はじめに
経営企画の現場においては「予算を組んだはいいが、環境が変わったときの影響をすぐに試算できない」という声をよく耳にします。天候の変化、予約のキャンセル、突発的な販促施策といったような変数が絡み合う状況で、意思決定のスピードを上げるにはどうすればよいでしょうか。
本記事では IBM Planning Analytics(以下IPA) と IBM Bob を組み合わせることで、
- 予測値をIPAキューブに入れておくだけで、すぐにシナリオシミュレーションを始められる
- Bobに指示するだけで、誰でも使えるチャット型モバイルアプリが作れる
この2点を、ゴルフ場の需要予測デモを例に具体的にご紹介します。
なお、BobとSPSS Modelerを組み合わせた需要予測の自動化については、関連記事「Bobにループ処理のスクリプトを書かせて多品種を需要予測させる」もあわせてご参照ください。
背景:予算割れが常態化するビジネス課題
今回のデモのシナリオとして、38コースを運営するゴルフ場チェーンを取り上げます。この企業が抱える課題は次の2つです。
① 予算自体の妥当性確保
需要予測が担当者の経験や勘に依存しており、予算の根拠が薄い。
機械学習(SPSS Modeler)とBobを使って需要予測を自動化し、データドリブンな予算策定を実現します。
② 環境変化(予約変動)への対応
天候悪化や急な予約キャンセルが発生しても、その影響を即座に試算する手段がない。
ここで登場するのが IPA+Bob の組み合わせです。
IPAの多次元キューブに予測値を格納し、Bobが生成したシミュレーションアプリで可視化とWhat-If分析を行います。
IPAとBobで何が変わるか
IPAキューブが「シミュレーションの土台」になる
IPAの多次元キューブには、SPSS Modelerが出力した予測値を格納することができます。
このデモでは以下の変数をキューブに保持しています。
| 変数 | 説明 |
|---|---|
| 来場者数(予測) | SPSSモデルが出力した日次来場者予測値 |
| 予約数(予測) | 同モデルによる予約件数予測値 |
| 降水確率 | 天気予報データ |
| 料金・割引率・クーポン有無 | 販促条件 |
重要なのは、予測値がIPAに入っていれば、追加のデータ整備なしにシミュレーションがすぐ始められるという点です。IPA上でシナリオの数値を変えるだけで、影響がキューブ全体に即座に反映されます。
たとえば、1日あたりの受入上限を管理する「調整_受入上限」の値を200から60に変更すると、
それに連動して「計画_稼働率(%)」「計画_訪問者数」が自動的に再計算され、最終的な「計画_収益(円)」まで一気に更新されます。
つまり、キューブ内の1つの数値を変えるだけで、関連するすべての指標に影響が波及します。これがIPAのWhat-Ifシミュレーションの本質です。天候悪化・急なキャンセル・定員変更といった現実のシナリオを即座に収益インパクトとして可視化でき、経営判断のスピードを大きく引き上げます。
キューブ自体の開発においてもBobは力を発揮する
通常、IPAのキューブ設計やディメンション定義には専門知識と相応の工数が必要ですが、Bobがいればその壁を大きく下げることができます。
キューブに持たせたいデータ構造や指標をBobに伝えるだけで、ディメンション定義からデータロードのスクリプトまでの生成をBobが支援してくれます。
キューブを一から立ち上げる場面でも、Bobをパートナーにすることで専門家への依頼待ちや試行錯誤の時間を大幅に短縮できます。
「シミュレーションしたいが、まずキューブを作るところから…」という状況でも、Bobとの対話を通じて環境を整え、分析をスタートできます。
BobがシミュレーションWebアプリを自動生成する
IPAのキューブをそのまま活かすだけであればIPAの機能で完結します。ここにBobを加えると、さらに一歩進んだことができます。
Bobに対して自然言語で指示するだけで、IPAキューブに接続したシミュレーションWebアプリのコードを自動生成してくれます。
Bobはキューブから変数定義を読み出し、シナリオ計算ロジックとチャットUIを備えたWebアプリを生成します。コーディングの知識がなくても、指示から数分でアプリが動き始めます。
デモ:チャットでシナリオを動かす
Bobが生成したシミュレーションWebアプリでは、チャット欄に自然文を入力するだけで条件を変更し、結果をリアルタイムで確認できます。
表をオレンジ色で更新しました。
降水確率を変えると来場者数・予約数への影響が即座に計算され、KPIカード・時系列グラフ・日次テーブルがすべて一括で更新されます。担当者はコードを一切触ることなく「もし〇〇だったら?」を何度でも繰り返せます。
経営企画担当者が得られる価値
| 従来の方法 | IPA+Bobの場合 |
|---|---|
| Excelで手動シミュレーション(数時間〜数日) | チャット入力で即座に結果反映(数秒) |
| ITに開発を依頼して数週間待つ | Bobが自動コーディング、すぐにアプリ完成 |
| 予測の根拠が担当者の経験に依存 | SPSSの予測値をIPAキューブで一元管理 |
| 外出先での試算が困難 | チャットUIはモバイルブラウザでそのまま動作 |
特にモバイル対応は実務上の大きなメリットです。会議中や外出先からスマートフォンでアクセスし、「明日の降水確率が上がったら来場者数はどう変わる?」をその場で確認して意思決定に活かせます。
まとめ
- IPAに予測値キューブがあれば、追加のデータ整備なしにWhat-Ifシミュレーションを始められる
- BobはIPAキューブに接続するコードを自動生成するため、開発工数を削減することができる
- 完成したアプリはチャットUIとリアルタイムグラフを備え、経営企画担当者がそのまま使える
- モバイルでも動作するため、会議室や外出先でのクイックなシナリオ検討にも対応できる







