はじめに
DocuWorks を営業部門に導入したとき、ツールの機能より先に「現場が続けられるか」が勝負でした。
本記事では、2020年にコロナ禍をきっかけに DocuWorks(文書管理システム) を導入し、導入後1ヶ月で FAX の紙出力をゼロにしたときの苦労話と、定着に効いた工夫をまとめます。アノテーション(スタンプ)の初期配布、FAX 紙廃止の進め方、他部署で定着しなかった要因の潰し方まで、再現しやすい粒度で書きます。
同じ悩みを抱えている方の参考になれば幸いです。DocuWorks単体の話は、かなりニッチな話だと思います(笑)
想定読者
- 営業部門・事務部門で DocuWorks の導入・定着を任された方
- ツールは入ったが「お絵かきソフト状態」で止まっている現場の担当者
- ペーパーレス化の KPI はあるが、現場の反発が怖い情報システム・DX 推進の方
私の属性
- 製造業の営業部門で、事務・工事積算業務を担当
- 2020年、コロナ禍のリモート対応とあわせて DocuWorks 導入の業務フローを作成
- 導入前のヒアリング、導入後1週間のフォルダ作成・アノテーション配布・操作説明会を担当
- その後の定着促進は管理職が主導(私はアノテーション追加や問い合わせ対応を継続)
導入の背景と、2週間で動き出した話
きっかけは3つ
- コロナ禍でリモート勤務が急に必要になった
- 2交代で出勤とリモートを繰り返したが、出勤側の負担が増加して、部署が疲弊していた
- 情報システム部主催の DocuWorks プレゼンに部署長と参加し、導入が決定
- 導入が2週間後に決まった段階で、別の管理職から営業業務の業務フローたたき台作成を依頼されました
リモートで止まっていた営業処理
DocuWorks が刺さった背景には、コロナ禍のリモート運用そのものがあります。
当時の営業処理は、FAX でアナログの紙が出てきて、紙に書き込みをして回していた部分が大きかったです。リモートにいる側からは、営業事務処理のほとんどができない 状態でした。
- 書類の保管が紙中心のため、疑問が出てもリモートでは調べられない資料が多かった
- 出勤者が都度スキャンして PDF 化し、連絡を取り合う……という対応もあった
- 結局、出勤者が残業して処理してしまう、という負担の偏りも起きていた
2交代で回すほど、「紙のままではリモートと両立できない」が見えました。ペーパーレスそのものを目指したのではなくて、リモートでも回る業務の形 を目標にした結果、副次的にペーパーレスも実現できました。
導入前にやったこと
- 他社事例をできるだけ調査した
- 社内に、2018年から買い切りで導入済みの部署があったためヒアリングを実施
- 操作感は短時間で確認できた
- ただし部署として運用ルールが決まっておらず、お絵かきソフト状態だった
- FAXの紙排出が継続していて、一部の人のみが利用している状態だった
- たたき台を3案用意し、管理職3名・アシスタント代表1名・私の計5名で検討
- 本命1案に追加意見を加えて採用
たたき台3案で何が違ったか
3案の違いは、大きく言うと 見積・受注処理をしている間の、書類の状態管理 の設計の違いでした。どのタイミングでどのフォルダに置くか、どのようにして処理状況を他者が把握可能な状態とするか、といった方法が案ごとに異なりました。
採用した本命案に加えられたのは、アシスタント代表からの意見で 「休んでいるときの対応」 です。特定の担当者が不在でも、フォルダとファイル名のルールだけで引き継げるか。ここを詰めないと、結局「あの人に聞かないと分からない」運用に戻ります。
5名で検討したことで、現場の抜け道が事前に見えました。管理職だけで決めていたら、たぶんここは後から問題になっていたと思います。
最短で業務フローの最適化を考えるには、事例を多く知ることが大事だと感じました。
そのまま同じ方法を採用できるような夢のような方法はありませんが、自社の業務に合わせて組み合わせを考えることで、0から考えるよりも簡単になります。また、説明をする際にも説得力が増します。
変化への抵抗をどう乗り越えるか
DocuWorks 導入を振り返ると、ツールの操作より先に「人の性質」と向き合う時間のほうが長かったです。
人は変化を嫌います。今のやり方と比べてデメリットがあるだけで、かなり抵抗されます。「今まで通りで困っていないのに」という反応は、異常でも怠慢でもなく、自然な反応だと思います。
だから私は、次の2段階でたたき台と周知・マニュアル化を考えました。
「ペーパーレスだからやれ」だけでは動きません。今の方法と比べて何が楽になるか、を具体的に見せるほうが効きました。
最低限のラインは、導入時に決め切る
人は変化を嫌う性質がある以上、最低限のラインは最初の導入時に定着させる のが安全です。
私たちの場合、そのラインはだいたい次のとおりでした。
- ファイル名とフォルダ遷移をルールに沿って処理する
- 配布したアノテーション(スタンプ)を使う
- FAX(自動で規定フォルダに出力されます) は DocuWorks 上で完結させる(紙出力は1ヶ月間の期限付きで廃止)
導入後1週間の説明会・配布・実演のタイミングで、ここまでを周知しました。
後から口うるさく言うと、再び抵抗にあう
後からルールを足すと、抵抗が再燃します。
「今更」「問題ない」「最初から言ってよ」——一度「このままで回っている」と認識されると、追加はかなり難しくなります。
これは導入後に痛感した話です。最初に決めなかったルールを数ヶ月後に言い出すと、変化を嫌う性質が 現状維持の正当化 に変わります。
だからアノテーション配布や FAX 紙廃止の期限も、後から追加するより 導入の初動で決め切る 方針にしました。初回の印象が、その後ずっと残ります。
業務フロー設計で意識したこと
採用したフローは、ファイル名の変化・フォルダ遷移・アノテーション(スタンプ) を組み合わせたものです。
紙の運用をそのままデジタルに写すと、デジタルの利点を殺してしまう。これを一番恐れて、管理職には説明を行いました。
また、紙のFAX廃止期限を決めたのも同様で、「二重管理」になる事を強調して、2度手間とデジタルの検索性を殺す事になると説得しました。後の部内の説明会でも、「二重管理」の手間を具体的に想像させるように説明すると、手順の1本化に渋々でも賛同してもらえました。
フローを決めるときに重視したのは次の5点です。
- 検索性:あとから探せるか
- 書類処理進捗の可視化:どこで止まっているか分かるか
- 誰が休んでも対応できること:属人化を避ける
- 対象書類:何を電子化するか(全部やらない)
- ファイル名とフォルダ構成:ルールが説明できるか
フォルダ遷移とファイル名のルール(地味だが効く)
ファイル名の変化とフォルダ遷移は、記事でもよく見る定番の話です。ただ、やっている会社とやっていない会社の差 は想像以上に大きいです。
フォルダは番号で並び順を統制する
フォルダ遷移では、先頭に番号を付けて並び順を統制しました。ネット上の事例でもよく見るやり方ですが、これを徹底していないと、フォルダが無秩序のまま残る、という話を実際に聞きます。
番号付きフォルダのイメージは次のとおりです。
01_受付
02_処理中
03_書類待ち
04_完了
番号があると、業務の流れがフォルダの並びそのものになります。誰が休んでも、「今どこにいるか」がフォルダ位置で分かります。
ただ、フォルダ遷移だけでは足りませんでした。書類処理の進捗管理 は、次の2つをセットにしていました。
| 手段 | 見える化するもの | イメージ |
|---|---|---|
| フォルダ遷移 | 案件全体がどの段階にいるか |
01_受付 → 02_処理中 → 04_完了
|
| 色分けした「済み」スタンプ | 1件の書類で何が終わっているか | FAX済・メール済・見積済 など |
紙の運用でいえば、「書類引出しの位置を変える」のと「付箋を貼る」のを、デジタルで再現した感じです。配布した進捗用スタンプ(FAX済・メール済・見積済 など)は色分けしてあるので、サムネイルだけで「どこまで終わっているか」が分かります。
ファイル名の無秩序化が検索性を妨げる
一方で、現場には「最新」「修正版」「コピー」のような名前を付けたがる人も存在します。ルールを決めなければ、それらを防ぐ事は、できません。
でも共有フォルダでは、誰にとっての「最新」かがバラバラ になります。並び替えても時系列が崩れ、あとから探すときに事故りやすい。リコーの解説でも、日付表記の統一や「最新版」系の名称の危うさが指摘されています。
だから、版の管理は「日付+ファイル名」のルールに寄せました。
ファイル名は日付を先頭に、かつ「何の日付か」を定義する
ファイル名も、先頭に日付(yyyymmdd)を付けて並び替えで探しやすくしました。ここで大事なのは、日付の意味を決めておく ことです。
| 書類の種類 | 先頭日付の意味(例) |
|---|---|
| 出荷関連 | 最終出荷日 |
| FAX 受領 | FAX 受領日 |
| 見積・発注 | 受領日または起票日(書類ごとに手順書で定義) |
「日付が付いているのに、それが何の日付か分からない」状態になると、検索性は上がりません。手順書には、ファイル名の型と日付の定義をセットで書きました。
20200315_取引先略称_見積書.dwd
20200318_取引先略称_FAX受領.dwd
日付を先頭にそろえるだけで、フォルダ内が時系列に並びます。紙のファイル棚で「古い順に並べる」のと同じ感覚を、デジタル側に持ってきたイメージです。
このルールは地味ですが、導入時に決め切った最低限のライン のひとつでした。後から「やっぱり日付の付け方変えよう」と言うと、既存ファイルとの混在で現場が混乱します。フォルダ番号とファイル名は、最初の1週間で徹底した方が楽でした。
アノテーション配布:初回の印象が定着を左右する
配布内容と最低限のルール
導入後1週間で、全員分のフォルダ作成とアノテーション配布、操作説明会を実施しました。
部署内での配布時に意識したのは、次のとおりです。
- 最低限の内容を手順書として配布する(細かすぎるマニュアルは最初から渡さない)
- 閲覧可能な共有場所に、運用に関わる資料をすべて置く(メール等の一過性で済ませない)
- その共有場所に、発展的な活用方法・事例を追加で紹介する
- 見えている不満は開始前に取り除く(初回の印象が、その後ずっと残る)
現場の不満を先に潰したほうが定着は早いと感じています。ここが「デメリットを先に潰す」の実装ポイントでした。
他部署で定着しなかった要因を潰す
他部署を見ていると、アナログ運用が残りやすいパターンがありました。代表例がシャチハタ(印鑑)周りです。
| よくあるやり方(定着しにくい) | 私たちのやり方 |
|---|---|
| 個人でスキャンし、画像を切り取ってスタンプ化(透けない) | ネットで見つけた作り方を参考に、Excel で印影だけの画像を実寸大で全員分作成 |
| 印刷して判子を押してからスキャン | データ印・運用スタンプは押印日時を含めてデジタルで完結 |
富士フイルム公式の動画でも、Excel の「透明色の設定」を使う手順が紹介されています。私たちも同系統のやり方で、印影だけが残るスタンプを作りました。
また、日常使いのシャチハタは、電子署名ではなくスタンプ化する事で、利便性を確保しています。
初期配布で作ったスタンプ(合計約70個)
便利だと感じたものをまとめて配布しました。進捗用と業務効率用の合計が、だいたい70個です。
進捗管理用(色分けして配布)
- FAX済・メール済・見積済 など、「何が終わったか」を示すスタンプ
- フォルダ遷移とあわせて使う。書類を開かなくてもサムネイルで進捗が追える
業務効率用
- 住所・TEL・FAX・現金客先の口座案内などの汎用定型文
- 取り消し線、透ける図形、透けるマーカー、矢印といったプロパティ変更が必要な図形
- 複数文字サイズ
- 初期が12ポイントしか無かったので、大き目も作成しました
- 登録した時の姿で登録される事に気付いたので、28ptは「28」と入力して登録するなどの工夫をしました
- 個々人が作成すると、人数分の作業が必要になるが、1人で作成する事で全体として時間短縮
作り方と登録方法、具体的な使用例も資料にして配布しました。基本手順は手順書、応用例は共有場所、という住み分けです。
結果としては、不便さよりスタンプ1クリックの快適さが勝った 印象です。
失敗談:ツールバーを無秩序に詰め込んで配布してしまった
スタンプを配布したあと、配置のカスタマイズまで面倒を見る つもりはありませんでした。配れば自分で使いやすく並べるだろう、と思っていたのが甘かったです。
実際には、アノテーションをツールバーに 無秩序に詰め込んだまま使い続ける人 がいました。探すたびに迷う、押し間違える、という状態のまま定着してしまいます。並べ方が悪いと「使いにくい」と感じる、という側面もありました(´・ω・`)
次に入社した人からは、最初から使いやすい状態で渡したい。そこで 用途ごとにツールバーを分けた 配布に切り替えました。進捗用・定型文用・図形系、といった単位で最初から整理しておく。個人任せにしてはいけないと学びました。
強制は最低限、発展は任意で置いておく
配布の設計で大事にしたのは、ハードルの二段構え です。
| 区分 | 内容 | 現場への渡し方 |
|---|---|---|
| 必須 | ファイル名ルール、フォルダ遷移、配布スタンプの使い方 | 手順書として配布。導入時に決め切る |
| 任意 | お仕事バーの活用、応用スタンプ、業務別の時短テク | 共有場所に置いて紹介するだけ |
他者から「これもやれ」と強制されると、人は意固地に拒否します。一方で、任意で置いておくと「自分で発見した」感覚になり、腹落ちして抵抗なく試してくれます。
興味がある人は共有場所を見に行き、実際に試して「便利」と感じると、口コミで部署内に浸透します。説明会で全部教え込むより、便利だと感じた人が隣の席に広げる ほうが速い場面もありました。
運用が進むたびに、共有場所へ事例を少しずつ足していきました。最初から高度な使い方を全員に求めるのではなく、徐々に高度化していく形です。その結果、本当にその業務をしている人の中から新しいアイデアが出て、共有場所に載せてまた誰かが試す、というループが回るようになりました。
「3回同じ質問が来たら資料化する」ルールも、このループの一部です。問い合わせをそのままにせず、共有場所に還元していくイメージです。
説明会の進め方(1時間・アシスタント向け実演)
導入後1週間の説明会は、1時間 取りました。内容はすべて私に任されていました。対象は主にアシスタント(営業事務)の方です。
進行は次の順番でした。
- 業務フローを手順書に沿って説明し、その場で実演する
- 書類の検索方法を見せる(フォルダ遷移・ファイル名・日付の意味)
- 業務フロー全体が「検索性」を前提に設計されていることを説明する
- アナログ運用との一番の違いはここだ、と伝えました
- 便利機能を、実際の業務シーンに合わせた使い方で実演する
- あわせて、資料作成済みのアナウンスを共有場所で案内
- Q&A タイム
機能一覧を読み上げるより、受注処理の1本を通しで見せる ほうが伝わりました。フォルダを動かして見せたときに初めて腹落ちする、という反応でした。
FAX 紙廃止:反発を出さない進め方
一律で印刷を禁止しない
画面で見にくい図面などは、紙の方が見やすい場面もあります。そのため、印刷を禁止していません。
社内ルールとして細かく縛ることもしていません。
- 誰がいつ印刷してよいか、申告制にする
- 印刷したら報告する
- 管理者が逐一チェックする
といった運用は取りませんでした。目くじらを立てて注意しない、というスタンスです。
「印刷禁止」と言い切ると反発が出やすい。一方で申告制にすると、また別の事務負担が増えます。うちは「必要なら印刷していい。ただ、本処理は DocuWorks で回す」くらいの温度感に留めました。
この 「禁止」と「目くじらを立てない」のバランス も、管理職が現場を見ながら調整していました。厳しすぎると反発、ゆるすぎると紙に戻る。どちらに寄せるかは、私ではなく管理職の判断でした。
一方で、正式保管・本処理を紙で行う取引先 は、管理職の許可制にしました。対象は導入当初10社前半 → 現在は2社まで減っています。
紙例外が10社→2社に減った理由
うちは工事や特注の製作品も扱うため、細かい図面ばかりをやり取りする取引先 が例外候補に残りやすい状態でした。最初から紙をゼロにするのは現実的ではなかったです。
そのうえで減らせたのは、次のような流れでした。
- 営業事務が DocuWorks 上で一貫して作業できるようになった
- 図面も含めて検索・参照ができる状態になった
- 「紙の方が楽」という理由が薄れ、自然と DocuWorks に移行した取引先が増えた
許可制のまま放置するのではなく、運用が成熟した取引先から順に紙を外す イメージです。いきなり全社・全取引先を切るのではなく、慣れてきたところから減らしていきました。
FAX 紙出力を最短で止めた話
当部署は、2018年に買い切り導入されていた部署より先に FAX 紙廃止に踏み切りました(当時、その部署は紙と DocuWorks の二重出力のまま。フロー制定後に停止。別拠点は2024年に停止へ動き出した、という段階差もありました)。
進め方のポイントは次のとおりです。
- 管理職と立ち話で意気投合し、「紙があった方が安心」派を説得
- FAX 紙出力の期限を、最短設定にした
- 決め手にした論点
- 二重処理は面倒では?
- 過去履歴を2箇所探すの手間では?
- 見つからず混乱しませんか?
- 営業事務の方が大賛成してくれ、説得に加勢してもらえました
予定より早く切り替えたので、情報システム部には驚かれました。1ヶ月予定を前倒しした記憶です *゚Д゚)ドキドキ
コスト意識も効いた
管理職も私も、「導入したら使わないと損」という思考でした。管理職になってからコストに触れる機会が増える、という話も聞きます。
管理職が定着促進でやったこと
スタンプ追加や問い合わせ対応は私が担当しましたが、定着そのものは管理職が主導 していました。私から見えていた動きは次のとおりです。
最低限のルールを守らせる監視と声掛け
管理職は、最低限のルールを強制するための 監視と声掛けを継続 していました。ファイル名・フォルダ遷移・スタンプ運用がずれたときに、その場で戻す。導入時に決め切ったラインを、日常で維持する役割です。
あわせて、禁止するラインと、目くじらを立てないラインのバランス も管理職が握っていました。図面の印刷のように「原則は DocuWorks、ただし紙も可」というグレーゾーンは、現場の反応を見ながら管理職が調整する。厳しく言いすぎない、でも放置もしない、その加減は個人ではなく管理職の仕事でした。
見積書の社印をやめた決断
対外的には、見積書に押印していた 社印をなくす決断 も管理職が行いました。取引先から問い合わせがあれば、「そもそも不要で、慣習的に押印されていたので、デジタル化に伴いやめた」と説明する、という対応です。
社印対応を決断できない部署では、こうなりがちです。
印刷する → 社印を押す → スキャンして PDF 化する
わざわざこのループを回すので、デジタル化が進みません。FAX 紙廃止の章で触れたのと同じ、紙とデジタルの二重ループ です。
当社では、社印自体は情報システム部から 管理職のみの権限で電子署名として配布 されていました。アナログ時代は気軽に誰でも押印しすぎていただけ、という認識です。デジタル化のタイミングで「慣習の押印」を整理できたのは、管理職の決断があったからだと思います。
定着後に起きたこと
- 導入後1ヶ月で、FAX を紙で排出することがなくなった
- 当事者部署が成功事例となり、2018年導入部署も業務フロー作成を決定して仕組み化
- 本社の2部署(大規模な拠点)での成功をきっかけに、情報システム部が全社展開を進めた
日々の紙が減った実感
書庫や棚ががらがらになったのは、保管の主役が紙からデジタルに移った結果でした。規模拡大でスペース不足が話題になっていて、棚の増設の話まで存在したのに、逆に中身がスカスカになるというのは大きな変化でした。
現場で体感として分かったのは、こんな変化です。
- 電話メモ・メモ帳の消費が目に見えて減った(口頭メモを紙に書く回数が減る)
- コピー用紙の補充・購入頻度が減った
- 書庫の棚に保管していた紙の束が、だんだん空いていった
コピー用紙の枚数までは、私は管理者ではないので把握していません。ただ、補充のタイミングが明らかに遅くなったのは、フロア全員が感じていたことです。KPI の数字がなくても、「紙に手が伸びる回数」は減る、というのは現場ならではの指標だと思います。
情報システム部と現場の役割分担
うちで定着できたのは、情報システム部が手厚く伴走してくれたから、というわけではありませんでした。
情報システム部の役割は 導入するまで です。運用は部署が決める、支援なし、という前提でした。
| 領域 | 情報システム部 | 部署(現場) |
|---|---|---|
| ツール導入・ライセンス | ○ | — |
| 取扱説明書の提供 | ○ | — |
| 業務フロー設計 | — | ○ |
| スタンプ配布・説明会 | — | ○ |
| 定着の監視・声掛け | — | ○(管理職) |
「情シスが導入してくれたから定着する」ではなく、導入後は部署が自分で回す 前提で設計しないと、全社展開で止まりやすい、と感じました。
反面、定着しなかった拠点の話
本社側で成果が出たあと、情報システム部が全社展開を進めました。ところが 別拠点の営業部署では、数年間ほとんど活用が広がりませんでした。
別拠点にあったのは、厚い説明書と「データをここに置いておく」という案内くらいでした。普通の利用者は説明書を読まず、導入しただけでは部署全体に波及しません。
転機は成功部署の事例共有
数年後、情報システム部が積極的に介入し始め、成功した部署の事例 の共有が始まりました。本社側の業務フロー・アノテーション配布のやり方を見せたところから、ようやく「自分たちの営業業務ならこう使える」とイメージできたようです。
| うち(定着した側) | 別拠点(数年止まった側) |
|---|---|
| 導入前に業務フローのたたき台を5名で検討 | 厚い説明書を共有されただけ |
| 最低限の手順書+共有場所で運用資料を常設 | データ格納場所を教えられただけ |
| 初週にスタンプ配布・説明会を実施 | メール等の一過性の案内で終わった |
| 管理職が定着促進の責任を持った | 部署内の担当が決まっていなかった |
導入コストを払ったのに使われない、はもったいない話です。導入と定着は別問題 です。
あえてやらなかったこと
逆に、導入後に やらなかったこと もはっきりしていました。
全書類の電子化は狙わなかった
全書類をいっきに電子化する、という方針は取りませんでした。ただでさえ、新しい業務フローに慣れるだけで一時的に効率が落ちるのが目に見えていました。不要不急の追加業務を入れる余裕はありませんでした。
対象書類を絞り、FAX・見積・受注まわりから始めたのは、この判断があったからです。「全部デジタル化」は理想として語れても、初動でやると現場が潰れます。
当時は OCR も見送った
OCR 一括処理も、当時は見送りました。当時の環境では OCR 機能が弱く、導入の優先度から外しました。
ただ、これは 2020年時点の話 です。技術はその後も進歩しています。読者の環境がこの記事執筆時と違うなら、OCR や検索強化は改めて検討する価値があります。うちがやらなかったから「やるな」とは言いません。初動で効率が落ちているときに、同時に足すかどうかだけ判断してください。
参考にした外部情報と補足ポイント
自分の体験に加え、調査や導入事例で裏付けになった点をまとめます。
定着・運用設計
| 学び | 参考 |
|---|---|
| 更新担当が曖昧だと「誰もやっていなかった」になりやすい | マニュアルの更新ルール解説 |
| 一部門で試行してから全社展開。フローに担当者・部署を明記 | 業務標準化の進め方(NotePM) |
| 最初から複雑なフォルダは逆効果。紙のまま写すとデジタルの強みが活きない | DocuWorksが浸透しない理由 |
ツール活用の補足
| 学び | 参考 |
|---|---|
| 定型操作のワンクリック化。スタンプ配布とあわせて個人の時短に使える | お仕事バー(富士フイルム) |
| ペーパーレスファクス仕分けと DocuWorks の組み合わせ | タカギ様の事例 |
| OCR・全文検索は2020年時点では見送ったが、定着後の第二段階として検討余地あり | (当時の判断メモ) |
意識していること
- デメリットを先に潰し、メリットは現場の言葉で伝える(「2箇所探すのが面倒」など)
- 最低限のラインは導入時に決め切る。強制は手順書、発展的内容は共有場所で任意に
- 進捗はフォルダ遷移+色分け「済み」スタンプで見える化する
- 情シスは導入、運用は部署。説明書より、同じ業務に近い成功事例が刺さる
- 管理職がグレーゾーン(印刷の加減・ルール維持)を握る
- 初動は絞る:全書類電子化や OCR は、効率が一時的に落ちているうちに足さない
まとめ
DocuWorks の定着は、業務フロー・アノテーション初期配布・FAX 紙廃止 の3点セットで決まりました。ツールを入れるだけでは回りません。部署がフローを決め、初週にスタンプを渡し、管理職がラインを維持する——このセットがないと、全社展開しても止まります。
同じ状況の方は、まず「紙をそのまま写さないフロー」と「スタンプ70個クラスの初期配布」から試してみてください。ニッチですが、現場の定着にはかなり効きます |ω・*)