はじめに
私は元々UI/UXデザイナーで、約1年前からPower Appsでの業務アプリ開発に本格的に取り組み始めました。まだベテランではなく、現在進行形で学んでいる立場です。
そんな私が、この1年の開発経験と、これまでのデザイナーとしての経験を振り返って強く感じていることがあります。
新人の成長速度は、知識力や技術力などのスキル以前に、「目の前の人・情報・課題にどれだけ興味を持てるかで大きく変わる」、ということです。
興味の持ち方ひとつで、半年後が圧倒的に変わる
これから仕事を通じて、様々なことを吸収していかれるかと思います。
なぜ同じ時間を過ごしているのに、半年後の状態が変わってしまうのか?
消費型インプット
たとえば、エラーメッセージが出たとき。
メッセージをコピペして検索、出てきた解決策を適用して、問題なく動いたから次へ。
これでも仕事は進みます。
探索型インプット
しかし、「そもそもこのエラーは何を伝えているのか?」「エラーの出る条件は?」 と、もう一歩踏み込む人は、同じエラーに向き合っているにも関わらず、裏側の仕組みまで理解していく。先輩のコードを読むときも、「こう書けば動作するんだな」 で流すか、「なぜこの書き方を選んだんだろう?他の書き方は?」 と意図までを考えるかどうかで、同じコードから得られるものがまるで違うでしょう。
どちらも同じ時間、同じ仕事をしています。でも、興味を持って「なぜ?」を差し込んでいるかどうかで、積み上がっていくものが変わってしまう。
この違いは、能力の問題というより、「情報を自分の中に取り込む回路が起動しているかどうか」 の前提に近い。興味が向いていないと、同じインプットを受けていても効率が悪い。
だからこそ、技術を学ぶ前に、まず 「興味をどう持つか」 を考えること。そこにこそ、成長のレバレッジがあるはずです。
仕事は「興味深い」と思える事ばかりではない
仕事をしていく中で、自然に興味が湧くテーマもあります。もしくは元々興味があるテーマもあるでしょう。
でも、プロとして仕事をしていると、「これまで知らなかったこと」や「今はあまり興味が持てないこと」にも向き合わなければならない場面の方が多いかもしれません。
興味が薄いまま仕事をこなすと? 〜 私の例 〜
私の経験では、対象に興味を持たないまま引け腰で仕事を進めると、かなりの確率で失敗するか、事故に近いことになりました。そのことに気がついてからは、仕事に対して「充分な興味を持つ」ということを大事にしています。
よく言われる言葉だと「モチベーションを維持する」「自分ごとにしてやる気を出す」あたりでしょうか。ただ、これをスタンスやマインドだけの問題として捉えようとすると、うまくいきません。「モチベーションを出そう」と意気込んでも、そもそもの足場がないからです。
関心と興味とモチベーション
少し分解して考えてみます。
- 関心(Attention) — 「これは自分に関係がある」と認識し、注意を向ける段階
- 興味(Interest) — 「なぜ?」「どうして?」と問い、情報を深く取り込みにいく段階
- モチベーション(Motivation) — 継続的にエネルギーが湧き、前に進む動力が発生している段階
モチベーションという段階を生むためには、興味が必要、興味を生むためにはそもそも物事に対する関心が必要。
逆に、「興味がない」状態でいきなりモチベーションだけ上げようと思っても足場がない。
「モチベーションが湧かない」と感じたとき、もう一段手前に降りて、「そもそも自分は、この対象に興味を持てているか?」 と問い直してみる。
「問題を解ける階層」まで降ろして考えることが大事です。
そもそも興味を持つためには?
では、興味はどうすれば持てるのか。「興味深いと感じるかどうか」「面白いと思えるかどうか」は、自分の意志だけではどうにもならない部分があります。
でも、興味が発火する条件を整えることは、自分でできると考えています。
ここから先は、その具体的なやり方の話です。
仕事では「興味が湧く」のを待てない — Invoke という感覚
先ほど述べたように、仕事では「興味がないから」では済みません。ないものはあるものにしていく必要があります。
ここで自分がしっくりきている感覚が、プログラミング言語で言うところのInvokeです。
Invoke は、プログラミングで「関数やイベントハンドラを明示的に呼び出す」ときに使われる操作です。イベントが自然に発火するのを待つのではなく、自分からそれを呼び出しにいく。
興味もこれに近いと思っています。
「興味深いと感じるイベント」を受動的に待つのではなく、自分から興味を呼び出しにいく。
これは気合いや根性などのマインドの話ではなく、仕事を進めるためのひとつの操作です。
自分にできるのは発火条件を整えるところまでで、「興味深い」と感じる反応自体は、自分の中の回路が勝手にやってくれる。
だから、面白いと無理に思い込む必要はない。ただ、トリガーを意図的に引くように仕向けます。
興味をInvokeする3つのアプローチ 〜 自分自身をハックする 〜
現在まだ興味のないテーマに対して、自分が実際にやってきたことを3つ書きます。
偉そうに提示できるほど整理された方法ではないですが、振り返るとだいたいこの3つに集約されます。
1. 環境や立ち位置そのものを変える(Positioning)
一番強力なのは、そもそも興味を持てる位置に自分を移すこと。
自分の得意な方法にアプローチを変えてみる、チーム内で調整して取り組むテーマを変えてみる、自身が担当する役割を上司に相談して変えてみる。そもそも 「自分自身が向き合う対象」 が変わります。
ただ、新人のうちは役職や権限の制約で動かせる範囲が限られます。だから、次の2つの方が実戦向きかもしれません。
2. 素晴らしい未来の状態を具体的に想像する(Visualizing)
「これを理解できたら、自分は何を得られるか」をかなり具体的に考えます。
この分野がわかったら、どんな会話ができるようになるか。
どんな判断ができるようになるか、どんな場面で頼りにされるか。「望ましい状態になった自分」 を想像したりもします。
仮に目の前のテーマ自体は面白く感じることはできなくても、その先にある良い状態を具体的に想像すると、「それなら興味深いかもしれない」 と変換しやすくなる。
自動的に湧かないのならば、繰り返しイメージして意味を書き込んでいく。
これは認知の変換操作として、意識的にやっていることが多いです。
3. 問いを置いて、穴を開ける(Questioning)
3つの中で最も即効性があるアプローチです。
興味から問いが生まれるのが自然ですが、あえて 「逆回し」 をします。
- 「なぜこの仕様になっているのか?」
- 「なぜこの人はこう言っているのか?」
- 「この背景には何があるのか?」
- 「このようにしたら、どうなるのか?」
自分の中に「問い」という穴を開けると、その空白を埋めたくなります。ただの作業が「探索」に変わる瞬間です。
つまらないと思っていた設定ファイルの書式でも、「なぜJSONなのか?」「なぜこの項目が存在しているのか?」と問うた瞬間に、急に見えてくるものがありそうです。
興味を向ける対象は、どこにでもある
先輩の言うことに興味を持つ。
同僚の話に興味を持つ。
世の中の情報に興味を持つ。
自分が向き合っている課題に興味を持つ。
どれも、こなして素通りすることもできるし、一瞬立ち止まって「なぜ?」を差し込むこともできる。
興味を持って向き合えると、質問の質が変わる。
理解の解像度が上がる。
相手の意図を取り違えにくくなる。
結果として、具体的なアクションも変わってくる。
一つひとつは小さなInvokeですが、その 「積み重ね」 が、知らず知らずのうちに、半年後の自分を大きく変える。差がつくとしたら、たぶんここだと思います。
補足
似たような話は教育心理学の領域でもすでに研究されています。
Deci & Ryanの自己決定理論では、内発的動機づけ(intrinsic motivation)が、自律性・有能感・関係性という基本的欲求の充足を通じて生まれるとされ、その中心には対象への自発的な興味がある(Ryan & Deci, 2000)。
また、Hidi & Rennigerの「興味発達の4段階モデル」では、興味は最初、外部からのトリガーによって発火する一時的な状態(triggered situational interest)として始まり、それが維持・深化することで安定した個人的興味へと育っていく、とされています(Hidi & Renninger, 2006)。
この記事は論文ベースではなく、あくまで実感としての話です。
ただ、興味が持つ力について、裏側にこういう知見もあるということは添えておきます。
おわりに
新人向けの記事というと、「学ぼう」と言う話になりやすいですが、
その前に、目の前の対象にどう興味を持つかという土台がかなり重要だと思っています。
仕事は、興味深いことばかりではありません。
だからこそ、興味は自然に湧くのを待つのではなく、自分から起動しにいくものだと思っています。
目の前の対象に「なぜ?」を差し込む。
その小さなInvokeの積み重ねが、半年後の差になっていくはずです。
