はじめに
2026年9月、Excel で 1つのセルに複数の値を入れられる という発表がありました。
担当者を「山田,佐藤」と1セルにまとめつつ、フィルターでは別々に扱える——ニュースだけ読むと、見た目はきれいです。
ただ、私の頭に浮かんだのは便利さより先に、指示のされ方 でした。
見るだけの人は、セルの中身がリスト型か文字列か、気にしません。
気にするのは「1行で収まるか」「画面がすっきりするか」です。
ニュースが広まると、メンテする側の難易度は後回しで、「1セルに入れて」が増える未来しか見えませんでした(´・ω・`)
この記事は Beta を触った検証ではありません。
公式発表と、営業現場で Excel を 作る側 だった経験から、「説明するのが複雑になりそうだなー」と感じた感想です。
想定読者
- 営業・事務向けの Excel を配布している、作る側 の方
- 「見た目を直して」と頼まれて、集計やフローが壊れた経験がある方
- Power Automate やピボットの後ろに Excel がある方
- ニュースを見て、現場で使ってよいか迷っている方
私の属性
- 30代女性・事務職
- キャリアの大半を 営業部署 で過ごし、社内向け Excel フォームやマニュアルを作る側でした
- 利用者の多くは入力が主で、関数は SUM や ROUND まで、という層です
- MOS Excel など Excel 系の資格は複数あります。見た目と運用の話は 非エンジニアに使ってもらうExcel — 見た目設計と運用でハマった話 にまとめています
何が発表されたか(ニュース)
Microsoft は 2026年9月24日(米国時間)、Excel に次を追加すると発表しました。
- Lists(リスト) … 1セルに複数の値を、ただの文字列ではなく項目として持つ
- Arrays in cells(セル内配列) … スピルで隣のセルにあふれさせず、配列を1セルに収める
- Nested arrays(入れ子配列) … 配列の中に配列を入れる
リストは [挿入]→[リスト]、または Ctrl+J。カンマ(地域によってはセミコロン)で区切って入力する、と公式にあります。
一次情報はこちらです。
日本語の報道は、窓の杜が分かりやすかったです。
対象は Microsoft 365 Insider の Beta チャネル です。Windows は Excel バージョン 2610(ビルド 20520.20000)以降、Mac は 16.114 以降、という案内です。公式も、一般提供まで 大事なブックでは使わない よう書いています。買い切りの Office では使えません。
私は Beta に入れていません。
操作手順やスクショは、この記事では出しません。
「何が変わると言われているか」と「現場で何が困るか」だけにします。
なぜ現場では使いたくないか
現場の表は、見た目の1行より、後工程がスカラー(1セル1値)前提 であることが多いです。
公式側でも、プレビュー時点で次が弱い、と報道されています。
| 機能 | プレビューでの扱い(報道ベース) |
|---|---|
| ピボットテーブル | 配列をソースとして読めない |
| Power Query | 配列列の読み込み・出力ができない |
| グラフ | 配列を個別の点に展開しない |
| 入力規則 | 配列をドロップダウンに使えない |
| 検索と置換 | リストや配列の中の1項目だけ置換できない |
「担当者が複数いるから1セルにまとめたい」は、昔からあります。
そのときはカンマ区切りの 文字列 でした。見た目は似ています。中身はただの文字です。
または、列は増やさずに枠線だけで区切って見せて、実際は1セルのままにします。
リスト型になると、Excel は項目として覚えます。
見る人には同じ1セルでも、COUNTIF や VLOOKUP、テーブルのフィルター、Power Automate の「行を取得」が、今までどおり動く保証はありません。
部署や取引先のPC環境も異なります。
Beta の人と、2019 の人と、Excel Online だけ、が混ざると、「私の画面では見れるから問題無い」という人を説得する仕事が増えます。
引継ぎの際も、機能の説明からする必要があります。
見た目を整えるためだけに掛かるコストが割に合わないと感じました。
Compatibility Version 3 というブック設定が、入れ子の計算に絡む、という話もあります。既存の数式の結果が変わる可能性がある、と案内されています。現場の共有ブックで、バージョン設定まで揃えるのは現実的ではありません。
見る人は見た目だけ指示する
いちばん嫌なのは、機能そのものより 指示の非対称 です。
見る人は、完成した表を開きます。
印刷イメージや、会議用の1画面を見ます。
列が増えると「横に長い」「担当がバラバラで見にくい」と言います。
直すのは、関数・色分け・保護・マクロやフローの接続を知っている側です。
ニュースの見出しは「40年の常識が破られた」「1セルに複数」です。
細かい未対応表までは、指示する側は読みません。
「Excel でできるようになったらしいから」で、見た目の指示が来ます。
難易度も、壊れたときの復旧も、指示した人は担いません(笑)
営業現場では、結合セルも同じ構造でした。
見た目はきれいです。フィルターと並べ替えは壊れます。
私は結合をやめて、「選択範囲内で中央」で見た目だけ揃える、と別記事に書きました。
リスト機能は、結合セルの親戚に見えます。
1行に情報を詰めたい、という要望は同じです。
詰めたあとに誰が直すか、は要望の外に置かれやすいです。
頼まれたときに何で返すか
「1セルに複数入れて」と言われたら、私は次を先に返します。
- 見る用と、集計用を分けます
- 担当が複数なら、列を分けるか、別シートに1行1人にします
見た目用のシートは、表示用の文字列連結でも構いません。
TEXTJOIN で「山田、佐藤」と見せる。元データは担当者1、担当者2、のような列のまま、です。
どうしても1セルに書きたい現場なら、当面は カンマ区切りの文字列 のままにします。
リスト型にはしません。文字列なら、今の関数とフローの前提を大きく変えずに済みます。
項目として扱いたい処理は、作る側が TEXTSPLIT で列に展開してから集計します。利用者には見せません。
Power Automate に渡す表も、1セル1値のままが安全です。
フローを触らない人に渡すなら、判定は Excel 関数側に置いた方がまだ直せます。
リスト型のセルがコネクタでどう返るかは、一般提供後に公式を見てからでよい、と私は考えています。
断るときの短い言い方の例です。
画面は1行にまとめられます。その代わり、フィルター・ピボット・自動連携が今までどおり動く保証がありません。見る用の表と、直す用の表を分けた方が、あとが楽です。
「できない」ではなく、「見る用と直す用を分ける」にすると、見た目の要望は捨てなくて済みます。
意識していること
- 指示する人がメンテしない機能・珍しい機能は、極力使用しない
- 見た目の圧縮は、表示用シートか文字列連結で足す
- 1セル1値は、引継ぎのための約束として残す
- Beta と版混在があるうちは、便利さより復旧性を取る
まとめ
1セルに複数値が入るのは、見る人には朗報です。
実際にセル結合の要望が多い事からも分かります。
作る人には、結合セルのときと同じ種類の問題が増える話です。
指示した人は、完成形を見るだけです。
壊れた COUNTIF も、動かなくなったフローも、見ません。
だから私は、ニュースを読んだあとも、現場では 1セル1値 を守りたいです(´▽`)