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ラグビーワールドカップ 2019:選手の体格はパフォーマンスに影響を与えたのか? 【後編】

Last updated at Posted at 2019-11-11

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その2:身長、体重とセットプレイ(スクラム、ラインアウト)成功率の関係
ポイント:この記事では、ある対象に絞ってデータ分析することにより興味深い結果が得られた例を示します。

前回の記事では、今回日本で開催されたラグビーワールドカップでトップ8に残った国(チーム)の選手に対し、身長と体重の関係をフォワード(FW)、バックス(BK)別に比較してみました。

今回の記事では、選手の身長や体重と、ゲームでのスクラムやラインアウトといったセットプレイとの間に関連があったかどうかを考察してみます。

日本が南アフリカに敗れた一因に、日本ボールのラインアウトで、南アフリカに多くのインターセプト(奪取)を与えてしまったことが挙げられると思います。この試合の南アメリカのラインアウト成功率は100%に対し、日本のラインアウト成功率は61.5%であり、南アフリカに4回もインターセプトされています。ラインアウトは身長が高い選手がいるチームが有利だといわれていますが、今回の大会ではどうだったのでしょうか?

スクラムについてはもちろんパワーや戦術が重要ですが、スクラムを組む選手の体重が重いほど有利に働くかもしれません。

【ラインアウト】
lineout_RWC.jpg
【スクラム】
scrum_RWC.jpg

そこで、今回のワールドカップでトップ8に残ったチームを対象に、身長とラインアウトの成功率との関係、体重とスクラム成功率との関係を調べてみました。

◇FWをさらにポジションに分けてみる
FW、BKにはそれぞれポジションがあります。下図はポジションごとに分けて、身長と体重の関係を示したものです。 プロット点が * になっているのはFWの選手を示します。
pic1.png

身長と体重の相関が高いポジション、そんなに高くないポジションとさまざまですが、ポジションごとにある程度まとまって分布していることが分かります。

以降は、ラインアウトやスクラムに大きく関係するFWに焦点を当てて考えていきます。
スクラムはFWの選手が組むことになりますが、FWの8名で次の3列構成になります。

第1列:プロップ(PROP)2名とフッカー(FOOKER)
第2列:ロック(LOCK) 2名
第3列:バックロー(BACK ROW) 3名 (フランカー2名とナンバーエイト1名で構成される)

ポジションの参考:
https://ja.wikipedia.org/wiki/ラグビーのポジション

ラインアウトにおいて、ボールを取るのは主にロックの役割になります。

再度、上に示したポジション別の身長、体重のグラフをみると、スクラムの柱とも言われるプロップ(グラフ:青色)は、体重が重い位置に分布しており、ロック(グラフ:緑色)は、身長の高い位置に分布していることが分かります。

◇チーム別のスクラム成功率、ラインアウト成功率
スクラム成功率とはマイボールのスクラムでボールを獲得できた割合、ラインアウト成功率とはマイボールのラインアウトでボールを確保できた割合です。下図では、各チームの全試合を通じたそれぞれの成功率を示しています。
pic2.png

優勝した南アフリカは、スクラム(青色の棒)、ラインアウト(赤色の棒)とも高い割合を示しています。今回は残念ながら3位に終わったニュージーランドはスクラム成功率が脅威の100%です。日本のスクラム成功率(93%)はオーストラリア、フランスを上回っていますが、ラインアウト成功率(85%)は、トップ8の中で最下位です。

◇身長とラインアウト成功率との関係
各チームのFWの身長の平均値を横軸に、ラインアウト成功率を縦軸にした散布図を描いてみます。
pic3.png
日本と南アフリカでは対照的な場所に位置しています。準優勝したイングランドは、他のチームに比べ、身長もラインアウト成功率も低いポジションに位置しているのが不思議です。相関係数は0.431なので、まあまあ正の相関があるかなあといった程度でしょうか。

先ほど述べたように、ラインアウトでは主にロックがボールを取る役割を担っています。そこで、FW全員の身長ではなく、ロックの選手だけの身長の平均をとって同様の散布図を描いたものを示します。
pic4.png
チームの位置関係は先ほどのFW全体の図とほとんど変わらないですが、相関係数が0.544と高くなっていることが分かります。ロックとラインアウト成功率は関連性があると言えそうです。

◇体重とスクラム成功率との関係
今度は各チームのFWの体重の平均値を横軸に、スクラム成功率を縦軸にした散布図を描いてみます。
pic5.png
日本は体重が他のチームと比べ大きく差がついているにも関わらず、スクラム成功率が高いので健闘したといっても良いでしょう。このこともあってか、体重とスクラム成功率の相関係数は0.159とそんなに高くないです。

ただ、ポジション別に分けて散布図を描いてみると面白いことが分かりました。
以下の図は、第一列のプロップの選手だけの体重の平均をとり、同様の散布図を描いたものです。
pic6.png
なんと、相関係数が0.616と先ほどに比べ、非常に高くなっています。スクラムの柱となるプロットの体重が重いほど、スクラムの成功率は高くなっていることが言えます。

実は、同じ第1列であるフッカーも含め、第1列の選手の平均とスクラム成功率の相関係数は0.369でした。また、第3列名であるバックローの選手の体重の平均とスクラム成功率の相関係数は-0.433と負の相関がありありました。なんとも興味深いです。

◇まとめ
上記の結果は、選手の体格とセットプレイのパフォーマンスの関連性を示しているにすぎません。さらに、今回の話をもっと厳密に考えると、対戦したチーム間での身長差、体重差とその対戦での成功率との関係を調べるべきですし、登録選手全員の身長や体重の平均をとるのではなく、そのプレイに参加した選手だけの平均をとるべきかもしれません。

ただ、今回の分析結果から、チームに身長が高いロックがいた方がラインアウトは成功しやすいのではないか、プロップの体重が重い方がスクラムは成功しやすいのではないかといったことを考えることはできそうです。

◇今回の分析結果をインタラクティブに楽しみましょう
身長とラインアウト成功率の関係、体重とスクラム成功率の関係についての結果は、以下のページから確認できます。ここでは、列スイッチャーという機能を使い、本記事に掲載されていないポジションに対しても結果を確認することができます。
Rugby WC 2019: Did Players' Height and Weight Affect Performance?


以下は、ワールドカップの対戦結果(予選リーグ)をさまざまな角度で可視化したページです。こちらではフィルタ機能を使い、様々な角度で結果を考察できます。
Rugby World Cup 2019: Visualizations

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