なんとなく脳トレがてら1日1問解説しようと思っただけです.飽きたらやめます.
問題
y^{\prime} = y(1-y).
を変数分離形として解け.
ポイント
- $\displaystyle\frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}=P(x)Q(y)~$ の変数分離形です.
- 変数分離形についてはヨビノリさんの動画などが参考になります(自分スポンサーをしているので宣伝です).
- 両辺を $Q(y)$ で割って $x$ で積分したくなるのですが, $Q(y)\neq 0$ に注意しましょう.
- つまり,$Q(y)\neq 0$ と $Q(y)=0$ で場合分けが必要です.
- 積分計算がちょっと厄介です.部分分数分解をマスターしましょう.
解説
$P(x)=1, Q(y)=y(1-y)$ の変数分離形です.左辺に $y$ の式,右辺に $x$ の式を持っていき,それぞれ積分しましょう. なお,変数分離を行う前に,$Q(y)$ が恒等的に0になる関数 $y(x)$ がないかチェックしておきましょう.今回は,$Q(y) = y(1-y)=0$ より, $y=0$ および $y=1$ が地雷です. 場合分けして解いていきましょう.
① $y(1-y)\neq 0$ のとき.
両辺を $y(1-y)$ で割って,両辺を $x$ で積分します(形式的には左辺を $y$,右辺を $x$ で積分することになります).
\begin{align}
y^{\prime} &= y(1-y), \\
\frac{1}{y(1-y)}\frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}&=1,\\
\int\frac{1}{y(1-y)}\frac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}\mathrm{d}x&=\int 1\mathrm{d}x,\\
\int\frac{1}{y(1-y)}\mathrm{d}y&=\int 1\mathrm{d}x.\\
\end{align}
ここで,$\displaystyle\frac{1}{y(1-y)}=\frac{1}{y}+\frac{1}{1-y}=\frac{1}{y}-\frac{1}{y-1}$ と部分分数分解できるから(本文末尾で過程を補足),
\begin{align}
\int\left(\frac{1}{y}-\frac{1}{y-1}\right)\mathrm{d}y&=\int 1\mathrm{d}x.
\end{align}
後は,$\log A-\log B = \log\dfrac{A}{B}$ に注意してそれぞれ積分・変形を行おう.過程は次の通りです.
\begin{align}
\log{|~y~|}-\log{|~y-1~|}&=x+C_1~~~(C_1:任意定数),\\
\log{\frac{|~y~|}{|~y-1~|}}&=x+C_1,\\
\log{\left|~\frac{y}{y-1}~\right|}&=x+C_1,\\
\left|~\frac{y}{y-1}~\right|&=e^{x+C_1}~~~(\because 両辺の指数をとった),\\
\left|~\frac{y}{y-1}~\right|&=e^{C_1}e^{x},\\
\therefore\frac{y}{y-1}&=\pm e^{C_1}e^{x}.\\
\end{align}
ここで,1日目の問題 同様, $C_1$ が任意の実数値を取るとき, $\pm e^{C_1}$ は0以外のすべての値をとるので,上記は
\frac{y}{y-1}=Ce^{x}~~~(C\neq 0),
と書き換えることができます.あとはこれを $y$ について解くだけです.両辺に $(y-1)$ をかけて,
\begin{align}
y &= (y-1)Ce^x,\\
y &= yCe^x-Ce^x,\\
y(1-Ce^x)&=-Ce^x,\\
y&=\frac{-Ce^x}{1-Ce^x},\\
\therefore y&=\frac{Ce^x}{Ce^x-1}~~~(C\neq 0).
\end{align}
② $y(1-y)=0$ のとき.
$y=0$ または $y=1$ のとき,いずれも $y^\prime = 0$ であるから,関数 $y=0$,$y=1$ は方程式 $y^{\prime} = y(1-y)$ を満たします.よって $y=0, y=1$ も解です.
また, $y=0$ は,①の解 $y =\dfrac{Ce^x}{Ce^x-1}$ において,$C=0$ としたものと一致します.
これに対して, $y=1$ は, $y = \dfrac{Ce^x}{Ce^x-1}$ において,$C$ をどのように選んでも作ることが出来ません(このような解を特異解といいます).
よって,①と②の解を合わせれば,
y =\dfrac{Ce^x}{Ce^x-1}~~~(C: 任意定数),~y=1,
が微分方程式 $y^{\prime} = y(1-y) x$ の解.
【補足1】 部分分数分解
$\dfrac{y}{1-y}$ の部分分数分解のやり方を簡単に詳解します.
まず,$\dfrac{1}{y(1-y)} = \dfrac{A}{y}+\dfrac{B}{1-y}$ とおきます.
方法① 数値代入法
両辺に $y(1-y)$ をかけると,
1 = A(1-y) + By,
という $y$ についての恒等式ができます.後は,$y$ に任意の実数を代入して $A$ と $B$ に関する連立方程式を得ます.
$y=0$ を代入して,
1 = A,
$y=1$ を代入して,
1 = B,
よって $\dfrac{1}{y(1-y)} = \dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{1-y}$.
方法② 係数比較法
右辺を通分すると,
\frac{1}{y(1-y)} = \frac{(-A+B)y+A}{y(1-y)},
と変形できるから,分子に着目し $y$ の多項式についての係数の比較を行いましょう.左辺は1であるから,右辺の $y$ の係数は0, 定数項の値が1になります.よって,得られる連立方程式は次の通りです.
\begin{align}
\left\{ \,
\begin{aligned}
0 & = -A+B, \\
1 & = A. \\
\end{aligned}
\right.
\end{align}
よって $A=B=1$ であるから $\dfrac{1}{y(1-y)} = \dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{1-y}$.
方法③ 暗算1
やっていることはほとんど方法②の係数比較法です.頭の中を書き出してみると,
- $\dfrac{1}{y(1-y)}$ の分子に $y$ の項がない
- $y$ と $1-y$ における $y$の係数は 1 と -1 で異符号
という条件から,
\frac{1}{y(1-y)} = \frac{1}{a}\left(\dfrac{1}{y}+\dfrac{1}{1-y}\right)
であることがぱっと見わかります.$a$ は,実際に右辺の括弧()内を通分して計算したときの定数項の値です.今回はたまたま1なので即完了です.
方法④ 暗算2
やっていることは数値代入法です.連立方程式すら書きたくない人向けです.証明はクドいだけなので省略しますが,$A$ および $B$ は以下のような暗算レベルの計算で求めることができます.
\begin{align}
A &= \left.\frac{1}{y}\right|_{y=1}=1,\\
B &= \left.\frac{1}{1-y}\right|_{y=0}=1.\\
\end{align}
イメージはクラメルの公式です.$A$ を求めるときは,第1項の $A$ を左辺の分子に置き換えて,$y$ には第2項の分母が 0 になる $y$ (ここでは $y=1$ ) を代入します.同様に,$B$ を求めるときは,第2項の$B$を左辺の分子に置き換えて,$y$ には第1項の分母が 0 になる $y$ (ここでは $y=0$ ) を代入します.
詳細はこちらのサイトがわかりやすいです.
【補足2】
部分分数分解後の変形によっては,解が,
y =\dfrac{Ce^x}{Ce^x+1}~~~(C: 任意定数),~y=1,
や,
y =\dfrac{e^x}{e^x+C}~~~(C: 任意定数),~y=1,
のようになるかもしれないですが,どれも本質的には同じなので正解です.
【補足3】
$y^{\prime} = y(1-y)$ は $y^{\prime} -y= y^2$ としたベルヌーイ型としても解けます.
こちらも,よろしければヨビノリさんの動画をご参照ください.
【参考】 Wolframalpha
非常に便利なので皆さん積極的に使っていきましょう.