この記事は、技術同人誌執筆の軌跡 Advent Calendar 2025の12/9分の記事になります。
今年は、ひとりアドベントカレンダーに挑戦してみたく、このネタで25日まで書いていきますので、よろしくお願い致します。
テーマ選びこそ技術書づくりの核心
技術書を書くとき、一番最初に悩むのが「どのテーマで書くか?」というテーマ決めです。選んだテーマ次第で本の空気感も、読者層も、深掘りの方向も全て変わります。だからこそ、この“テーマ選定の裏側”は、実は技術書づくりの核心ともいえる重要なプロセス!なんだと思っています。
自分の場合、IoTやAI、RPAの分野は試験も受けたししっかりと勉強してきた分野です。なので、それらを踏まえた上で書き上げたのは、これらの技術本になります。
IoT本は、ラズパイはM5Stackなどの電子部品を繋げてなにかを作る技術書ではなく、IoTをどう使えばビジネスに役立つのか、どこにどのようにIoTの技術を使うとどんな良いことがあるのか、など技術書典によくあるIoT本とは少しベクトルの違う作品です。
AIさんも、生成AIによる業務効率化としてよくあがる”メール本文を考えてもらう”や”パワポの資料を作ってもらう”というものに、少しメスを入れる視点で書かさせてもらいました。
これらは、自身でしっかりと勉強し身に着けた知識を、技術書というメディアに落とし込んだものです。
一方でSASE本は、自分自身知識がなく、自分自身の勉強のために書き上げた本だったりもします。
ですから技術書のテーマ選びは、自分の知識の共有という意味だけではなく、自分がこれから何を深めたいのかを決める行為でもあるんじゃないかと考えています。
きっかけはどこから来るのか?
テーマ選定は、ふとしたきっかけで落ちてきます。「あ、これいいかも」「あ、これなら書けるかも」と思ったら、まずはメモです。思ったことも、数時間経てば忘れてしまうお年頃なので、自分専用のdiscordチャネルを立てて、PCからでもスマホからでも同じ場所にメモを残すようにしています。
じゃ、その「ふとしたきっかけ」ってどんなのときなの?
他の人のXの投稿やnote記事を見ていた時、仕事でお客様からちょっとした困りごとを聞いたとき、友達と飲み会の中でしゃべったくだらない会話から生まれることもあります。
こちらは、Babylonjs勉強会から出した英語版のレシピ集です。
これは友人との会話の中で「英語で書いたら世界中の人が見てくれるんじゃね?」という一言から、私がBabylonjs勉強会のメンバーを巻き込んで作った作品だったりします。
自分の経験値とテーマの相性を見極める
テーマを絞るときに欠かせないのが、「自分が語れること」と「これから語りたいこと」のバランスです。すでに手慣れた分野なら経験値を活かして深く書けるけれど、それだけだと新鮮味が薄く本としての熱量も下がりがちです。
一方で、これから勉強したい分野はワクワクするし、新しく学ぶ瞬間がそのまま文章になるので“初学者目線”を保ちやすいのが良いところかと。でも、知らなすぎると本としての完成度が不安になります。
だから、その中間点こそ、自分が一番おもしろく言語化できる場所なんだと思っています。
私の場合、IoT・生成AI・SASE・Babylon.js・自動化界隈はどれも「触ってきたけどまだ伸びしろがある」技術なので、テーマに選びやすい領域です。自分の経験の延長線上にあるテーマは、書きやすさと新鮮さがともに揃う“ちょうどいいゾーン”になります。
トレンドと自分の興味のクロス点を探す
テーマ選びで意識しているのが、「世の中の流れ」と「自分の興味」の重なり具合です。AI、IoT、ローコード、ネットワーク、SASE……気になる技術は次々に登場するけれど、“流行っている”という理由だけでは書きません。
自分の興味がないテーマは、勉強も執筆も途中で息切れしてしまいますし、逆に、興味だけで突っ走ると読者がついてこないこともあります(チェアリング本みたいに!笑)。
技術書として成立させるには、“いま読者が求めている方向”との重なりも必要です。この重なりが大きいほど、楽しく書けて、価値も出て、読まれやすい本になります。
チェアリングという技術を伝える、完全に自分の趣味で書いた本です(笑)
でも、チェアリングを広めたい、という想いは乗ってますので興味ある方は是非!
そのテーマで“何を伝えたいのか”を言語化する
テーマがだいたい見えてくると、次に考えるのが「このテーマで、読者にどんな変化を起こしたいか」です。これを言語化すると、テーマが一気に“芯のあるもの”になります。
SASE本なんかは典型的で、自身の勉強を兼ねて書き上げた本なので、初心者向けではありますが、一通り読めばSASEがなんたるか簡単なうんちくを垂れるぐらいなれます!そーいうあたりを目指して書いた本ですからね(笑)
Babylonjsレシピ集に関しても、Babylon.jsだけではWeb3Dグラフィックというエンタメ要素が強い技術ですが、そこに別の仕組みを組み合わせることで、ビジネス色を強く表すこともできるだよ、というテーマで書かさせてもらっています。
書いていて“楽しいかどうか”も重要な基準
テーマ選定において意外と大事なのが、「書いていて楽しいかどうか」。技術書は短距離走ではなく中距離走なので、ワクワクできないテーマは途中で必ず筆が重くなります。
自分が楽しいと、文章にも熱が乗り、読者の理解も深まりやすい。逆に、書き手が気乗りしないテーマは、どんなに丁寧に書いても“熱量の低さ”がにじみ出ます。
だからこそ、テーマ候補を並べたときに「一番手を動かしたくなるテーマはどれか?」という視点は外せません。
自分が心から楽しめるテーマは、最終的に“書き切れるテーマ”でもあり、“読まれるテーマ”でもあります。
最後は“自分にしか書けない理由”が決め手になる
どんな技術にも先人がいて、情報は検索すればいくらでも出てきます。生成AIに頼めばいくらでも文章を書いてくれます。それでも本として成立するのは、技術そのものではなく、その技術に対する“筆者の視点”があるからだと考えています。
IoTをアウトドアで使ってみた経験、生成AIを業務改善で試したときの話、Babylon.jsでデジタルツインを構築したときのワクワク、RPAで業務を“救った”瞬間…。
こうした自分だけのストーリーが、読者の共感を呼ぶのだと思いませんか?
テーマ選定は最終的に、「このテーマをなぜ自分が語るのか?」という問いへの答えを探す作業なのかもしれません。