Dify v1.9.0:ナレッジ × ワークフロー強化まとめ
~RAGの品質が一気に上がった v1.9.0 の新機能を整理する~
Dify v1.9.0 では、ナレッジ(Knowledge) および ワークフロー(Workflow) 周りに大きなアップデートが入っています。
特に ナレッジ処理の効率化、ワークフローの実用性向上 が進み、RAG アプリを作るうえで非常に扱いやすくなりました。
この記事では、Dify v1.9.0 のナレッジ機能・ワークフロー機能の要点を分かりやすく整理します。
1. ナレッジ(Knowledge)のアップデート
1-1. ナレッジインデックスの改善
v1.9.0 では、以下の改善が入っています。
- インデックス生成の速度向上
- 大規模 PDF/HTML の取り込み安定性向上
- メタデータの保持精度改善
- セクション分割(Chunking)の品質向上
これにより RAG 精度がより安定し、
「PDFで一部の章が検索に出ない」などの問題が大幅に改善されています。
1-2. ナレッジの「スニペット検索」機能強化
検索結果の返却方式が改善され、
質問の意図に近いセクションを優先して返すようになりました。
特に以下の強化が大きいポイントです。
- コンテキストの「近接性」評価が改善
- 質問のパラフレーズ耐性が向上
- 特定文書への偏りが減少
→ ナレッジの「検索ヒット率」と「回答の自然さ」がどちらも向上。
1-3. ドキュメントの高度パース
v1.9.0 ではドキュメントパーサが改善され、
階層構造(h1/h2/h3)や表・リストの形状が正しく取り込まれやすくなりました。
- PDF の目次 → セクション分割へ反映
- 表のセル内容が欠落しにくい
- HTML の class/DOM の扱いが改善
2. ワークフロー(Workflow)強化ポイント
2-1. ワークフローの安定性向上
v1.9.0 では、ワークフローの大幅な内部改善が行われており、
- ノード間データ受け渡しの信頼性向上
- 大きな JSON や長テキスト処理が安定
- 途中停止(エラー)時のログ可視化改善
→ 大規模チャットフローの制作がしやすくなった。
2-2. 新ノード・改善ノード
● ナレッジ検索ノード(Query Knowledge)
ナレッジ検索ノードが強化され、
- 複数ナレッジの横断検索が簡単に
- 返却形式(top-k, JSON形式)の改善
- 取得メタデータ(doc_id, chunk_index)拡充
RAG ワークフローが作りやすくなる重要なアップデート。
● 条件分岐(IF)ノードの精度向上
LLM ベースの条件判定の挙動が安定し、
「ナレッジ検索がヒットしなかったときのフォールバック処理」などが作りやすくなった。
● ループ(Iteration)ノードの改善
- 配列データを複数回処理できる
- ナレッジ検索結果の“複数ヒット”を順番に処理
- 集約ノードとの組み合わせで Q&A の並列生成も可能
2-3. 外部API呼び出しの改善(HTTPノード)
v1.9.0 では外部 API 呼び出し時の JSON パーシングが改善され、
- エラー内容が分かりやすく
- header/body の書き方サンプルが追加
- API 連携の失敗率が低下
API連携 × ナレッジを組み合わせた複合ワークフローが作りやすい。
3. RAG ワークフロー構築のベストプラクティス(v1.9.0対応)
v1.9.0 の改善を活かした構成は以下の形がベスト。
典型構成(RAG 推奨)
User Query
↓
① 質問の正規化(LLMノード)
┗ 例:短すぎる質問 → 補完して検索用に整形
② ナレッジ検索(Knowledge Query)
┗ 複数ナレッジを横断検索
③ ヒット率のチェック(IFノード)
┣ ヒットした → ④へ
┗ ヒットしない → ⑤へ
④ 回答生成(LLM)
┗ 検索結果を踏まえて回答生成(RAG)
⑤ フォールバック(LLM)
┗ 一般的な回答 or 再質問プロンプトを返す
v1.9.0 では、①の「質問整形」が特に効果的になっている。
チャンクサイズの推奨値(v1.9.0)
- PDF:500~900 字
- HTML/説明文:800~1200 字
- マニュアル類:600~1000 字
※セクション見出しが綺麗に取れるようになったため、
以前よりチャンクを大きめにしても性能が出やすい。
4. Dify v1.9.0 で実現しやすくなったユースケース
- 高精度 RAG(マニュアル検索 / FAQ生成)
- ナレッジ × 外部APIのハイブリッドアプリ
- 文章を加工してから検索する“前処理パイプライン”
- 製造業マニュアルの自動Q&Aシステム
- 複数ナレッジを統合したアシスタント構築
5. まとめ:v1.9.0 は「ナレッジ強化版」
Dify v1.9.0 は RAG品質向上とワークフローの信頼性向上がセットで実現したバージョン です。
| カテゴリ | 改善内容 |
|---|---|
| ナレッジ | 検索精度/インデックス/パース品質が大幅改善 |
| ワークフロー | 安定性・データ受け渡し・ノード動作が改善 |
| RAG制作 | 前処理+検索+後処理フローが組みやすい |
「ナレッジを使うアプリを作りたい人」にとって最も実用的なバージョンともいえます。
以上