「Grok Bot」の早期アクセスプログラムに参加して、一般公開前から触ってきました。初期はコードネーム「Sand」と呼ばれていて、リリース時の製品名が「Grok Bot」になりました。ネット上の情報はまだないでしょうから、実際に触って分かったことをシリーズで書いていきます。
個別機能の前に、いちばん最初に書いておきたいのはこれです。
「チャットアプリの一種」なのか、「エージェントを置くためのアプリ」なのか。使ってみると後者の方がしっくりきます。
ひとことで言うと
Grok Bot は、AIと会話するだけの画面ではなく、役割を持ったエージェントを並べておいて、作業を任せたり、部屋で議論させたりするデスクトップアプリです。
見た目はほとんどメッセージアプリです。ただ、左のサイドバーに並んでいるのは人間ではなく、自分で作ったエージェントたち。
見た目だけなら、ChatGPT のチャット欄というより Slack や iMessage に近いです。
でも中身は、「一人の万能アシスタントに全部聞く」前提より、「何人か置いて使い分ける」前提に寄っています。
- エージェントごとに名前と役割がある
- それぞれにチャットがある
- 複数のエージェントを同じ会話に入れて、同じ話題を別の目で見てもらえる(この記事では便宜上トークルームと呼ぶ)
- エージェント側に、作業用のコンピュータがある
- 必要なら、自分のPCや GitHub 上の作業にも手が届く
会話が入り口で、その先に作業場がある、という感じです。
何が「エージェント」なのか
ここで言うエージェントは、単発のプロンプト回答というより、残しておく相手に近いです。
たとえば私は、こんな置き方をしています。
- 日常の質問役
- 日英の翻訳役
- 物理学者/数学者/哲学者のような専門家役
- inbox や調査みたいな用途特化
名前を付けて、Description(説明)で「どういう口調・視点で返すか」を書いておくと、そのエージェントの輪郭が決まります。
見た目のアイコンだけではなく、人格と担当範囲を持たせられるのがポイントです。
一度作ったエージェントはサイドバーに残るので、その都度「あなたは大学の物理学教授です」と前置きしなくても済みます。
必要なときに呼ぶ。必要なときに部屋へ入れる。そういう使い方です。
複数のエージェントを同じ場に入れると何が変わるか
1対1のチャットだけでも使えます。
おもしろくなるのは、複数のエージェントを同じ会話に入れたときです。
ここで言う「トークルーム」は、画面上の正式名称ではありません。私が便宜上付けた呼び方です。
UI上は To: Search or create agents からエージェントを選んだり、Tab で足したりして、複数人宛ての会話を開きます。サイドバーでは「物理学者, 数学者, 哲学者」のように名前が並んで見えます。
画面上の用語は agents。複数人を同じ会話に入れる使い方を、この記事ではトークルームと呼んでいます。
同じ話題を投げても、役割が違えば切り口が分かれます。
私は「精神の実在」を物理学者・数学者・哲学者に聞いてみましたが、並列で三回答えが来る、というより、部屋の中で論点が噛み合い始めました。
一人に全部まとめさせるより、論点の分かれ方自体が読みものになることがあります。
正解を一つに決める作業より、考えるための装置、に向いています。
エージェントは「自分のコンピュータ」を持っている
Grok Bot を他のチャットと分けて理解するうえで、いちばん大事なのがここかもしれません。
エージェントには、作業用のコンピュータがあります。
ブラウザを開く、ログインが必要なサイトを見る、画面を見ながら操作する、ファイルを作る、といったことは、基本的にそちら側で進みます。
エージェントのコンピュータを開いたところ。エージェントが Chrome でフライトを検索しています。自分のMacのデスクトップではなく、エージェント側の画面です。
これは、自分のMacの画面を直接いじる Computer Use とは少し違います。
Grok Bot の Computer Use が動かすのは、エージェント専用のコンピュータです。日常使いのデスクトップそのものではありません。
補足すると、「エージェントのコンピュータで全部を画面クリックしている」わけでもありません。Webの作業はページ操作として進むことが多く、GUIアプリやドラッグ操作など、デスクトップ操作が要るときだけ画面クリック側に寄ります。どちらも場所はエージェント側のコンピュータです。
だから、
- エージェントのコンピュータでまず進める
- 自分のPCは、手元のファイルやローカルアプリが必要なときだけ(許可つきで)触る
- クラウドのコーディングエージェントは、リポジトリやPRみたいな実装作業向け
という分け方になります。全部を自分のMacに乗せない、というのが設計の感触です。
クラウド側でエージェントコンピュータが動いているなら、ノートを閉じても作業を続けやすい、という話もあります。
ただしローカル Docker 運用のときは、その限りではありません。ここは別記事で少し丁寧に書きます。
向いている使い方
向いているのは、次のような仕事です。
- ログイン後の管理画面やポータルをまたぐ作業
- inbox の確認、下書き、仕分け
- APIやコネクタだけでは届きにくいWeb操作
- 専門家視点を分けて考えたい議論
- 「毎回手でやるほどではないが、放置もしたくない」雑務
逆に、コマンド一つで終わる単純作業に、専門家を三人並べる必要はありません。
Grok Bot は万能ハンマーというより、置き方を設計できる作業場に近いです。
真面目な自動化だけじゃなく、変な使い方を試すのもありだと思います。道具の幅が見えやすくなるので。
ChatGPT や普通のコーディングチャットとの違い
ざっくり比べると、こうです。
| よくあるチャットUI | Grok Bot | |
|---|---|---|
| 基本単位 | いまの会話 | 残しておくエージェント |
| 役割分担 | プロンプトでその都度指定しがち | エージェントとして先に置ける |
| 複数視点 | 同じ相手に何度も聞く | 複数エージェントを同じ会話に並べられる |
| 作業場所 | 会話が中心 | エージェント側コンピュータがある |
| 手元のPC | 製品による | 必要時だけ、許可つきで触れる |
「賢い回答を一つもらう」より、「誰に何を任せるかを先に決めておく」使い方と相性がいいです。
このあと書くこと
この記事は入口です。続きは、実際に触って分かったところを分けて書きます。
- Computer Use が、自分のMacを触る方式とどう違うか
- Realtime Translator を証明書付きで公開するときに助けられた話
- 専門家エージェントを同じ会話(トークルーム)で喋らせてみた話
- エージェント個別設定と、アプリ全体設定
まずは「Grok Bot は、エージェントを置くアプリケーションだ」と捉えてもらえると、あとの話がつながります。
チャット欄に見えるのは入り口で、その奥に机と部屋がある、くらいのイメージです。
この記事は早期アクセス時の評価に基づいたものです。正式版で変更になっている点もあるでしょうし、技術情報やヘルプもない状態だったので、正しい使い方であったのかも不明です。その前提でお読みください。



