✅ この記事でわかること
• 「同等性検定」とは?
• 同等性検定は製造業でなぜ頻繁に使われるの?
• 実践!サンプルデータで同等性検定にチャレンジ
🧠 同等性検定とは?
同等性検定とは、2つのグループ間の差がほとんどない(≒ 同等)ことを示すために使われる検定手法です。
たとえば、製造現場でこんなシーンはありませんか?
「原材料AをBに変えたけれど、製品の厚みが変わらないか確認したい…」
「製造条件の温度を100℃から110℃に変更しても、製品の品質は同じといえるだろうか…」
現場の技術者の方々は、日々の業務でこういった「条件の変更前後で品質がほとんど変わらない(≒ 同等)」ことの確認を頻繁に求められているのではないでしょうか。
こんなとき、同等かどうかの判断はどうしていますか?
技術者それぞれの感覚や勘、過去の経験に頼ってしまい、データに基づく客観的な判断ができていなければ、残念ながらチーム内で意味のある議論は生まれないでしょうし、結果、現場の技術力・分析力が低下してしまいます。
そうならないように同等性検定を学んで、客観的で統計的な根拠に基づいた判断や議論を社内で進めましょう。それがこの記事の目的です。
🏭 同等性検定は製造業、製薬業でなぜ頻繁に使われるの?
製造業や製薬業の生産現場では、さまざまな事情から生産条件の変更が行われることが頻繁にあります。
たとえば、
• 原材料や装置の変更
• 作業者や工程の変更
• ある国・地域から別の国・地域への生産サイトの変更
などです。
これらの変更によっても、製品の品質や性能がほぼ同じと示せるのは、安定した生産能力の維持の観点から重要です。
📊 実践!サンプルデータで同等性検定にチャレンジ
それでは実際に同等性検定にチャレンジしてみましょう。同等性検定を実施できる統計ツールは各種ありますが、今回は統計ソフト「JMP(ジャンプ)」で行います。
JMPは30年以上の歴史を持つ操作性と可視化に優れた統計ソフトです。未体験の方は、30日間全機能を無料で試せるトライアル版があるので試してみてください(自動課金はされません)。
https://www.jmp.com/ja_jp/download-jmp-free-trial.html?utm_campaign=bl&utm_source=blog&utm_medium=JMPblog
【例題】
ある製造会社では、製品に使用していた材料Aを来月から材料Bに変更する予定です。変更によって製品の品質に差が生じては困るため、材料A(厚みの平均は5.00μm)と材料Bの厚みが同等であることを示したいと考えています。
材料 | 厚み(μm) |
---|---|
B | 5.07 |
B | 4.98 |
B | 5.15 |
B | 5.15 |
B | 4.90 |
B | 4.90 |
B | 4.85 |
B | 5.06 |
B | 5.02 |
B | 5.06 |
B | 4.94 |
B | 4.84 |
B | 4.94 |
B | 4.82 |
B | 5.05 |
B | 5.09 |
B | 4.88 |
B | 4.93 |
B | 5.04 |
B | 4.96 |
ちなみに、同等性検定を実施する際には、あらかじめ同等性マージン(ここまでの差であれば同等とみなすことができるという許容域)を決める必要があります。今回はこの値を±0.1 μmで設定します。
📈同等性検定をJMPで実践
✅ Step1:データをインポート
• JMPを起動し、上記データを開きます(「ファイル」→「開く」)。
✅ Step2:「一変量の分布」でデータを可視化
すると、データのシート(JMPではこれを「データテーブル」と呼んでいます)の他に、平均や標準偏差等の要約統計量や、ヒストグラムと箱ひげ図といったグラフを1つのウィンドウにまとめた分析レポートを確認できるようになりました。
JMPはグラフとデータテーブルが連動しているので、グラフの気になる箇所をクリックすれば該当するデータがハイライトされます。こうして本格的な分析に入る前にデータのあらましを確認できるのが便利です。
ところで、このレポートでは材料Bの平均は4.9815μmと表示されています。

材料Aの平均値5.00μmよりも0.0185μmほど値が小さいのですが、材料Aと材料Bに同等性を認めることができるか次に確認してみましょう。
✅ Step3:同等性検定
- レポートの「厚み(μm)」横の▼ボタン→「同等性の検定」
- 「目標値」に「5.0」(材料Aの厚みの平均)、「実質的に0とみなす差」に「0.1」(今回設定した同等性マージン)と入力して「OK」をクリック
先ほどのレポートの右に同等性の検定のレポートが追加されました。
📌 「同定性の検定」レポートの解釈
この新たに表示されたグラフでは、薄青色部分の「同等とみなす範囲」(同等性マージンで設定した範囲)に平均の90%信頼区間が含まれています。
それを踏まえて、レポートの末尾には「平均は5と同等である。」と表示されており、このことから材料Aと材料Bの間には同等性が認められることが分かりました。
このように統計ツールを使えば、同定性検定は初心者でも簡単です。
製造業で使われる機会があるだけに、この記事を手始めにスキルアップを目指してください!
🧩 より詳しく知りたい方への参考記事
• 製造業における「同等性検定」の活用 Part1. 平均の同等性検定 - JMP User Community
• 製造業における「同等性検定」の活用 Part2. 割合の同等性検定 - JMP User Community