📌 はじめに:せっかくのアンケート、集めただけで終わっていませんか?
多くの企業がアンケート調査を行っています。製品やサービスに対する満足度を把握して業務改善に活かしたり、お客様の生の声を拾い上げたりする重要な機会になるからです。
しかし、アンケートを十分に活用できている企業は多くありません。せっかくデータを集計しても、「全体的な満足度」だけを確認して終わってしまうケースが目立ちます。
これではせっかくの情報がもったいないですし、「顧客満足度に最も影響している要因は何か?」という重要な疑問も未解決のままです。
このような疑問に答えるには、「何に満足しているのか」を探るための分析が必要です。
そこで効果的なのが、重回帰分析です。
重回帰分析とは?
✔ 定義
重回帰分析とは、1つの目的変数(例:満足度)を、複数の説明変数(例:価格・機能・デザインなど)によって予測・説明する統計的手法です。
たとえば、ある製品の「総合満足度(1〜10点)」が、「価格」「デザイン」「サポート対応」などの評価からどのように決まっているのかを数値的にモデル化できます。
なぜアンケート分析に重回帰分析が必要なのか?
アンケートでは、以下のように多くの項目を一緒に聞くケースが多いです。
設問 | 回答形式 |
---|---|
この製品のデザインに満足していますか? | 1〜10点 |
機能に満足していますか? | 1〜10点 |
価格には満足していますか? | 1〜10点 |
サポート対応はいかがでしたか? | 1〜10点 |
総合的な満足度は? | 1〜10点 |
「総合的な満足度」に最も影響を与えているものを知りたいときに、「デザイン」と「価格」の両方が高評価だったとしても、実際に満足度に貢献しているのは「価格」だけかもしれません。
単純な集計だけでは、どの項目が満足度に「効いている」かまではわかりませんが、重回帰分析を使えば、製品戦略やプロモーションの方針に具体的なヒントが得られます。
✅ 重回帰分析のメリット
- 各項目の「影響度」を客観的・定量的に測定できる
- 未来の予測ができる
- 複数の変数を扱うことができるので、現実の課題に近い実用的な分析・予測に活かせる
つまり、「満足度の構造」を解き明かすツールとして非常に有効なのです。
📊 Excelなどのスプレッドシートで重回帰分析を行う場合
ところで、実際に業務で重回帰分析を実施するときは、分析ツールを使うことになります。
Google スプレッドシートや Microsoft Excel などでも重回帰分析は可能ですが、データ分析初心者にとっては以下の点でハードルが高く感じられるかもしれません。
- アドインを入手しなければならない
- 出力結果が表中心で、統計知識がないと理解しにくい
- グラフなどの視覚的なフィードバックが少なく、直感的な気づきが得られにくい
このように、スプレッドシートでの回帰分析は、「できるけれどわかりにくい」ことが多く、初心者にとってはハードルが高いのが現実です。
JMPでの分析:直感的でわかりやすい分析体験
一方、統計ソフト「JMP(ジャンプ)」を使うと、以下のようなメリットがあります:
- アドイン不要、マウス操作中心で分析可能
- 結果がグラフと数値で可視化される
- グラフとデータが連動しているので、気づいたグラフの特異点をすぐにデータで確認できる
重回帰分析でのスプレッドシートとJMPの比較
項目 | スプレッドシート | JMP |
---|---|---|
操作の簡単さ | アドインが必要 | マウス操作で直感的に使える |
分析の可視化 | 数値と表中心 | グラフと分析結果が1つのウィンドウに表示 |
結果の解釈 | 統計知識が必要 | オンラインヘルプで初心者も分析しやすい |
JMPでの重回帰分析の流れ
それでは、JMPで重回帰分析を実施してみましょう。
JMPは30年以上の歴史を持つ操作性と可視化に優れた統計ソフトです。未体験の方は、30日間全機能を無料で試せるトライアル版があるので試してみてください(自動課金はされません)。
https://www.jmp.com/ja_jp/download-jmp-free-trial.html?utm_campaign=bl&utm_source=blog&utm_medium=JMPblog
- 最初にデータをJMPに読み込みます。JMPは下のようにさまざまな形式のファイルを読み込むことが可能です。今回はExcelファイルを用いて分析を実施します。

2.「ファイル」>「開く」からExcelファイルを開くと、「Excel読み込みウィザード」が立ち上がります。データのプレビューができ、列見出しやデータの開始行などのカスタマイズをここで行えるので、普段Excelを使い慣れている方にも便利です。
3.スクリーン上部の「分析」>「モデルのあてはめ」と進み、「Y」に「総合満足度」を、下の「モデル効果の構成」の欄に「デザイン」「機能」「価格」「サポート」を入れ、「実行」をクリックします。
4.重回帰分析の結果が表示されました。JMPでは分析結果として各種スプレッドシートによる分析のように「数値と表」だけ表示するのではなく、まず「グラフ」が印象的で分析者の目を引きます。パッと見て直感的に結果を理解しやすいわけです。
また、グラフとデータテーブルが連動しているので、グラフ上の特異点に気づいたらすぐにデータの詳細を確認でき、データの探索に優れています。
5.では、グラフを見てみましょう。「予測値と実測値のプロット」から、モデルのあてはまりの良さを確認できます。
グラフの赤色の実線は、実測値と予測値が一致する領域です。この付近に点がプロットされているかどうかや、95%信頼区間の赤色の領域内に多くの点がプロットされているかを確認してみましょう。
今回のデータでは、95%信頼区間の領域内にそれなりに多くのデータ点が存在していて、悪くはないあてはまりのようです。
6.次に「あてはめの要約」を見ます。ここでは、「R2乗」、「自由度調整R2乗」、「誤差の標準偏差」、「Yの平均」などの統計量が表示されています。
ここで、注目したいのは、「決定係数(R2乗)」です。これは、目的変数の変動を分析に用いた説明変数でどれぐらいの割合で説明できているかを示す値で、今回はR2乗の値が約0.75と高いので十分に説明されていると言ってよいでしょう。
7.さらに、レポートの「パラメータ推定値」と「効果の検定」を見てみましょう。各説明変数のp値が 0.05よりも小さければ、統計的に有意であり、目的変数に影響を与えているといえます。

今回は、p値が0.05以下の「デザイン」が有意であり、これが総合満足度に影響を及ぼしていることが判明しました。
もちろん、p値などを表で出力するだけであればスプレッドシートでも可能です。ですが、JMPならば見やすいグラフによって、より深い分析へと進めることができます。この機能は「予測プロファイル」と呼ばれています。
「予測プロファイル」は、以下のように簡単に起動できます。

「予測プロファイル」の箇所を拡大してみましょう。
すると、「デザイン」だけプロファイルの傾きが急なのが、ひと目でわかりますね。
デザインが、総合満足度に大きく影響を及ぼしていることが、グラフの傾きから視覚的に見て取れるのです。
しかも「予測プロファイル」では、ある説明変数(「デザイン」「機能」など)の水準値を変化させたときに、目的変数(「総合満足度」)の値がどのように変化するのかをインタラクティブに表示できます。
試しに、「デザイン」の値だけ現状の「7」から「8」に変えてみましょう。すると、総合満足度の値が「8」から「9.018929」に上昇すると予測されました。
目的変数(総合満足度)に一番大きな影響を与える説明変数が「デザイン」だと明らかになるだけではなく、デザインの評価を「1」上げる施策によってどのような結果が得られるかを予測することもできました。
JMPの「予測プロファイル」はパワフルです。データ分析初心者の方でも、アンケート分析をストレスなく簡単に実施でき、統計ツールの操作に手間取らずに余った時間で、一番大切な分析結果の検討と試行錯誤に注力できます。
📈 分析の結果をどう活かすか?
このように重回帰分析を使えば、「どの項目が満足度に影響しているか」を客観的に明らかにできます。これにより、根拠に基づいた効果的な施策を立案できるようになるわけです。
今回の例では:
• 「デザイン」が総合満足度に強い影響を与える。
↓
• 次の製品開発の方針が以下のように決まる。
サポート体制の拡充、新機能の追加、競争力のある価格の実現にリソースを割く
デザインをさらに洗練させるために、優れたデザイナーを雇う。
このように、限られたリソースで最大の効果を得るための「意思決定材料」として重回帰分析が活用できます。
✅ まとめ:アンケートは「集計」から「分析」へ
スプレッドシートで集計するだけでは簡単には見えてこない「満足の理由」も、JMPのようなソフトを使えば、初心者でも簡単に分析・可視化ができ、改善施策へとつなげやすくなります。
「データ分析は難しい」と感じていた方も、ぜひ一歩踏み出して、統計の力を業務に活かしてみてください。
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