Grok Bot(役割を持ったエージェントを置いて使うデスクトップアプリ)を早期アクセスで触っていて、いちばん「これは新しい」と感じた機能のひとつがこれです。
専門家みたいなエージェントを先に作っておいて、必要なときに同じ会話へ入れる。
一人に全部聞くんじゃなく、同じ話題を別の目で見てもらう。しかも、部屋の中でお互いに反応し始める。
この記事で使う「トークルーム」は、画面上の用語ではありません。私の便宜上の呼び名です。
実際のUIはエージェントを選ぶ/足す操作で、サイドバーには「物理学者, 数学者, 哲学者」のように並んで表示されます。
前回までの記事では、Grok Bot が自分のMacを直接触る Computer Use とは違うことや、Realtime Translator を証明書付きで公開する話を書きました。
今回は、エージェントを複数持つ側の話です。
何がおもしろいのか
たとえば私は、こんな三人を作りました。
- 物理学者
- 数学者
- 哲学者
それぞれ大学教授役で、どんな話題でも自分の専門の切り口で返すようにしてあります。
専門家エージェントを作っているところ。既存のエージェントとの会話で頼んだら、「三人の教授役エージェントを作成します」と、その場でまとめて作ってくれた。
そこに「精神の実在」について、各自の専門から説明してほしい、と投げてみました。
最初は並列の回答かと思いきや、トークルームに入れると様子が変わります。物理の「測れるもの」という話に、数学が「定義とモデル」で応じ、哲学が「実在という言葉の意味」を問い直す。一人に要約させるより、噛み合い方自体が読みものになります。
三人を同じ会話(この記事で言うトークルーム)に入れたあと。「精神の実在」をそれぞれの専門から説明してもらっている画面。
専門家を並べるだけなら、別チャットを三つ開いてもできます。
おもしろいのは、部屋に入れると議論になるところです。
サブエージェントとの違い
ここで混同しやすいのがコーディングツールの「サブエージェント」です。名前が近いので、最初は同じものに見えました。
私の理解では、こう分かれます。
専門家エージェント(サイドバーに残る方)
- 名前と役割を持った、常設のアシスタント
- 自分のチャットがある
- 複数人の会話(トークルーム)に入れられる
- あなたが直接話しかけられる
- あとから何度でも呼び出せる
物理学者・数学者・哲学者はこちらです。
サブエージェント(裏方)
- いま話しているエージェントが、作業を切り出して走らせる側
- 調査やブラウザ操作、重い処理向き
- 基本的に、あなた向けの人格や常設チャットは持たない
- 結果は親エージェントに戻る
たとえ話をすると、専門家エージェントは「呼び出せる同僚」で、サブエージェントは「その同僚が一時的に雇うアルバイト」です。
精神の実在を三人に聞くのは前者向き。
画面操作や長い調査を黙って進めるのは後者向き、です。
使い方のコツ
同じ話題を投げるときも、聞き方を少し変えた方が差が出ます。
- 物理学者には、測定やモデルの話として聞く
- 数学者には、定義や存在命題として聞く
- 哲学者には、前提や言葉の意味として聞く
全員にまったく同じ一文を投げても答えは出ますが、「同じ話題・違う問い」にすると、差分がはっきりします。
もう一つのコツは、最初から部屋に入れるかどうかです。
- まず個別に聞いて整理したいとき: 1対1
- 噛み合わせや反論まで見たいとき: トークルーム
私は後者の方がおもしろかったです。答えの正しさというより、論点の分かれ方が見えるからかもしれません。
向いている使い方 / 向かない使い方
向いているのは、正解が一つに決まらない話です。
- 方針検討
- 用語の整理
- 設計のトレードオフ
- 倫理や前提が絡む議論
- 「この説明、別分野だとどう見える?」
向かない、あるいは過剰になりやすいのは、単純作業です。
ファイルを一つ消す、コマンドを一つ打つ、には三人いりません。そこは本業のエージェントか、裏方のサブエージェントで足ります。
専門家ルームは、考えるための装置です。手を動かす装置とは分けた方がきれいです。
ちょっとだけ注意
便利なので、エージェントを増やしすぎると逆に散らかります。
私は「よく呼ぶ専門家だけ常設」「一度きりの役は作らない」くらいがちょうどよさそうです。
あと、トークルームは盛り上がる分、結論が欲しいときは最後に誰か一人へ要約を頼むか、自分でまとめる必要があります。議論が目的ならそのままでいいです。
まとめ
- Grok Bot では、専門家エージェントを作っておける
- トークルームに入れると、並列回答から相互反応に変わる
- サブエージェントは裏方で、常設の専門家とは役割が違う
- 「同じ話題・違う問い」にすると差分が出やすい
- 考える用途に向く。単純作業には向かない
一人の万能アシスタントに全部聞くのも便利です。
でも、論点を分けたいときは、専門家を並べて部屋を開く方がおもしろい。少なくとも「精神の実在」では、三人の答えが揃ったあとより、途中の噛み合い方の方が印象に残りました。
この記事は早期アクセス時の評価に基づいたものです。正式版で変更になっている点もあるでしょうし、技術情報やヘルプもない状態だったので、正しい使い方であったのかも不明です。その前提でお読みください。


