0
0

More than 1 year has passed since last update.

データサイエンスのための線形代数 第26回 解の存在性

Posted at

本記事は数学講座6.1 解の存在性を勉強して投稿したメモです。詳細は元の素晴らしい講座のページをチェックしてください。

解の存在性に関して、データサイエンスのための線形代数 第22回 行列関数の全単射で解説した通り、行列$A$が単射、全射、全単射かに関わっています。


\begin{array}{c|c|c|c}
    \hline
    \quad行列関数\quad&\quad 単射の必要十分条件 \quad&\quad 全射の必要十分条件 \quad&\quad 全単射の必要十分条件 \quad\\\hline\\
    \quad \begin{aligned}A\boldsymbol{x}=\boldsymbol{y}\ \ \\\boldsymbol{x}^\mathrm{T}A=\boldsymbol{y}^\mathrm{T}\end{aligned} \quad&\quad \begin{aligned}列フルランク\\行フルランク\end{aligned} \quad&\quad \begin{aligned}行フルランク\\列フルランク\end{aligned} \quad&\quad フルランク\quad\\
    \\
    \hline
\end{array}

補足:

  1. 単射:定義域=値域、唯一な解あるか
  2. 全射:到達域=値域、解存在か(指定の値が値域にあるのか)
  3. 全単射:定義域=値域=到達域、解ある且つ唯一な解

幾何観点からの線形方程式

二つ未知数の線形方程式

以下のように二つ未知数の線形方程式:


\begin{cases}
    a_{11}x_1+a_{12}x_2=b_{1}\\
    a_{21}x_1+a_{22}x_2=b_{2}\\
    a_{31}x_1+a_{32}x_2=b_{3}
\end{cases}

幾何的に見れば、これが三本の線の交差点があるのかを解きます。

三つの未知数の線形方程式

以下のように三つ未知数の線形方程式:


\begin{cases}
    a_{11}x_1+a_{12}x_2+a_{13}x_3=b_{1}\\
    a_{21}x_1+a_{22}x_2+a_{23}x_3=b_{2}\\
    a_{31}x_1+a_{32}x_2+a_{33}x_3=b_{3}
\end{cases}

幾何的に見れば、これが三つの面の交差点があるのかを解きます。

行列観点からの線形方程式

以下のような二つ未知数の線形方程式があります。

\begin{cases}
    a_{11}x_1+a_{12}x_2=b_{1}\\
    a_{21}x_1+a_{22}x_2=b_{2}\\
    a_{31}x_1+a_{32}x_2=b_{3}
\end{cases}

行列の乗法式へ変更すると:

\underbrace{\begin{pmatrix}a_{11}&a_{12}\\a_{21}&a_{22}\\a_{31}&a_{32}\end{pmatrix}}_{A}\underbrace{\begin{pmatrix}x_1\\x_2\end{pmatrix}}_{\boldsymbol{x_{}}}=\underbrace{\begin{pmatrix}b_{1}\\b_{2}\\b_{3}\end{pmatrix}}_{\boldsymbol{b_{}}}\implies A\boldsymbol{x_{}}=\boldsymbol{b_{}}

これが行列関数の$Ax=y$、$y=b$の時の$x$の解の状況です。

更に一般的な線形方程式系になると:


\begin{cases}
    a_{11}x_1+a_{12}x_2+\cdots+a_{1n}x_n=b_{1}\\
    a_{21}x_1+a_{22}x_2+\cdots+a_{2n}x_n=b_{2}\\
    \qquad\qquad\quad\vdots\qquad\qquad\quad\vdots\\
    a_{m1}x_1+a_{m2}x_2+\cdots+a_{mn}x_n=b_{m}
\end{cases}
\implies
\underbrace{A}_{m\times n}\quad\underbrace{\boldsymbol{x_{}}}_{n\times 1}\quad=\quad\underbrace{\boldsymbol{b_{}}}_{m\times 1}

これも行列関数の$Ax=y$、$y=b$の時の$x$の解の状況です。

上記のように、線形方程式が行列関数です。これから行列関数の知識で、線形方程式を解くようにします。まず
以下の三つの問題を見ていきます。

  • 解の存在性:$Ax=y$で、$y=b$の時に、$x$が存在するか
  • 解の件数:$Ax=y$で、$y=b$の時に、$x$が何件存在するか
  • 解の集合:$Ax=y$で、$y=b$の時に、具体的に、どれら$x$ なのか

この記事では、まず解の存在性を確認します。

解が存在するか $=$ $b$の値が値域に存在しているか、存在していれば、定義域に相応な$x$があるので、解があります。

解と行列関数の値域

行列関数型の線形方程式$Ax=y$に対して、$b$が行列関数$AX=y$の値域内に存在しているか を判断できれば、解があるかがわかります。

\boldsymbol{A}\boldsymbol{x}=\boldsymbol{b}\ \ \begin{cases}\text{解なし:}&\boldsymbol{b}\ \text{が}\ \boldsymbol{A}\boldsymbol{x}=\boldsymbol{y}\ \text{の値域内ではない}\\\text{解あり解:}&\boldsymbol{b}\ \text{が}\ \boldsymbol{A}\boldsymbol{x}=\boldsymbol{y}\ \text{の値域内}\end{cases}

例1(解なし→線形独立):

以下の線形方程式には、$x$の解があるか?

\begin{cases}x_1-x_2=1\\x_1-x_2=2\end{cases}

まず、線形方程式から行列関数へ変換します。

\begin{cases}x_1-x_2=1\\x_1-x_2=2\end{cases}\implies\underbrace{\begin{pmatrix}1&-1\\1&-1\end{pmatrix}}_{\boldsymbol{A}}\underbrace{\begin{pmatrix}x_1\\x_2\end{pmatrix}}_{\boldsymbol{x}}=\underbrace{\begin{pmatrix}1\\2\end{pmatrix}}_{\boldsymbol{b}}

$A$の列ベクトルが:

\boldsymbol{c_1}=\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix},\quad\boldsymbol{c_2}=\begin{pmatrix}-1\\-1\end{pmatrix}

{$c1,c2$}の列ベクトル組の張る空間が行列関数$Ax=y$の値域です。{$c1,c2$}が線形従属で、平面での線になります。
image.png

$b$が線に存在していないので、該当線形方程式には解なしです。

例2(解あり→線形従属):

以下の線形方程式には、$x$の解があるか?

\begin{cases}-x_1+2x_2=0\\\qquad\quad2x_2=2\\\ \ \ x_1-2x_2=0\end{cases}

まず、線形方程式から行列関数へ変換します。

\begin{cases}-x_1+2x_2=0\\\qquad\quad2x_2=2\\\ \ \ x_1-2x_2=0\end{cases}\implies\underbrace{\begin{pmatrix}-1&2\\0&2\\1&-2\end{pmatrix}}_{\boldsymbol{A}}\underbrace{\begin{pmatrix}x_1\\x_2\end{pmatrix}}_{\boldsymbol{x}}=\underbrace{\begin{pmatrix}0\\2\\0\end{pmatrix}}_{\boldsymbol{b}}

$A$の列ベクトルが:

\boldsymbol{c_1}=\begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix},\quad\boldsymbol{c_2}=\begin{pmatrix}2\\2\\-2\end{pmatrix}

値域が$\mathbb{R}^3$の水色の平面です。
image.png

$b$が列ベクトル組{$c1,c2$}の線形結合なので、$b$が$A$の列空間内 $colsp(\boldsymbol{A})$です。

\boldsymbol{b}=2\boldsymbol{c_1}+\boldsymbol{c_2}\in colsp(\boldsymbol{A})

$b$が行列関数$Ax=y$の値域内ですので、解があります。

解の存在性

定理(解の存在性)
線形方程式$\boldsymbol{A}\boldsymbol{x}=\boldsymbol{b}$について、その拡大行列を$\boldsymbol{B}=(\boldsymbol{A}\ |\ \boldsymbol{b_{}})$とするとき、以下の条件が成り立つ:

  • 解なしの場合、$rank(\boldsymbol{A}) < rank(\boldsymbol{B})$である。
  • 解ありの場合、$rank(\boldsymbol{A})=rank(\boldsymbol{B})$である。

$rank(\boldsymbol{A})=rank(\boldsymbol{B})$であれば、$b$が$Ax$の線形結合なので、$b$が$Ax$の張る空間(値域)にあります。

上記の例1と例2:

  • 解なし:$b$が$A$のベクトル空間外なので、ランクが増えます
    image.png

  • 解あり:$b$が$A$のベクトル空間内なので、ランクが変わらない
    image.png

行フルランクの行列は必ず解あり

行列$A$:$A$が行フルランク $➡$ $Ax=b$解あり

$A$が行フルランクの時に、$Ax=y$が全射、到達域での$b$も値域に存在するので、$Ax=b$は必ず解あり。

練習

  • 以下の線形方程式に解ありか?
\begin{cases}x+y+z=2\\2x+y-z=3\\-2x+y-z=1\end{cases}

image.png

  • 以下の線形方程式に解ありか?
\begin{cases}x+y+z=0\\-2x-y+z=0\\x+y+z=1\end{cases}

image.png

参照情報

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0