はじめに
AIと雑談や仕事の話をしていると、際限なく話が続くことがあります。
楽しい。かなり楽しい。
ただ、気づくと妙に疲れている。
仕事の相談をしていたはずなのに、関連論点が増え、記事ネタが増え、設計案が増え、気づけば脳内のタブが大量に開いている。
これはAIが悪いという話ではありません。
むしろ、AIがこちらの話を拾い続けるから起きる現象です。
今回は、その構造を軽い小噺として整理します。
1. AIにはツッコミ役がいない
人間同士の会話には、自然なブレーキがあります。
たとえば雑談で話が広がりすぎたとき、誰かがこう言います。
いや、一旦戻ろう。
あるいは、
それはまた別の話ですね。
あるいは、単に沈黙が入ります。
この「ツッコミ」が、会話を終わらせたり、主題に戻したりします。
ところがAIは、基本的にこちらの話を拾います。
こちらが「そういえば」と言えば、その「そういえば」に付き合ってくれる。
こちらが「逆に」と言えば、その「逆に」も展開してくれる。
こちらが「記事にできそう」と言えば、記事構成まで出してくれる。
漫才で言えば、ボケに対してツッコまず、すべてのボケを別の展開へ広げていく相方です。
それはそれで非常に優秀です。
ただし、人間側の認知負荷は増えます。
AIは会話を止めるのが苦手というより、こちらが止める指示を出さない限り、会話を続ける方向に最適化されやすいのだと思います。
2. 質問が続くと、AIは寄り添い続ける
AIから見ると、質問が続くということは「まだ解決したいことがある」と解釈されやすいようです。
これは仕事の相談では便利です。
要件を聞かれ、制約を整理され、選択肢を出され、メリットとリスクを比較してくれる。人間の相談相手としては、かなり優秀です。
一方で、雑談と仕事の境界が曖昧になると、少し危険です。
軽い感想を投げたつもりが、次の論点に展開される。
思いつきを話しただけなのに、記事構成になる。
違和感を言語化しただけなのに、設計思想になる。
もちろん、それが助かる場面も多いです。
ただ、AIは「これはただの雑談です」「今日はここまでで十分です」という文脈を、人間ほど自然には読みません。
質問が続く限り、AIは寄り添い続けます。
その結果、人間側は「まだ考えるべきことがある」と錯覚しやすい。
本当は一度寝かせればよい話でも、会話が続くことで処理すべきタスクのように見えてくる。
このあたりが、AIとの会話が楽しいのに疲れる理由の一つだと思います。
3. 科学力はタダ、時間は人間が払う
世の中の問題は、お金と時間と科学力を採算度外視で注ぎ込めば、多くは解けてしまうという考え方があります。
AIとの会話では、このうち「科学力」のコストが極端に下がります。
記事案を出す。
反論を出す。
構成を出す。
別案を出す。
要約する。
表にする。
コードにする。
AIにとっては、これらの限界コストがかなり低い。
一方で、人間側の時間は減りません。
読む時間。
判断する時間。
採用するか捨てるか決める時間。
実際に手を動かす時間。
疲れた脳を休ませる時間。
AIは大量の可能性を出せますが、その可能性を受け取る人間の帯域は有限です。
だから、AIとの会話では「生成する側のコスト」と「受け取る側のコスト」が非対称になります。
AIはもう一段深掘りできる。
でも、人間はもう一段読む必要がある。
この非対称性を意識しないと、気づかないうちに人間側だけが疲れていきます。
では、どうするか
対策は、AIにツッコミ役を外付けすることだと思います。
たとえば、次のような簡単なルールです。
- 今日のゴールを最初に1行で書く
- 雑談用チャットと仕事用チャットを分ける
- 30~45分で一度止める
- 1回の会話で主論点を増やしすぎない
- 「今日はここまで」と明示する
私が使っているMAARのような仕組みも、単なるレビュー手法ではなく、会話を閉じるためのプロトコルとして機能します。
TTLを決める。
主論点を1つにする。
人間が採否を決める。
AI同士に批評させるが、最後は人間が止める。
こうしたルールは、AIの能力を制限するためではありません。
人間の認知負荷を守るためのものです。
おわりに
AIとの会話は、楽しいです。
仕事の相談にもなるし、記事ネタにもなるし、自分の考えを言語化する相手にもなります。
ただ、AIは基本的に付き合いがよすぎる。
だからこそ、人間側に「ツッコミ役」が必要になります。
終わらない会話を悪者にする必要はありません。
ただ、終わらせる仕組みは用意しておいた方がいい。
AI時代の会話術は、うまく話すことだけでなく、うまく切り上げることも含むのだと思います。