1. 推定量とは
定義
推定量(estimator)とは、未知の母数を推定するための「確率変数(式)」である。
重要なのは:
- 推定量 = 式、確率変数
- 推定値 = 実データを代入して得た数値
という区別です。
例:母平均 μ の推定
$$
\bar X = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^n X_i
$$
- $\bar X$:推定量(確率変数)
- 観測値を代入した結果:推定値
👉 推定量はまだランダムであり、確率変数です。
今回の典型例(統計検定2級)
$$
\hat\mu_1=\frac{1}{2}(X_1+X_n),\quad
\hat\mu_2=\frac{1}{n-2}\sum_{i=2}^{n-1}X_i
$$
どちらも:
- 標本 $X_i$ から
- 母平均 μ を推定するための式
👉 推定量である
2. 不偏推定量とは?
定義
$$
\boxed{E[\hat\theta]=\theta}
$$
推定量の期待値が、真の母数に一致する。
直感的な意味
- 同じ推定を何度も繰り返したとき
- 平均すると真値に当たる
👉「平均的にズレていない」
見分け方(試験用)
必ず期待値を計算する
- 期待値の線形性を使う
- μ がそのまま出てくれば OK
例(不偏になる理由)
$$
\hat\mu_2=\frac{1}{n-2}\sum_{i=2}^{n-1}X_i
$$
$$
E[\hat\mu_2]
=\frac{1}{n-2}\sum_{i=2}^{n-1}E[X_i]
=\frac{1}{n-2}(n-2)\mu
=\mu
$$
👉 不偏推定量
3. 一致推定量とは?
定義
$$
\hat\theta_n \xrightarrow{P} \theta
$$
標本サイズ (n) を増やすと、推定量が真の母数に近づく。
直感的な意味
- データが増えるほど
- 推定のブレが小さくなる
👉「たくさん集めれば正しくなる」
見分け方(2級レベル)
分散を見る
- $\mathrm{Var}(\hat\theta_n)\to 0$ なら一致
- 分散に (n) が含まれていない → 一致しない
例(一致になる理由)
$$
\mathrm{Var}(\hat\mu_2)=\frac{\sigma^2}{n-2}\xrightarrow[n\to\infty]{}0
$$
👉 一致推定量
一致しない例(重要)
$$
\hat\mu_1=\frac{1}{2}(X_1+X_n)
$$
- 使うデータは常に 2 個
- (n) を増やしても精度は向上しない
$$
\mathrm{Var}(\hat\mu_1)=\frac{\sigma^2}{2}
$$
👉 一致しない