はじめに
私は高専卒エンジニアの新人です。
高専でC言語を体系的に学び、文法やメモリの基礎、構造体やポインタについては一通り理解しているつもりで入社しました。
そのため、
「C言語はもう基礎固まっているし、
あとは環境や業務に慣れるだけだろう」
と思っていました。
しかし実際、配属後にC言語を書くようになると、
学校で学んだC言語と、業務で使われるC言語は“前提条件”が全く違うということを感じました。
この記事では、そのギャップについて整理してみます。
学校で学んだC言語は知識
最初に強調しておきたいのは、
学校で学んだC言語が無駄ではなかったということです。
- 文法
- 配列・構造体
- ポインタの基本
- アルゴリズム
- メモリの概念
これらは業務でも確実に土台として活きています。
ただし、学校のC言語はどちらかというと、
- 自分一人が読む
- 課題として完結する
- 動作確認できればゴール
という前提で成り立っていました。
業務では、その前提が崩れます。
ギャップ①:ファイル分割の意味
- main.c
- xxx.c
- xxx.h
という構成自体は学校でも触れていましたが、
業務では役割の意味合いのベクトルがまったく違うと感じました。
ヘッダファイルは単なる宣言置き場ではなく、
- 「このモジュールは何を提供するのか」
- 「外部からどう使われるのか」
を明示する存在でした。
その意識がないまま書くと、
- リンクエラー
- 定義の重複
- externの混乱
といった問題にすぐ直面します。
ここで初めて、
「自分以外の人が使うコードを書く」
という感覚が腹落ちしました。
ギャップ②:gccの警告は注意ではなく品質基準
学校では、コンパイルが通って動けばOK、
警告は「余裕があれば直すもの」というような扱いでした。
しかし業務では、
-Wall-Wextra-Werror
が当たり前で、
警告=ビルド失敗 という世界でした。
こうした警告は、
今はたまたま動いているだけで、 将来バグになる可能性が高い
というサインだと理解するようになりました。
ここでC言語は、
「厳しい言語」ではなく「正直な言語」
なのだと感じました。
ギャップ③:ポインタは知識から責任に
ポインタ自体も学校は十分に学びました。
文法も意味合いも、理解していたつもりです。
ただし業務では、
- 関数設計
- データの所有権
- メモリ解放の責任範囲
と結びついたとき、
理解の浅さが露呈する場面がありました。
特に、
- 「値を変えたつもりなのに変わらない」
- 「どこでcallocしたメモリか分からなくなる」
こうした場面を経験して、
ポインタは「書けるかどうか」ではなく、
どう設計するかを問われるものだと気づきました。
学校と業務のC言語の決定的な違い
一言でまとめると、
学校のC言語は「正しく書く」ための学習
業務のC言語は「安全に使い続ける」ための実践
だと感じています。
- 誰が読むのか
- 将来どう使われるのか
- 壊れたら何が起きるのか
この視点が加わることで、
同じ言語でもまったく別物になります。
新人の自分が思うこと
高専での学びは、
業務を行うための十分なスタート地点でした。
ただし、
- 「できる」から「任せられる」
- 「知っている」から「使える」
に変わるには、
業務での経験が必要だと感じています。
同じような立場の方にとって、
このギャップを知るきっかけになれば嬉しいです。
おわりに
高専卒だからこそ、基礎を学んできた自負と、
業務を経験し、さらなる学びを得ていく両方が必要だと感じています。