結論
社内メーカー(市民開発者)の価値は、作れる量 × 使われる浸透 の掛け算で測ろう。
$$
\text{MV (メーカーバリュー)} = \text{AP (アセット生産性)} \times \text{AE (アセット浸透度)}
$$
PBR = PER × ROE と同じ構造で、iso-MV線(同実力曲線)で四象限を一目で読める。
この記事は誰のため?
| 読者 | 解決すること |
|---|---|
| AI推進部門 / CoE | 「アプリ数」じゃない公平な評価指標がほしい |
| メーカー本人 | 自分が四象限のどこにいて、次どう動けばいいか知りたい |
| 上長・経営層 | 内製化投資のROIを定量で見たい |
なぜ「アプリ数」だけではダメか
- 「10個作りました」→ 1個も使われていないかも
- 「MAU 100人」→ 母集団が100人か10,000人かで意味が真逆
- 単段の通知Flowと複雑な業務統合を同じ"1本"でカウントするのは雑
→ 生産性と浸透度を分けて、掛け算で見る必要がある。
指標の定義
MV(メーカーバリュー)
$$
\text{MV} = \text{AP} \times \text{AE}
$$
メーカー1人月の労働で、何ターゲット母集団分の人が日常的に使うアセットを生み出したか
AP(アセット生産性) ― 横軸
$$
\text{AP} = \frac{\sum_i (c_i \times a_i)}{\text{メーカー稼働時間(人月)}}
$$
- $a_i$: 稼働中アセット(直近90日に1回以上実行)
- $c_i$: 複雑度係数
複雑度係数の例
| アセット種別 | 係数 |
|---|---|
| Cloud Flow(単段) | 0.5 |
| Cloud Flow(複数コネクタ・分岐) | 1.5 |
| Canvas App(単一画面) | 1.0 |
| Canvas App(複数画面・統合データ) | 2.0 |
| Model-driven App | 3.0 |
| Copilot Studio(FAQ型) | 2.0 |
| Copilot Studio(生成回答+アクション) | 3.5 |
AE(アセット浸透度) ― 縦軸
$$
\text{AE} = \text{Avg}_i\left(\frac{\text{MAU}_i}{\text{TargetAudience}_i}\right)
$$
絶対MAUではなく、ターゲット母集団に対する浸透率で見るのがミソ。
| ケース | MAU | 母集団 | AE |
|---|---|---|---|
| 営業100人向けで80人利用 | 80 | 100 | 0.80 |
| 全社1万人対象で800人利用 | 800 | 10,000 | 0.08 |
絶対値では後者が勝つが、組織への刺さり方は前者が圧勝。
四象限マップ
縦軸 AE × 横軸 AP の 2x2 で、メーカーを4タイプに分類します。
| 低AP(量少) | 高AP(量多) | |
|---|---|---|
|
高AE (浸透高) |
🎯 スペシャリスト 数は少ないが刺さる → 横展開・テンプレ化 📍 例: B さん |
🦸 ヒーローメーカー 量×浸透の両立 → メンター化・次世代投資 📍 例: C さん |
|
低AE (浸透低) |
🌱 駆け出し・停滞 出力も浸透も低い → ハッカソン・ペアメイク 📍 例: D さん |
🏭 量産タイプ 作るが使われない → 業務分析・UX伴走 📍 例: A さん |
象限ごとに必要な介入が違うのがポイント。量産タイプに「もっと作れ」は逆効果で、UX改善や要件定義スキルこそ必要。スペシャリストには「もっと刺さるものを横展開して」と頼むのが正解。
データソース設計
| データ | 取得元 | 頻度 |
|---|---|---|
| アセット一覧 | Admin Center / Get-AdminPowerApp
|
日次 |
| MAU・実行数 | Admin Analytics | 日次 |
| 複雑度 | Dataverse + CoE Starter Kit | 週次 |
| ターゲット母集団 | 申請フォーム | 申請時 |
| 稼働時間 | Viva or 自己申告 | 月次 |
CoE Starter Kit があれば8割は取れる。追加設計が必要なのは「複雑度自動判定」と「ターゲット母集団取得」だけ。
評価から施策への翻訳
仮想3人で計算してみる
| メーカー | 稼働(人月) | $\sum c_i a_i$ | AP | 平均浸透率(AE) | MV | 象限 / 打ち手 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A さん | 1.0 | 7.5 | 7.5 | 0.05 | 0.38 | 量産 / Capitalize |
| B さん | 1.0 | 2.0 | 2.0 | 0.70 | 1.40 | スペシャリスト / 横展開 |
| C さん | 1.0 | 9.0 | 9.0 | 0.55 | 4.95 | ヒーロー / Build Next Core |
「アプリ数」だけ見ると A さんが評価されるが、MV で見ると C さんが圧倒的、B さんも A さんの3倍以上の価値。
運用の注意
- 複雑度係数は組織でチューニングする ― 自社のアセット傾向に合わせる
- ターゲット母集団は申請フォームで必須化 ― AE が計算できないと話が始まらない
- 90日未使用は退役・除外 ― ゾンビアセットを生産性にカウントすると歪む
- 個人ランキングに使わない ― 「どこに支援を投下するか」を決めるツールとして位置づける
まとめ
- ✅ MV は 作れる量 × 使われる浸透 の掛け算
- ✅ AP で生産性、AE で価値浸透を分けて評価
- ✅ iso-MV線で量産・高浸透・成熟を一目で見分ける
- ✅ 施策は Build / Capitalize / Optimize に翻訳して運用
「アプリ数」を捨てて乗算分解に乗り換えるだけで、市民開発の景色は一気に変わります。CoE運営の方、ぜひ自組織で MV をプロットしてみてください。