導入:なぜ今、AI推進が空回りするのか
多くの組織で、いま同じ現象が起きています。
- AIを「使え」と言われている
- 研修も受けた、ツールも入った
- でも現場は…
- 何をもって「うまく使えている」と言えるのか分からない
- 何を目指して頑張ればいいのか分からない
- 結果「とりあえず触る」か「何もしない」に分かれる
これは個人の能力の問題ではなく、構造の問題です。
AI活用の“ゴール”が定義されていない。
だから、組織全体が迷走します。
結論:AI活用のゴールは「AIエージェント化」以外にない
先に結論です。
AI活用のゴールとは、「人がやっていた仕事を、AIに任せられる状態を作ること」
つまり、主語が“人”から“AI”に変わること。
ここでよくある誤解を切ります。
-
「AIを使った」= ChatGPTを開いた、Copilotに聞いた
→ それは行動であり、ゴールではない -
「楽になった」「速くなった」
→ それは副作用であり、ゴールではない
“AIに任せた”と言い切れる状態。
この一点が、組織の評価・推進・投資判断の基準になります。
解決策:ゴールを「AIエージェント化」と定義し、推進を設計する
1) なぜ「AIエージェント化」が唯一のゴールになり得るのか
AI活用が曖昧になる最大の原因はこれです。
- AIが「判断」しているのか?
- AIが「実行」しているのか?
- AIは「相談相手」止まりなのか?
ここが整理されていないと、永遠に「使ってる感」から抜けられません。
そこでゴールをこう定義します。
AIエージェント化=AIが ①判断し ②実行し ③結果を返す 状態
この定義の強みは、判定可能になることです。
「AI活用できてますか?」という曖昧な問いが、次のように変わります。
- ✅ 「判断はAIがやってる?」
- ✅ 「実行はAIがやってる?」
- ✅ 「人はどこまで介入してる?」
つまり、AIエージェント化は“評価可能なゴール”を作るという意味で最強です。
2) AI推進者の役割を再定義する(ここが一番重要)
AI推進者は、これではありません。
- AIツールを紹介する人 ❌
- 研修をやる人 ❌
- 使い方を教える人 ❌
本来の役割はこれです。
AIに任せられる仕事を増やし、「人がやらなくていい状態」を組織に作ること
推進者がやることは、実は3つしかありません。
- ゴールを明示する(AI活用の到達点を固定する)
- ゴールに向かう行動を定義する(何をやれば評価されるかを固定する)
- 到達度を測る指標を置く(逃げられない物差しを作る)
3) ゴールから逆算した「推進設計」の実装手順(実務で使える形)
ここからは、推進者がそのまま使える“設計の型”に落とします。
Step 1:ゴール宣言テンプレ(社内メッセージにそのまま貼れる)
- AI活用のゴールは「AIエージェント化」
- それ以外(相談、下書き、要約)は「途中段階」
- 評価するのは「触った量」ではなく「任せた量」
Step 2:行動定義テンプレ(評価軸をズラさない)
- ❌ 評価しない:
- 「AIを触った」
- 「プロンプトを書いた」
- 「研修を受けた」
- ✅ 評価する:
- 「AIに仕事を渡した」
- 「AIが判断・実行した」
- 「人の介入が減った」
問いをこう変えます。
- 「AIを作ったか?」ではなく
- 「AIに仕事を渡したか?」を問う
Step 3:指標設計テンプレ(“逃げられない”を作る)
指標はこう考えます。
- 完璧である必要はない
- 正確である必要もない
- でも、逃げられない指標にする
おすすめの“収束先”はこれだけです。
- AIが主語になっている仕事はあるか
- 自分の仕事のうち、AIに任せた割合はどれくらいか
- AIが判断・実行までしているか
- 人がどれくらい介入しているか
最終的にすべてこの問いに収束します。
「AIエージェント化しているか?」
4) (コード例)評価制度・CoE設計にそのまま埋め込めるKPIの“疑似コード”
実装イメージを、あえて疑似コードで置きます(議論が速くなるやつ)。
# AI活用スコア(例)
score = 0
if AIが判断している:
score += 1
if AIが実行している:
score += 1
if 人の介入が「レビューのみ」:
score += 1
if 週次で「任せた業務」が増加している:
score += 1
# 評価の最終判定
if score >= 3:
"AI活用が進んでいる(エージェント化の入口)"
else:
"AI活用が迷走している(相談止まり)"
ポイントは、精密な採点ではなく、主語の移動が起きているかを判定することです。
結果/効果:ゴール定義があると、組織で何が変わるのか
この整理が入るだけで、組織の動きが一気に揃います。
-
現場が迷わない
- 「何をやれば評価されるか」が明確になる
-
CoEが設計できる
- 研修中心から「任せる業務を増やす仕組み」へ変わる
-
ロードマップが描ける
- 相談 → 判断 → 実行 → 自律化 の段階が引ける
-
投資判断ができる
- “使ってる感”ではなく、代替率で議論できる
-
社内メッセージがブレない
- 「主語をAIへ」が共通言語になる
つまりこれは単なる方針ではなく、
評価制度 / CoE設計 / ロードマップ / 社内メッセージ
すべての「背骨」になります。
学び・まとめ:AI推進者が握るべき“たった一つの軸”
最後に要点をまとめます。
- AI活用のゴールは「AIエージェント化」である
- AIを使うこと自体はゴールではない
- 人がやっていた仕事をAIに任せたかを問う
- 小さくていい、完璧でなくていい
- でも 「主語をAIにする」 ことだけは逃げない
実務的Tips:推進が折れないための小技
-
「AI活用」ではなく「任せた業務名」で会話する
- NG:AI活用できてます
- OK:議事録作成をAIに任せました(人はレビューのみ)
-
“相談止まり”を責めない(段階として扱う)
- 相談 → 判断 → 実行 の階段を用意して、今どこかを言語化する
-
最初から全社最適を狙わない
- まずは「任せやすい1業務」を決めて成功体験を作る
ハマりやすいポイントと回避方法
-
罠1:研修実施がゴール化する
- 回避:研修のKPIを「受講率」ではなく「任せた業務数」に置く
-
罠2:ツール導入が成果扱いされる
- 回避:導入はスタート。成果は「AIが判断・実行した件数」
-
罠3:精密な指標を作ろうとして止まる
- 回避:正確さより“逃げられなさ”。まずは粗く始める
次のステップ:明日から推進者がやること(3つだけ)
- 「AI活用のゴール=AIエージェント化」を社内で宣言する
- “評価する行動”を「AIに仕事を渡したか」に統一する
-
指標を1個だけ置く
- 例:「AIに任せた業務数」または「AI代替率(任せた割合)」
この3つを押さえるだけで、組織のAI活用は「放浪」から「前進」に変わります。