AWSの中東リージョンの一部が復旧不能に。クラウドなのにデータが失われるとは?
「AWSの中東リージョンが復旧不可って何?!」
「クラウド保存なのにどうして!?」
2026年9月、AWSが中東の一部リージョンについて、保存されていたデータやリソースへのアクセスを復旧できないと発表しました。
この記事では、今回のニュースをきっかけに、
- そもそもクラウドとは何なのか
- AWSのリージョンやAZとは何なのか
- なぜクラウドでも物理的な被害が問題になるのか
- バックアップや複数リージョンがなぜ重要なのか
- データの保存場所について、何を考えるべきなのか
を、初学者向けに整理します。
この記事では、専門的な内容には深く踏み込まず、初学者向けに解説します。
内容に誤りがありましたら、ご指摘いただけますと幸いです。
何が起きたのか
AWSは2026年3月、ドローン攻撃によって中東にあるデータセンター施設が被害を受けたと説明しました。
その後、約半年にわたり復旧作業が行われていましたが、2026年9月15日、AWSは、バーレーンリージョンについて、リージョンにのみ存在するデータやリソースへのアクセスを復旧できないと発表しました。
また、UAEリージョンについても、mec1-az2 というAZにのみ存在するデータやリソースへのアクセスを復旧できないと発表しました。
以前から別リージョンへデータの移行を推奨していたため、 多くの顧客は、別リージョンへの移行やバックアップなどによって運用を再開しています。
そもそもクラウドとは?
ここから先は、ニュースを読み解くための用語解説をしていきます。
クラウドとは、インターネットに浮いている謎の存在ではありません(アイコンではよく雲の形してるけど)
クラウドとは、
インターネットなどのネットワークを通じて、他社が管理するコンピューターやストレージなどのIT資源を、サービスとして利用する仕組みの名称
です。
クラウドでは、利用者が物理サーバーを直接操作する代わりに、AWSが提供するサービスを通じてコンピューターやストレージを利用します。
その裏側では、実際のサーバー、ストレージ、ネットワーク機器などの物理的な設備が動いています。
つまり、クラウドに保存したデータは、物理サーバーやストレージなどに保存されているということです。
AWSのリージョンとは?
AWSは世界各地にデータセンターを構えています。
そんな、1つ以上のデータセンターが集まった地域のことを「リージョン」と呼びます。
つまり、バーレーンリージョンとは
中東の島国バーレーンの、AWSのデータセンター拠点が複数置かれた地域単位
です。
ちなみに、日本には、東京リージョンと、大阪リージョンが存在します。
リージョンを分ける理由には、次のようなものがあります。
- 利用者に近い場所でサービスを提供する
- 通信の遅延を抑える
- 災害や障害の影響範囲を分離する
- データの保存場所に関する要件に対応する
- 各地域の法令やビジネス要件に対応する
AWSでは、すべてのサービスのデータが、標準で複数リージョンに自動複製されるわけではありません。
別リージョンへのバックアップや複製には、サービスごとの機能や設定が必要になる場合があります。
アベイラビリティゾーン(AZ)とは?
リージョンの中には、複数の「アベイラビリティゾーン(Availability Zone、AZ)」があります。
AZは、簡単にいうと、
リージョンの中で、物理的に分離された独立性の高い設備群
です。
AWSでは、AZを物理的に分離することで、1つのAZで障害が起きても、他のAZを使ってサービスを継続できるような構成を取れるようになっています。
しかし、リージョンと同様に、すべてのサービスのデータが、標準で複数AZに自動複製されるわけではありません。
利用するAWSサービスや設定によって異なりますが、データの複製や冗長化についての設定が必要になる場合もあります。
リージョンやAZを分けることで、1つのデータセンターやAZに障害が起きた場合でも、別の場所を使って復旧・継続できる可能性があります。
ただし、複製や冗長化の仕組みは、利用するAWSサービスや設定によって異なります。
すべてのデータが自動的に複製されるわけではないため、必要に応じて事前の設定が必要です。
なぜ今回は復旧できなかったのか?
ここまでの話を踏まえて、ニュースの要点をまとめます。
- AWSは、アベイラビリティゾーン(AZ)を物理的に分離することで、障害の影響を抑えている
- しかし今回は、バーレーンリージョンで複数のAZに被害が及び、想定を超える規模となった
- その結果、バーレーンリージョンにのみ存在するデータやリソースを復旧できないと判断された
- つまり「AZを分けておけば、どんな災害でも必ず復旧できる」わけではない
データを複製していれば助かるのか?
複数のAZやリージョンにデータを複製することで、一部が利用できなくなっても、別の場所から復旧できる可能性があります。
ただし、複製の仕組みはAWSのサービスや設定によって異なるため、同じリージョン内の複製だけでは、リージョン全体に影響する障害に対して対応できない場合もあります。
そのため、重要なデータは、必要に応じて別リージョンへのバックアップや複製を検討することが重要です。
クラウドとは、インターネットを通じて遠方の物理サーバーにつなぐ形態です。
物理サーバーのもしもを考えて復旧方法を設計する必要があります。
クラウドだから絶対にデータが失われないわけではありません。
重要なデータは、保存場所やバックアップ先、復旧方法をあらかじめ設計しておくことが重要です。
海外リージョンにデータを置くときの注意点
AWSは中東情勢の悪化に伴い、中東リージョンから欧州リージョンへの移行を推奨しており、多くの顧客が移行・バックアップによってそれぞれのサービスを再開ています。
しかし、リージョンの選択は、単に「安全そうな国を選ぶ」という話ではありません。
データをどこに保存するかによって、運用上の注意点が変わることがあります。
例えば、EUにはGDPR(一般データ保護規則)という個人データ保護に関するルールがあります。
EU域内に個人データを扱うサーバーが設置されている場合もGDPRの適用対象になります。
もちろん、「EUリージョンにデータを置いたら、必ずGDPR違反になる」というわけではありません。
AWSには、GDPRに対応したData Processing Addendum(DPA)というデータ処理に関する契約上の取り決めがあります。
しかし、AWSが契約上のデータ保護に関する取り決めを用意していることと、利用者側の法令対応が不要になることは別です。
AWSと利用者は、それぞれ異なる範囲の責任を持っています。
AWSがインフラを管理していても、利用者側には、アプリケーションやデータの扱いについて確認・管理すべき事項があります。
個人開発であっても、顧客の個人情報を扱うなら、データの保存場所や法令対応を確認しておきましょう。
あとがき
今回のニュースについて個人的に調べてみたついでに、AWSのリージョンについて復習がてら初学者向けにまとめました。
攻撃が再び来るかもしれないという状況下で、復旧作業を行ったAWS職員の皆様に敬意を抱きます。
そして、UAEリージョンでまだ復旧途中のAZが無事復旧することを願っております。
つたない文章ですが、ニュースを読み解く手助けになっていれば幸いです。
参考資料
- AWS公式(AWS Health Dashboard)
- ITmedia NEWS『ドローン攻撃を受けたAWS中東データセンター、半年の復旧作業の末に「一部データは回復不能」』
- 日立ソリューションズ『GDPR(EU一般データ保護規則)とは? 日本企業が対応すべきポイントを考える』
