はじめに
こちらは「本番環境などでやらかしてしまった人 Advent Calendar2025」の13日目の記事です。
知ってしまえばしょうもない話ですが、ちょっとした不注意が問題を引き起こしてしまったことへの戒めです。
もうずいぶん昔の話ですので、どうぞお気軽に笑ってください。
その日、お客様のサーバーが止まってしまった
その日、システムのパッチ適用を依頼され、現地へ訪問することになりました。
お客様の環境は、ローカルネットワーク内のサーバーでWebサービスを運用してクライアントで接続する。いわゆるセルフホスト型のシステム。
サーバーを直接操作させていただけないためお客様のクライアント端末をお借りし、Windowsのリモートデスクトップ接続を使ってサーバーへアクセス。
作業を進めることにしました。
パッチ自体はごく単純なものです。
あらかじめ準備していたファイルをサーバーへコピーして実行。
その後、お客様に別のクライアントから動作確認をしていただき、問題なしとの返答をいただいたので安心して現場を後にしました。
会社へ完了の一報を入れ、その日は定時を過ぎるので直帰することに。
新幹線に揺られながら半分眠りかけていたその時、小気味いいバイブレーションが胸ポケットに響きました。
同僚からのメールです。そこには短い一文がありました。
――『お前、サーバーの電源、落としただろ』と。
そんなわけがない、だけど確かにサーバーは止まっていた
当然ながら、わたしにはサーバーを止めた覚えはありません。
そもそも「お客様にクライアントから動作確認をしていただいている」以上、帰る時点ではサービスが正常に稼働していたことは明らかです。
ところが問い合わせを受けた同僚によれば、確かにサーバーの電源は落ちていたとのこと。
事態が判明した時点でお客様にサーバーの電源を入れていただくことでひとまずサービスは回復したようですが、原因は不明のままです。
そこで調査のため、急遽引き返すことになりました。
再び到着したのはお客様の閉業時間後。
残業という迷惑を重ねてかけてしまっていることをお詫びしつつサーバーを直接操作し、Windowsの起動ログを確認しました。
「たしかにシャットダウンしているな……」
記録されていたのは“計画外の終了”。
つまり、なんらかが意図的にシャットダウンを選んでサーバーを終了したことは間違いありません。
しかしよく見ると時間がおかしい。
サーバーはわたしが帰ったおよそ30分後にシャットダウンされていたのです。
それはつまり「わたし以外の誰か」がシャットダウンを実行したことを示しています。
念のため「サーバーのシャットダウン操作をしましたか」とお客様に確認しましたが、回答は当然「NO」。
それでも「誰かが実行したことは間違いない」と考えながらログを眺めているとひとつの違和感に気が付きました。
――思い返してみると、そういえばやった覚えがない。
わたしはお客様に質問をしました。
「お貸しいただいた端末(クライアント)はどのようにシャットダウンされましたか」
かくしてサーバーは止まる
なんてことはありません。
わたしがしでかしたのは「リモートデスクトップ接続のログオフ忘れ」でした。
お客様からお借りしていたクライアントは、わたしが帰った後には誰も操作しない状態。
そこでお客様は端末をシャットダウンしようとしました。
しかし画面いっぱいに広がっていたのは「サーバー環境」。
その端末の所有者であれば違和感に気づけたかもしれませんが、対応いただいた方の端末ではなかったためそのままシャットダウンしてしまったのです。
先ほどの質問に対して、お客様はこう答えました。
「シャットダウンしたつもりだったんだけど、しばらくしてもシャットダウンできてなかったんだよね」
それもそのはず。
シャットダウンされたのはあくまでサーバー。クライアント本体ではありません。
その後、作業手順書に「サーバーからログオフした後、システムに接続できることを確認する」という工程が追加されることとなりました。
おわりに
今回の出来事から得られる教訓は、とてもシンプルです。
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「ログオフを忘れない」
リモートデスクトップ接続を利用した作業では、必ずセッションを終了すること。
そもそも第三者の操作を防ぐために逐次画面ロックやログオフを行うべきです。
今回のように、たった一つの操作忘れが本番環境の停止という大きなトラブルにつながります。 -
「軽微な作業でも手順書を作る」
たとえ小さな作業であっても、手順書は用意すべきです。
今回の事案は「簡単な作業だから」と油断していたために発生したと考えます。
定型的な手順書でも構いません。「帰るための作業手順書」のようなものを用意していれば、防げていたのではないかと思います。
小さな不注意が大きなトラブルを引き起こすことがあります。
だからこそ基本的な確認を怠らないことが何より大切だと痛感しました。
この失敗談が誰かの「うっかり」を防ぐ一助になれば幸いです。