1. はじめに
企業内で扱われる契約書、申請書、注文書、画像、提案書などのコンテンツは、日々の業務判断や承認プロセスを支える重要な情報資産です。一方で、これらの情報はファイルとして保存されているだけでは十分に活用されず、入力作業、確認作業、ステータス管理、文書作成などに多くの手間が発生しがちです。
BoxにおけるEnterprise Advancedライセンスは、Box Apps、Box Forms、Box Doc Gen、Box AI Studio、Box Extract、Box Archiveなどを組み合わせることで、コンテンツを起点とした業務プロセスの自動化と高度化を支援するプランとなります。弊社ではEnterprise Advancedの社内検証を行い、フォーム入力から文書生成、メタデータ抽出、ステータス管理、アーカイブ、大容量ファイルのアップロードなど、複数の機能について実際の動作を検証しました。
本書では、検証で得られた知見をもとに、Enterprise Advancedがどのような業務課題に有効なのか、また導入時にどのような点を考慮すべきかを、わかりやすく整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Enterprise Advancedの主な位置づけ | コンテンツ管理基盤にAI、自動化、ノーコードアプリ、文書生成、長期保管を組み合わせ、業務プロセス全体の効率化を目指すための上位プラン |
| 社内検証で確認した主な領域 | フォーム入力、文書生成、AIによるメタデータ抽出、Box Appsでのステータス管理、AI Studioによる回答品質向上、BoxAI利用対象外とするためのアーカイブ化、大容量ファイルアップロード |
2. 多くの企業で想定されるコンテンツの課題
多くの企業では、Boxをファイル共有・保管基盤として活用している一方で、業務プロセスそのものはメール、Excel、手作業の確認、個別システムに分散しているケースがあります。その結果、コンテンツに含まれる情報を十分に活用できず、業務の属人化や確認漏れ、二重入力が発生しやすくなります。
| 想定課題 | 具体例 |
|---|---|
| 入力・転記作業が多い | 申請内容や注文情報をフォーム、Excel、管理表、文書テンプレートへ何度も転記している。 |
| 文書作成に時間がかかる | 定型文書であっても、宛先、日付、金額、案件名などを手作業で差し替えている。 |
| ファイルの状態管理が統一されていない | 承認待ち、承認済、確認中などのステータスがメールや個人メモに分散している。 |
| コンテンツ内の情報を活用しきれない | 契約書や注文書に記載された期日、金額、取引先などを検索・集計・条件判定に使いづらい。 |
| 保管済みデータの扱いに迷う | 長期保管が必要なファイルを、通常利用のファイルと同じ場所に置き続け、検索結果やAI活用の対象に含まれてしまう。 |
特に、申請受付、契約書管理、注文書処理、画像・証跡管理、提案書や見積書の作成など、コンテンツを起点に複数部門が関与する業務では、入力・確認・承認・保管の各工程をどれだけ効率的につなげられるかが重要になります。
3. Enterprise Advancedで実現しやすい業務改善
Enterprise Advancedでは、Box上のコンテンツを単なる保存対象として扱うだけでなく、入力、抽出、生成、承認、管理、保管といった業務プロセスに直接つなげることができます。今回の検証でも、複数の機能を組み合わせることで、業務の一部をノーコードで自動化できることを確認しました。
以下では、Enterprise Advancedで利用できる主な機能について、想定される業務課題、実現できること、業務上の効果、本検証で確認した内容を対応付けて整理します。
| 業務課題 | 活用する機能 | できること | 業務上の効果 | 本検証で確認したこと |
|---|---|---|---|---|
| 申請内容や受付情報の入力・収集を効率化したい | Box Forms | Box上でフォームを作成し、利用者から必要情報を収集する | メールやExcelでの受付を減らし、入力情報を後続処理に利用しやすくする | フォーム送信による情報収集 |
| 定型文書の作成を自動化したい | Box Doc Gen | 入力値をテンプレートに差し込み、Word/PDF文書を生成する | 契約書、申請書、通知書などの作成工数と転記ミスを削減する | 入力値をもとにWord/PDFを生成できること |
| 文書内の情報を業務データとして活用したい | Box Extract | 注文書、契約書、画像、手書き文書から必要情報をAIで抽出する | 金額、期日、取引先などを検索・一覧化・条件判定に使いやすくする | 注文書・画像・手書き文書からメタデータ抽出ができること |
| ファイルの承認状況や処理状況を見える化したい | Box Apps | メタデータをもとに一覧ビューやステータス管理画面を作成する | 承認待ち、承認済、確認中などの状態を一元的に把握できる | 承認ステータスや一覧ビューを作成できること |
| AIの回答を業務観点に合わせたい | Box AI Studio | 業務目的に応じたAIエージェントを作成する | 法務、営業、管理部門などの確認観点に沿った回答を得やすくする | 業務観点に沿った回答生成がされること |
| 長期保管データを通常業務から分離したい | Box Archive | 長期保管対象を通常の検索・利用領域から切り離す | 日常業務の検索結果やAI活用対象から不要な保管データを除外できる | 通常検索・利用領域から分離されること |
これらの機能は単体で利用するだけでなく、組み合わせることで効果が高まります。たとえば、Box Formsで申請情報を受け付け、Box Doc Genで文書を自動生成し、Box Extractで必要情報をメタデータ化し、Box Appsで承認状況を一覧管理するといった流れにより、入力から文書作成、確認、管理までを一連の業務プロセスとして扱うことができます。
次に本検証で行った実行例を6点紹介します。
A) フォーム入力から文書生成までを自動化
Box FormsとBox Doc Genを組み合わせることで、利用者がフォームに入力した情報をもとに、あらかじめ用意したテンプレートからWordまたはPDF文書を自動生成できます。社内検証では、フォーム送信後にDoc Genテンプレートに従って文書を生成し、承認プロセスと組み合わせることで承認済フォルダへ移動する一連の流れを確認しています。
実行例:Box Formsに入力された値をもとに秘密保持契約書(NDA)文書を生成する

図:Box Formsのサンプル
以下は生成された文書の抜粋です。

~中略~

図:Box Doc Genによって自動生成された文書の抜粋
B) AIによるメタデータ抽出で情報活用を促進
Box Extractおよびカスタム抽出エージェントを活用すると、注文書や契約書、画像データ、手書き文字などのコンテンツから、業務に必要な情報をメタデータとして抽出できます。検証では、Word文書の注文書から会社名、日付、金額などを抽出でき、和暦で記載された日付が自動的に西暦へ変換される動作も確認できました。
また、手書き文書についても、AIへの指示を調整することで期待に近い抽出結果が得られることを確認しました。
この仕組みにより、これまで人手で確認していた契約期限、取引先名、金額、案件名などを、検索、フィルタリング、承認条件、一覧管理に利用しやすくなります。特に、文書内に埋もれていた非構造化データを業務データとして扱える点が大きな価値です。
実行例:風景画像から地名、名称、観光の特徴をメタデータとして抽出する

図:検証に用いた五稜郭の写真

図:画像左がメタデータを自動抽出した結果、画像右が事前プロンプトを与えて自動抽出した結果
地名には都道府県および市町村名を、名称には特徴となる観光スポットの名前を入力するように指示しており、事前プロンプトの指示どおりに動作することを確認しました。デフォルトで自動抽出した場合は、地名と名称の両方に「五稜郭」が入力される結果となりました。
C) Box Appsで業務ステータスを見える化
Box Appsを利用すると、Boxに保存されたファイルを、メタデータにもとづく業務アプリのように一覧化できます。検証では、注文書一覧や高額案件のみを表示するビュー、画像管理における「承認待ち」「承認済」ビューを作成し、ファイルを開かずに状態を確認し、メタデータの更新ができることを確認しました。
実行例:Box Appsを使って承認ステータスの状態管理を行う
Box Appsの管理画面イメージ。各ステータスのカウント数やグラフを用いて視覚的に把握することが可能です。

図:Box Appsによる承認ステータス管理のイメージ
上の図から「承認待ち」をクリックした画面。承認待ち2件の内訳が表示される。

図:承認待ちステータス一覧
D) AI Studioで業務に合わせた回答品質を向上
Box AI Studioでは、業務目的に応じたカスタムAIエージェントを作成できます。検証では、法務担当者の観点で契約書を確認するカスタム指示を設定し、通常のAI利用時と比較して、より意図に沿った結果が得られることを確認しました。
たとえば「チェックして」とだけ指示した場合でも、事前に観点を定義したエージェントであれば、契約条件、責任範囲、リスク条項など、業務上確認すべき観点に沿った回答が期待できます。部門ごとの確認基準をAIエージェントに反映することで、レビュー作業の品質平準化にもつながります。
実行例:AIに事前設定した指示と実行結果
AIに事前設定した指示:
あなたはプロの法務担当者です。[自社の立場]から不利な条項、法的リスク、漏れている項目を特定してください。
【自社の立場】
(例:甲、受注側、発注側、賃借人など)
【チェック依頼事項】
自社に不利、または一方的な条項はあるか(損害賠償、契約解除、知的財産権など)定義や責任範囲が曖昧な箇所はないか業界の標準的な契約に比べて欠けている条項はないか
以下は「チェックして」とだけ指示した検証結果です。


図:画像上がデフォルトのエージェント、画像下が事前設定したエージェント
デフォルトのエージェントでは文書の要約を中心に回答されましたが、事前プロンプトを与えた場合は、設定した観点で的確な回答が返ってきました。
E) Box Archiveで保管データを通常業務から切り離す
Box Archiveを利用すると、長期保管が必要なコンテンツを通常業務領域から切り離して管理できます。検証では、アーカイブ後に利用者から対象フォルダを参照できなくなり、検索にもヒットしないことを確認しました。一方で、管理者は管理コンソールからプレビューやダウンロードが可能で、編集はできない状態となることも確認しています。
これにより、保管義務のあるファイルを保持しつつ、日常業務の検索結果やAI活用対象から除外できます。また、復元後は再び利用者から参照でき、検索対象にも戻るため、保管と再利用のバランスを取りやすくなります。

図:Box Archiveの利用イメージ
F) 大容量ファイルを含むコンテンツ管理にも対応
Enterprise Advancedよりも1つ下のライセンスであるEnterprise Plusでは1ファイルあたりの容量上限が150GBまでとなります1。検証では、200GBのファイルをブラウザからアップロードし、問題なく完了することを確認しました。動画、設計データ、バックアップデータ、研究データなど、大容量ファイルを扱う業務においても、Boxを中心としたコンテンツ管理の適用範囲を広げられます。
ただし、大容量ファイルのアップロードでは、ネットワーク帯域、端末負荷、アップロード時間帯などの影響を受けるため、実運用前に利用環境での確認が推奨されます。

図:大容量ファイルを含むコンテンツ管理イメージ
4. 検証で判明した導入時に注意したいポイント
- Doc Genを利用するにはWordアドイン2が必要です。企業によってはアドインの利用が制限されている場合があるため、事前に利用可否を確認する必要があります。
- Doc Genタグ名には文字種の制約があるため、日本語や記号を避け、英数字とアンダースコアを中心に設計することが安全です。
- Box Formsの公開範囲やアクセス制御については、利用者範囲に応じて事前確認が必要です。社内利用に限定したい場合は、フォームの共有方法や入力項目を慎重に設計し、機密情報が不用意に含まれないようにする必要があります。
- AIによる抽出結果はユースケースや文書品質に左右されるため、プロンプト設計と検証を通じて精度を確認することが重要です。
- Box Archiveは対象のフォルダからごみ箱に入れたファイルもアーカイブの対象となります。復元時には、ごみ箱内のコンテンツも元のフォルダに復元されるため、事前に整理しておくことをおすすめします。
5. まとめ
Box Enterprise Advancedは、単なるファイル共有基盤の拡張ではなく、コンテンツを中心に業務プロセスを組み立て直すための機能群です。フォーム入力、AIによる情報抽出、ノーコードアプリによる可視化、文書生成、承認状況管理、アーカイブを組み合わせることで、これまで人手に依存していた業務を効率化し、情報の活用度を高めることができます。
今回の検証では、テキスト情報を用いた文書生成、注文書や手書き文書からのメタデータ抽出、Box Appsによるステータス管理、Box Archiveによる保管データの分離、大容量ファイルのアップロードなど、実業務に近いシナリオで有効性を確認できました。特に、コンテンツから必要な情報をAIで抽出し、メタデータとして業務に活用する仕組みは、多くの企業で適用しやすい領域と考えられます。
一方で、フォーム公開範囲、アドイン利用可否、AI抽出精度、アーカイブ復元時の挙動など、導入前に確認すべきポイントもあります。Enterprise Advancedを効果的に活用するには、まず対象業務を明確にし、入力・抽出・生成・承認・保管の流れを一つの業務プロセスとして設計することが重要です。
| Enterprise Advancedで期待できる効果 | 説明 |
|---|---|
| 業務効率化 | 入力、転記、文書作成、確認、承認状況管理の手作業を削減する。 |
| 情報活用の高度化 | 文書内の情報をメタデータ化し、検索・抽出・条件判定に活用する。 |
| 業務品質の平準化 | AI Studioやテンプレートを活用し、部門ごとの確認観点や文書作成ルールを標準化する。 |
| ガバナンス強化 | アーカイブやメタデータ管理により、保管・検索・利用範囲を整理する。 |
Enterprise Advancedの価値は、単体機能の利用だけでなく、複数機能を組み合わせてお客様の業務課題に合わせたユースケースを設計できる点にあります。まずは、申請受付、契約書管理、注文書処理、証跡管理など、手作業が多くコンテンツが業務の中心にある領域から検討を始めることで、効果を実感しやすくなります。
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Enterprise Plusでは1ファイルあたりの容量上限は150GBとなります。一方でEnterprise Advancedでは1ファイルあたり500GBが上限となります。 ↩