■ 受験のきっかけ
受験を決めた背景には、いくつかの思いがありました。
まず、単純に試験費用が45,000円と高額なのですが、ちょうど参加したAgentic Automation Summit Tokyoで資格試験を無料で受けられる特典があったため、「旅費を払ってもお得だな」と思ったことが直接のきっかけの一つです。
まず、やっぱりAIについて勉強したいという思いが強くありました。
受験したいなと思った時点ではまだ本格的に業務で扱ってはいませんでしたが、これから確実に必要になる分野だと考えており、今のうちに先取りして学んでおきたいと思ったことが受験の大きな動機です。
また、ある程度RPAについては一通り学び終えたという自信があり、すでにUiPathのDeveloper Professional資格も取得済みだったことから、次のフェーズとしてAI領域に挑戦し、自分のスキルをさらに広げたいという思いも強く持っていました。
■ 試験の全体感:とにかく範囲が広い!
試験範囲としては、Document Understanding、AI Center、Communications Miningのそれぞれにおいて、基礎的な内容から発展的な細かいポイントまで幅広く問われます。
例えば、
- Document Understandingでは、タクソノミーの設定から分類、データの抽出、バリデーション、エクスポートまでの一連の流れ。
- AI Centerでは、MLスキルの作成、データセットの準備、ラベリング、再評価、パイプラインの構築といったプロセス。
- Communications Miningでは、データソースの接続、データの準備、ラベリング、インサイトの取得までの一連の手順。
こういった各製品の基本操作や構成理解に加え、応用的な設定や概念的理解までが試される内容になっていました。
正直、AI Professional試験は思った以上に広範囲でした。
特に難しく感じたのは以下の点です:
- AI Center、Document Understanding、Communications Miningが密接に絡み合っている
- 質問文だけでは「どのプロダクトの話なのか」が瞬時に判断しづらい
- 「MLスキルの作成」といった専門的な内容まで問われる
- パイプラインの構成や挙動に関する細かな設問
- MLスキルをデプロイした際の動作や評価に関する質問
「これはMLの質問か?それともDUか?CMか?」と迷うような設問もあり、横断的な知識が求められる試験でした。
機械学習・評価指標の基礎知識も問われる
また、出題範囲には以下のようなAIの基本的な学習手法や評価指標に関する知識も含まれていました。
- 強化学習(Supervised Learning)
- 教師あり学習、教師なし学習の違い
- カバレッジ率(Coverage Call)
- プレシジョン(Precision)、F1スコア(F1 Score)などの評価指標
こうした基礎知識が、Document Understanding や Communications Mining のどのフェーズで使われるのか?どのタイミングで意味を持つのか?といった点を問う設問がありました。
AIや機械学習の基礎をある程度押さえておくことも、合格に向けた重要なポイントだと感じました。
Human-in-the-Loop:人とAIの協調に関する出題も
また、機械と人、そしてAIが交わる仕組みとしてのHuman-in-the-Loopの考え方に基づき、Action Centerに関連する設問もいくつか提示されました。
たとえば、Document Understandingで抽出された値をAI Centerで処理し、その内容をユーザーがAction Centerで確認・承認し、最終的にRPAが登録処理を行うというような、一連の人とAIとRPAの協調プロセスに関する設問です。
- AttendedとUnattendedのHITLの違いに関する理解
- 適切なアクティビティの選択
といった観点でも問われる内容が含まれていました。こうした「人が介在するAI活用」の知識も、試験範囲として意識しておくと良いでしょう。
一番難しく感じたのはMLパッケージの理解
私が最も理解に苦しんだのは、AI CenterにおけるMLパッケージに関する部分でした。
MLパッケージのエクスポート方法やインポート方法、そして評価方法など、そもそもMLパッケージという仕組み自体が非常に抽象的でつかみにくい印象がありました。
加えて、実際に動作を試すための環境やライセンスが限られており、「デモンストレーションして確認する」ということができなかったのも、理解の障壁になったと思います。
このように、理論と実践の両面でハードルが高く、個人的には試験範囲の中でもっとも難易度が高く感じた領域でした。
試験で問われた具体的な技術的内容の一例
AI Centerでは、独自のMLスキルを開発・デプロイすることができます。試験ではPythonコードに関する設問が1、2問問だけ出題されました。
具体的な設問の内容はここでは触れませんが、ややマニアックな内容ではありました。PythonでAIのトレーニングを行う際に、どういったPythonファイルやプロジェクト構成が必要になるか、という点についてある程度理解していれば、対応できるレベルだと思います。必要というほどではありませんが、そういったマニアックな出題もあったという印象です。
■ 試験対策:模擬試験+手を動かす+実案件
王道の対策は以下のとおりです。
- UiPath Academyの「AI Center」「Document Understanding」「Communications Mining」コースを一通り受講
- 模擬試験(公式)を受ける
- 実際にUiPathで各製品を操作
ただ、私の場合はUiPath Academyの教材だけでは頭に入らず、実機操作で覚える派でした。さらに言うと、UiPath Academyに限らず、Udemyの動画教材などもあまり自分には合いませんでした。
英語オンリーの模擬試験をどう乗り越えたか
AI Professional試験の模擬試験は、私が受験した当時は英語版しか提供されていないというハードモードでした。
他のUiPathのデベロッパー系試験には日本語対応のものもあるのですが、この試験は例外でした。そのため私は、模擬試験の英語データを個人利用の範囲で抽出・整理し、ChatGPTやDeepLなどを活用して翻訳・内容理解を進めるという方法を取りました。
手間はかかりましたが、日本語で出題された実試験もかなり翻訳品質にばらつきがあり、結果的には英語のまま質問の意図をつかみ、ChatGPTで解釈しながら理解していくというスタイルが一番自分に合っていたように思います。
英語に苦手意識のある方はハードルを感じるかもしれませんが、英語そのものというよりは、“どう補助ツールを使って内容を理解するか”の工夫次第で乗り越えられると感じました。
Chat GPTとプロジェクトフォルダを使った自分流学習スタイル
自分が疑問に思ったことをその都度調べて、自分のペースで深掘りしていくスタイルのほうが性に合っていたため、公式ドキュメントをデータスクリプティングしてGPTに読み込ませたり、模擬試験の内容をもとに似た問題を自分で3本ずつ作って学習を進めていきました。
AIをAIで勉強するという、まさに今っぽい学習法でしたが、自分の中ではバーチャルな家庭教師エージェントを雇っているような感覚で、すごく楽しく取り組めたのが印象的でした。
実案件 × ライセンス活用で最大効果を
そのため、実案件でPocを繰り返すことを最大の対策と位置づけました。
特にDocument UnderstandingやAI Centerは、Community Editionでは機能制限があります。
したがって私は、以下のようにして試験対策を進めました:
- Document Understanding / AI Center:UiPath公式から60日間のEnterprise Trialライセンスを発行(※ライセンス規約に従ってください)
- Communications Mining:Community Editionでは利用不可のため、実案件でPocとして申請→Unit Bundle発行という方法で学習
特にDocument UnderstandingやAI Centerは、Community Editionでは機能制限があります。
したがって私は、以下のようにして試験対策を進めました:
- Document Understanding / AI Center:UiPath公式から60日間のEnterprise Trialライセンスを発行(※ライセンス規約に従ってください)
- Communications Mining:Community Editionでは利用不可のため、実案件でPocとして申請→Unit Bundle発行という方法で学習
■ 今後への展望:Agentic AutomationとML活用の未来
学習内容の前提:2023年10月以前のAI技術がベース
まず大前提として、この試験で扱われている内容は2023年10月以前のUiPath AI関連製品の機能をベースとしたものです。
つまり、Agentic Automation(エージェントオートメーション)登場以前の内容であり、試験ではMaestroやAgent Builderといった最近の革新的な機能には触れられていません。
一部、Document Understandingにおける生成AIベースの補完機能や、Communications Miningを使った注釈(アノテーション)から生成AIを呼び出す補助的な機能などは存在しますが、全体としては生成AIを主軸としたソリューションではないことを理解しておく必要があります。
では「古い内容だから学ぶ価値がないのか?」というと、まったくそんなことはありません。私自身はむしろ、以下の2点においてこの資格が非常に価値あるものだと感じました:
-
AIにおけるテスト・精度評価の概念がしっかり学べること。
- PrecisionやRecall、F1スコアといった評価指標の意味を把握し、どのフェーズで使うのかが理解できる。
-
UiPath独自のAI活用の可能性を理解できること。
例えば、Communications Miningでのパターン発見機能や、請求書の読み取りでMLモデルを自作・チューニングするケースなど、ChatGPTでは代替しづらい領域がある。また、こうした特化型AIを学んでおくことで、Agentic Automationの生成AI機能がいかに簡単に使えるか、その価値もより明確に見えるようになります。
試験勉強を通して実感したのは、これからの時代は生成AI(LLM)とUiPathの既存AI製品(Document Understanding、AI Center、Communications Mining)の適材適所の活用がますます重要になるということです。
特に2024年以降、UiPathが打ち出しているAgentic Automationの文脈では、生成AI(LLM)によってユーザーとの自然な対話や汎用的な処理を実現しつつも、業務に深く根差した領域ではMLの活用が欠かせないと感じています。
言い換えれば、生成AIとUiPathの既存AI製品(Document Understanding、AI Center、Communications Mining)をどう使い分けるかが、これからの自動化スキルのカギになってくると思います。
- 在庫の傾向分析や仕入れ予測などの需要予測系業務
- チケットやメールから、特定の業界独自の階層化された分類コード体系の割り振りや可視化
- 原産地証明書などの構造化された帳票分類
こういった業務では、生成AIよりもDocument Understanding、AI Center、Communications Miningといった既存のUiPath AI製品の方が適しているケースが多いです。
とはいえ、近年の生成AIの成長スピードは非常に速く、RAG(コンテキストグラウンディング)との組み合わせによって、これらの課題を解決できるケースも増えてきているのも事実です。
差別化の視点:すべてが生成AI × RAGではないからこそ意味がある
現在、多くのAI製品が「既存のプロダクトに生成AI(例:OpenAIなど)を接続する」ことで新たなソリューションを展開するという方向性を取っています。これはUiPathに限らず、他社のAIプラットフォームにも共通するトレンドです。
しかし、すべてのソリューションを生成AI + RAGで置き換えようとすると、Microsoft製品やDifyといった他のRAG対応ソリューションとの差別化が難しくなるという問題も出てきます。「だったらライセンスを買わずに、RAGだけ自前で構築してAPI連携すれば良いのでは?」という指摘もよく聞かれます。
その点で、Document Understanding、Communications Mining、AI CenterといったUiPath独自のAI製品群は、業務プロセスに密接に組み込める構造になっており、他社製品との差別化ポイントとして非常に有効です。これらの製品をベースにした提案・プレゼンができることは、UiPathを選ぶ理由のひとつとして確かな強みになると感じました。
■ 最後に:AIの資格としての価値
現時点で、UiPath AI Professionalは数少ないAI自動化に関する資格の一つです。
AIとRPAの両方を理解していることの証明にもなり、キャリアにおいても強みになると感じています。
「これからAIも扱ってみたい」「UiPathのAI製品を深く理解したい」という方には、非常におすすめできる試験です。