今年(2020年)はコロナウィルスの影響で、軒並みスポーツの試合が中止、または延期されましたが、その中で、5月に一足早く開幕したドイツのサッカーリーグでは、ホームチームの勝率が異常に低くなっていることがニュース等で話題になりました。
本来、サッカーであれば熱狂的なホームチームのサポーターが勝利を後押しするという構図が思い浮かびますが、この時は無観客試合になっているためホームチームの勝率が低くなっているのではないかと言われていました。
多くのチームスポーツで、ホームチームにアドバンテージがあることが言われていますが、単にサポーターの応援だけがアドバンテージの要因となっているわけではないと思います。地元で戦えるのでアウェイチームに比べて移動の負担が少ないことや、ホームチームに有利と考えられる試合のルールなど応援だけでないさまざまな要因が絡んでくるはずです。
###●プロ野球におけるホームチームの「勝率」と「応援の効果」について
筆者はサッカーには詳しくないので、日本のプロ野球で考えてみます。
下図は、2015年~2019年のプロ野球公式戦におけるホームチームの勝率を折れ線グラフにしたものです。
2018年はギリギリですが、すべての年で50%を上回っています。2015年から2019年までの5年間でみると、ホームチームの勝率は54.5%です。やはり昨今のプロ野球でも、ホームチームの勝率が高くなっており、ホームチームのアドバンテージがあるように思えます。
基本的にホームゲームであれば、ホームチームの応援している観客が多いので、ホームチームはアウェイチームよりも応援が盛大であるとします(そうでないケースもありそうですが..)。
ただ、ホームチームの勝率が高いという結果だけから、”ホームチームは、盛大な応援があるから有利である”という因果関係を認めるのは早計でしょう。
これを正しいとするには、応援以外のアドバンテージになり得る要素をすべて除いた条件下で、ホームチームの勝率を考えないといけないはずです。
野球であれば、ホームチームは裏の攻撃になるため戦略を立てやすい、ホーム球場の特性を良く知っている、先ほど述べた移動の負担が少ないことなどが有利に働いているように思えます。
現実問題としてすべての条件を除くのは難しいですが、今年の無観客、または少ない観客で応援が制限される特殊な状況での勝率と、今までの状況での勝率を比較することにより、完全ではないにしろ応援の効果がわかるかもしれません。
###●今年の特殊な試合状況を利用して応援の効果を調べる
応援の効果をみるには、応援以外の状況をすべて同じにした状態で、
①(応援があるときのホームチームの勝率) - ②(応援がない(またはあまり応援がない)ときのホームチームの勝率)
を計算し、0より大きくなっていることを統計的に示すのが理想です。
①は2019年以前のホームチームの勝率、②は2020年のホームチームの勝率を計算することになりますが、応援以外の要素をできるだけ同一にするために、①に対し2020年の試合状況に合わせ、勝率を求める試合の対象を以下のようにします。
①の分析対象条件
・ホームチームの本拠地、または準本拠地を対象とする (地方球場などは対象としない)
・同一リーグ内の対戦を対象とする(交流戦は対象としない)
また①については、②の2020年に対しあまり時間が離れていない2019年のみでみていくことにします。あまり時間が離れてしまうと、球場の改修やルールの細かい変更など応援以外の要素が絡んでくる可能性があるので、このような比較をする際は、できるだけ近い時期について比較するのが望ましいからです。
2020年のペナントレースでは、延長が10回までに制限されていることや、ベンチ入りの選手が拡大されたといった特例がありますが、これらが若干でもホームチームに有利に働くかもしれません。ただし、ここではこれらの特例が無視できるとして考えます。
上記の状況で、2019年のホームチームの勝率、2020年の8月30日までの勝率を棒グラフとして示しています。
棒グラフをみると、2019年と2020年でほとんど勝率は変わりません。2019年の方が2020年に比べ0.2%ほど勝率が高い程度です。これですとなかなか、応援の効果があるとは言えそうにありません。
しかし、2020年のペナントレースは、11月まで開催されます。ペナントレースが終了した時点で2020年のホームチームの勝率がどうなったのか?また、そのときに報告する予定です。
###●チームごとに見てみると
今回の主題に対して少し脇道にそれますが、チームごとの勝率の比較もしてみます。チームの場合は、ホームは有利に働き、ロード(アウェイ)は不利に働くと考え、(ホームの勝率 - ロードの勝率) を指標として用いてみます。先ほどは2019年と2020年を比較しましたが、チームごとの場合は、年ごとの勝率のばらつきが大きいため、2015年~2019年の(ホームの勝率 - ロードの勝率)と2020年の(ホームの勝率 - ロードの勝率)を比較することにします。ただし、2015年~2019年は、上記の①の分析条件を対象としています。
下図の棒グラフは、チームごとの(ホームの勝率 - ロードの勝率)を横軸にとったものです。青色の棒は2015年~2019年、赤色の棒は2020年(8月30日現在)です。
2015年~2019年と比較すると、今年は阪神の(ホームの勝率 - ロードの勝率)が非常に高くなっているのが驚きです。阪神は、2015年~2019年では意外にもホームである甲子園での勝率は、ロードの球場での勝率に比べて高くなかったのですが、今年は非常に高くなっています。甲子園の熱狂的な応援を味方につけて勝っていくといったイメージがありますが、この結果を見る限りはそうではないのかもしれません。
ただ、チームごとに考えるのであれば2020年の試合数はまだ少ないですし、あと数年は無観客または応援が少ない試合でないとそれなりの結論が出せないと思います(無観客、応援が少ない状況は望んでいませんが..)。
●2020年のホームチームの勝率を公開しています(平日ほぼ毎日更新)。
本記事に関連して、2020年のホームチームの勝率を「JMP Public」という投稿サイトに掲載しております。2020年のシーズン終了までほぼ毎日更新(平日のみ)し、前日までの試合結果を反映させた勝率をアップロードする予定です。ご興味がある方は、時々チェックしてみてください。
JMP Public 2020年プロ野球 ホームチームの勝率
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