク | 説明 |
|---|---|
| Microsoft クラウド導入フレームワークとは | クラウド(Azure)導入を進めるためのフレームワーク |
| Azure ランディング ゾーンとは | Azure 基盤を利用するための標準的な基盤構成を示すリファレンスおよび設計ガイダンス |
| Azure Well-Architected Framework とは | ワークロードの品質を評価・改善するためのフレームワーク |
2.CAF・ALZ・WAF の全体像
最初に、CAF・ALZ・WAF の全体像を見てみましょう。
この図は、CAF・ALZ・WAF の3つの概念を一つの図で表したものです。
ここでは細かい意味は一旦気にせず、「戦略」「計画」「準備」「導入」など共通して出てくる言葉に対して、CAF・ALZ・WAF がそれぞれどの範囲に関わるのかというイメージを持てれば十分です。
このイメージを持ったうえで、それぞれの概念がなぜ存在するのかを見ていきます。
2-1.なぜこれらの概念が存在するのか
企業や組織で Azure の利用を進める場面では、「まず何から考えればよいのか」「どのように進めればよいのか」が曖昧な状態からスタートすることが少なくありません。
例えば、このような場面です。
- クラウドをどのような目的で利用するのか
- どのような Azure 基盤を準備すればよいのか
- 設計や構築した環境が適切か、どのように評価すればよいのか
こうした場面に対して、Microsoft は Azure の利用を進めるうえで必要な「指針」を提供しています。
- CAF:Azure の利用をどのように進めていくかを整理した進め方の指針
- ALZ:Azure 基盤を準備するための設計の指針
- WAF:Azure 基盤やワークロード2を評価・改善するための品質評価・改善の指針
ここまでで、CAF・ALZ・WAF が異なる役割を持つ概念であることを整理しました。
3.CAF・ALZ・WAF の関係
CAF・ALZ・WAF は役割が異なるだけでなく、関わるタイミングも異なります。
そこで、Azure の利用の流れに沿って、CAF・ALZ・WAF がどのタイミングで登場し、どのように関わるのかを整理していきます。
3-1.CAF が定義するフェーズ
まずは、CAF に着目します。
CAF(Cloud Adoption Framework)は、Azure の利用をどのように進めていくかを整理した進め方の指針です。
CAF に焦点を当てると、Azure の利用の流れが「全体の枠組み」として整理されていることが分かります。
図としては、以下のようになります。
この枠組みは、次の7つのフェーズで構成されています。
| フェーズ | 日本語 | 概要 |
|---|---|---|
| Strategy | 戦略 | Azure の利用の目的や目指す姿を定義する |
| Plan | 計画 | Azure の利用に向けた計画を策定する |
| Ready | 準備 | Azure を利用するための基盤を準備する |
| Adopt | 導入 | Azure 基盤へワークロードを移行や構築する |
| Govern | ガバナンス | ガバナンスやルールを適用・整備する |
| Secure | セキュリティ | セキュリティ対策を適用・整備する |
| Manage | 管理 | 監視や保護対策を適用・整備する |
例えば、Azure を利用してワークロード2を導入する場合は、次のような流れになります。
- Strategy(戦略):Azure の利用する目的やゴールを定義する
- Plan(計画):Azure の導入計画やロードマップを策定する
- Ready(準備):Azure を利用するための基盤を準備する
- Adopt(導入):Azure 基盤にワークロードを導入する
この流れの中で、Govern(ガバナンス)・Secure(セキュリティ)・Manage(管理) は常に並行して考慮します。
また、Adopt(導入)後は運用フェーズに移り、その後もこの3つ3は継続して適用されます。
CAF は、このように Azure 利用における全体の枠組みを定義しており、各フェーズで何を考えるべきかを明確にすることができます。
3-2.CAF の中で ALZ・WAF はどこに関係するのか
ここでは、CAF の全体の枠組みに対して ALZ と WAF がどの範囲で関わるかを整理します。
改めて CAF の全体像を確認します。
この図に対して ALZ と WAF を重ねると、次のようになります。
ALZ と WAF はどちらも主に Ready(準備)以降の範囲に関係しますが、同じ関わり方ではありません。
このため、CAF の全体の枠組みの中では「どのフェーズで何を考えるか」という観点に合わせて、ALZ と WAF でどのような役割を担うのか、より理解することが重要です。
4.CAF・ALZ・WAF の役割を深掘りする
図では ALZ と WAF はどちらも Ready(準備)フェーズ以降に関わるように見えますが、実際にはその役割や活用される場面が異なります。
本章では、それぞれの役割をもう少し詳しく見ながら、関係性のまとめに入ります。
4-1.ALZ の役割
まずは、ALZ に着目します。
ALZ(Azure Landing Zone)は、ワークロード2を配置する前に必要となる Azure 基盤を準備するための設計の指針です。
その内容は8つの領域に整理されており、Azure 基盤を準備する際の推奨事項が示されています。
| No | 領域 | 代表的なキーワード(例) |
|---|---|---|
| 1 | Azure 課金・テナント | テナント、課金管理 |
| 2 | ID・アクセス管理 | 認証、認可 |
| 3 | リソース構成 | 管理グループ、サブスクリプション |
| 4 | ネットワーク | ネットワーク構成、接続 |
| 5 | セキュリティ | アクセス制御、ネットワークセキュリティ |
| 6 | 管理 | 監視、ログ |
| 7 | ガバナンス | ポリシー、コスト |
| 8 | 自動化・DevOps | IaC、CI/CD |
Azure 基盤は、これらすべての領域を考慮しなければ利用できないわけではありません。
一方で、いずれかの領域を十分考慮せずに進めると、後続の Adopt(導入)フェーズ以降でセキュリティ・ガバナンス・運用などの面で課題が発生する可能性が高まります。
ALZ は、ワークロードを受け入れるための Azure 基盤を準備することを目的としているため、CAF の Ready(準備)フェーズを中心に活用されます。
例えば、Azure VM 上で Web サーバを稼働させたい場合、Ready(準備)と Adopt(導入)の違いは具体例を考えるとイメージしやすくなります。
Ready(準備)
- テナントの準備、構成
- ユーザーや権限(Entra ID、RBAC)の準備、構成
- 管理グループやサブスクリプションの準備、構成
- 仮想ネットワークやサブネット、NSG の準備、構成
- 監視・ログ・ポリシー・IaC の準備、構成
Adopt(導入)
- Azure VM 上への Web サーバ機能の導入
- Web サーバを稼働させるためのアプリケーションやミドルウェアの構築
このように ALZ は、ワークロードそのものではなく、それを受け入れるための Azure 基盤を準備することを主な役割としています。
4-2.WAF の役割
続いて、WAF に着目します。
WAF(Well-Architected Framework)は、Azure 基盤やワークロード2を評価・改善するための品質評価・改善の指針です。
その内容は5つの領域(Pillar)で整理されており、各領域ごとに用意された評価項目(チェックリスト)に沿って確認することで、改善すべき点や潜在的なリスクを把握できます。
| No | 領域 | 代表的なキーワード(例) |
|---|---|---|
| 1 | 信頼性 | 可用性、障害復旧 |
| 2 | セキュリティ | データ保護、脅威対策 |
| 3 | コスト最適化 | コスト管理、最適化 |
| 4 | 運用性4 | 監視、自動化 |
| 5 | パフォーマンス効率 | スケーリング、性能 |
WAF は、一度だけ実施するものではありません。
設計・構築・運用の各段階で評価を行い、要件の変化や新機能への対応に合わせて継続的に改善していきます。
WAF は、Azure 基盤やワークロードを継続的に評価・改善することを目的としているため、CAF の Ready(準備)以降のフェーズで適宜活用されます。
例えば、Azure VM 上で Web サーバを稼働させたい場合、WAF では評価項目(チェックリスト)に沿って、設計や構成内容を確認します。
- 信頼性:障害が発生してもサービスを継続できる構成になっているか
- セキュリティ:適切なアクセス制御やセキュリティ対策が実施されているか
- コスト最適化:必要以上のコストが発生していないか
- 運用性4:監視やログ収集、運用しやすい構成になっているか
- パフォーマンス効率:必要な性能を効率よく提供できる構成になっているか
評価の結果、改善が必要な項目が見つかった場合は、その内容をもとに設計や構成を見直し、継続的に品質を向上させます。
このように WAF は、Azure 基盤やワークロードを評価・改善することを主な役割としています。
4-3.CAF・ALZ・WAF の関係まとめ
ここまでで、CAF・ALZ・WAF の役割について整理してきました。
最後に全体の関係を俯瞰すると、次のようになります。
| 概念 | 位置づけ | 役割のイメージ |
|---|---|---|
| CAF | プロセス (全体の流れ) |
Azure の利用を戦略から運用まで段階的に整理し、進め方の指針を示す |
| ALZ | 基盤設計 (リファレンス) |
ワークロードを展開するための標準的な Azure 基盤構成と設計の考え方を提供する |
| WAF | 品質評価 (継続改善) |
Azure 基盤やワークロードを設計や構成、運用の観点から評価し、継続的な改善に繋げる |
CAF が「進め方の全体プロセス」を定義し、その中で ALZ が「実行のための基盤設計」を担い、WAF が「品質を評価し改善する仕組み」を担うことで、Azure の利用は一つの体系として成立します。
この関係は、「どう進めるか(CAF)」「どう作るか(ALZ)」「どう良くするか(WAF)」という3つの視点を意識すると理解しやすくなります。
5.おわりに
「結局、CAF・ALZ・WAF の具体的な内容は?」「各設計領域や評価項目はどうなっているの?」と思われた方もいるかもしれません。
筆者自身、学習を進める中で最も苦労したのは、各概念の詳細そのものではなく、CAF・ALZ・WAF の関係性を俯瞰できる情報が少なかったことでした。
本記事だけで Azure の利用や設計をすぐに進められるようになるわけではありません。
一方で、ドキュメントや解説記事を読む際に、「これは CAF の話」「これは ALZ の設計指針」「これは WAF の評価項目」というように位置付けながら読み進めることで、理解の解像度が大きく上がるはずです。
本記事が、CAF・ALZ・WAF を理解するための「地図」として、これから学ぶ方や実務で扱う方の助けになれば幸いです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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-
Azure Web Application Firewall(WAF)とは異なる概念 ↩
-
Azure 基盤上で実際に稼働するシステムやアプリケーション。本記事では「ワークロード」という表現をこの意味で統一して使用 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
Govern(ガバナンス)・Secure(セキュリティ)・Manage(管理) ↩
-
正式名称:オペレーショナル エクセレンス ↩ ↩2








