固有値・固有ベクトルって、わからなくないですか。
A\boldsymbol{u}=\lambda \boldsymbol{u}
この式のことです。「正方行列$A$に対して、この式(固有方程式と呼ばれる)を満たすスカラー$\lambda$とベクトル$\boldsymbol{u}$の組み合わせを、$A$の固有値・固有ベクトルと呼ぶ」……という定義とかは数学の授業で習ったかと思いますので、細かい解説はしません。
いや、問題を出されたら、パズル的に解くことはできるんですよ。でも、**「結局それって何の役に立つの?」**ってことがわかんなくって、学生の頃にモヤモヤしてました。
それから月日は過ぎ、色んな分野で固有値・固有ベクトルが使われていることがなんとなく自分にもわかってきました。そこで、昔の**「固有値・固有ベクトルわかんねえ~」っていう苦手意識を克服するため、今一度自分に向かって「結局それって何の役に立つの?」**ということを真面目に問いかけ、自分の知る限りの範囲で固有値・固有ベクトルの応用例をまとめてみました。
これから5回に分けて、固有値・固有ベクトルが使われている分野について、それが必要とされる背景を含めて紹介していきたいと思います。具体的な分野としては以下の5つになります:
1. 主成分分析
2. マルコフ連鎖
3. 力学系
4. 連続体力学
5. 量子力学
あくまで応用例を並べるだけに留めた、低俗で即物的な私のような人間のために書かれた文章です。数学的な厳密さよりは、「各分野で道具として固有値・固有ベクトルがなぜ使われているのか・どう使われているか」の雰囲気が伝わることを重視しています。線形代数を理論的にちゃんと学んでみたいという人向けではありません。推理小説でたとえるなら、本を後ろから読んで、先にトリックや犯人の動機を知っておくようなものです。しかし、ネタバレされて初めて興味を持つということもありますし、この文章を読んで逆に線形代数を学ぶモチベーションが湧くということもあるかも(あったらいいね)。
対象とする読者の数学レベルは高校生~大学1・2年生くらいを想定しています。数学ガチ勢の人からすると胡乱なことを言ってるところもあると思いますが、そのときは容赦なくコメント欄でツッコんでください。何食わぬ顔で文章を修正します。