はじめに
AWSには200を超えるサービスがあり、「名前は聞いたことあるけど何が違うのか分からない」となりがちです。本記事では、実務とAWS認定試験(SAA / SOA / SAP)の両方で頻出するコアサービスを、ネットワーク・コンピューティング・ストレージ・DB・セキュリティ・運用…とカテゴリ別に整理しました。
各サービスの末尾に「一言で言うと」を付けています。試験前の総ざらいや、アーキテクチャ検討時の早見表として使ってください。
1. 基盤・ネットワーク
リージョンとアベイラビリティゾーン(AZ)
- リージョン:AWSがサービスを提供する地理的な拠点(東京、大阪、バージニア北部など)。
- AZ:リージョン内にある物理的に分離された1つ以上のデータセンター群。
高可用性の基本は「マルチAZ構成」。複数のAZにリソースを分散することで、片方のデータセンターが障害を起こしてもサービスを継続できます。試験でも実務でも最頻出の考え方です。
一言で言うと:リージョン=大きな地域、AZ=その中の独立したデータセンター。
VPC(Virtual Private Cloud)
AWS上に作る仮想プライベートネットワーク。サブネット・ルートテーブル・インターネットゲートウェイ・セキュリティグループなどを組み合わせて構成します。
| 構成要素 | 役割 |
|---|---|
| サブネット | VPCをAZ単位で分割。パブリック/プライベートを分ける |
| インターネットゲートウェイ(IGW) | VPCとインターネットを接続 |
| ルートテーブル | 通信の経路を定義 |
| セキュリティグループ | インスタンス単位のステートフルなFW |
| ネットワークACL | サブネット単位のステートレスなFW |
一言で言うと:AWS上の自分専用ネットワーク区画。
Direct Connect(DX)
オンプレミスとAWSを専用線で接続。インターネットを経由しないため、安定した低遅延・高帯域・セキュアな通信を実現します。
一言で言うと:会社とAWSをつなぐ専用の太い回線。
Route 53
AWSのマネージドDNSサービス。ドメイン名⇔IPアドレスの名前解決に加え、フェイルオーバー・レイテンシーベース・加重・位置情報など多彩なルーティングポリシーを持ちます。
一言で言うと:高機能なDNS+トラフィックの司令塔。
2. ネットワークサービス(接続・配信)
NATゲートウェイ
プライベートサブネット内のインスタンスが「外には出られるが外からは入られない」形でインターネットへアクセスするためのマネージドゲートウェイ。OSアップデートやAPI呼び出しに使います。
Transit Gateway
複数のVPCやオンプレミスを束ねるネットワークのハブ。VPCが増えてもピアリングのフルメッシュ地獄を避けられます。
Site-to-Site VPN
オンプレミスとAWSをインターネット経由のVPNで接続。Direct Connectより安価で手軽ですが、回線品質はインターネット依存です。
Global Accelerator
AWSのグローバルネットワーク(エッジロケーション)を活用し、TCP/UDPトラフィックを最適経路で配信。**固定IP(Anycast IP)**を提供し、世界中からのアクセスを高速・安定化します。
CloudFrontとの違い:CloudFrontは「コンテンツ(HTTP/HTTPS)のキャッシュ配信」、Global Acceleratorは「あらゆるプロトコルの経路最適化+固定IP」。試験で混同しやすいので要注意。
3. コンテンツ配信
CloudFront
グローバルに分散したCDN。エッジロケーションにコンテンツをキャッシュし、低レイテンシで配信します。AWS Shield(DDoS防御)やWAFと統合でき、署名付きURLによるアクセス制御も可能です。
一言で言うと:世界中にコンテンツのコピーを置いて高速配信するキャッシュ網。
4. コンピューティング
EC2(Elastic Compute Cloud)
スケーラブルな仮想サーバー。インスタンスタイプ(汎用/コンピューティング最適化/メモリ最適化/GPUなど)を用途で選び、Auto ScalingやELBと組み合わせて使います。
料金モデル比較:
| 購入方式 | 特徴 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| オンデマンド | 秒/時間単位の従量課金 | 短期・検証 |
| リザーブド(RI)/ Savings Plans | 1〜3年契約で割引 | 安定稼働の本番 |
| スポット | 最大90%引き・中断あり | バッチ・耐障害性のある処理 |
| Dedicated Hosts | 物理サーバー専有 | ライセンス/コンプラ要件 |
Lambda
サーバー管理不要のイベント駆動型サーバーレス。コードをアップロードするだけで実行され、リクエスト数に応じて自動スケール。実行時間とメモリに対してのみ課金されます。
一言で言うと:サーバーを意識せずコードだけ動かす関数実行基盤。
Elastic Beanstalk
コードをアップロードするだけで、EC2・ELB・Auto Scalingなどを自動プロビジョニングしてくれるPaaS。インフラ詳細を気にせずアプリのデプロイに集中できます。
5. ストレージ
S3(Simple Storage Service)
11ナイン(99.999999999%)の耐久性を誇るオブジェクトストレージ。バージョニング・ライフサイクル管理・暗号化・静的サイトホスティングなど機能が豊富です。
主なストレージクラス:
| クラス | 用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| Standard | 頻繁アクセス | 標準 |
| Standard-IA / One Zone-IA | 低頻度アクセス | 安価・取り出し料金あり |
| Glacier / Deep Archive | アーカイブ | 最安・取り出しに時間 |
| Express One Zone | 超低レイテンシ | 単一AZ・1桁ミリ秒 |
【2025年アップデート】 S3 Express One Zone が大幅値下げされました。ストレージ料金31%、PUT 55%、GET 85%引き下げで、ML学習やリアルタイム分析など低レイテンシ用途で使いやすくなっています。さらに2026年には**S3 Files(S3バケットをファイルシステムとしてマウント)**もGAになり、EFSとの選択肢が広がりました。
EBS(Elastic Block Store)
EC2にアタッチするブロックストレージ。SSD系(gp3/io2)とHDD系(st1/sc1)があり、用途で選択。スナップショットでバックアップを取得できます。
EFS(Elastic File System)
フルマネージドのNFS。複数のEC2から同時マウント可能で、容量は自動で伸縮します。共有ファイルストレージに最適。
[!TIP]
EBS / EFS / S3 の使い分け
- EBS:1台のEC2に紐づくディスク(OS・DB領域)
- EFS:複数EC2で共有するファイル領域
- S3:オブジェクト単位の保管(バックアップ・静的ファイル・データレイク)
Storage Gateway
オンプレミスとクラウドをつなぐハイブリッドストレージ。バックアップ・アーカイブ・災害復旧用途で、ローカルキャッシュにより低遅延アクセスを実現します。
DataSync / S3 Transfer Acceleration
- DataSync:オンプレ⇔クラウド間の大規模データ移行を自動化・高速化。
- S3 Transfer Acceleration:エッジロケーション経由で長距離のS3アップロードを高速化。
6. データベース
RDS(Relational Database Service)
フルマネージドのRDB。MySQL / PostgreSQL / MariaDB / Oracle / SQL Server をサポートし、自動バックアップ・パッチ適用・マルチAZによる自動フェイルオーバーを提供します。
Aurora
MySQL / PostgreSQL互換の高性能RDBエンジン。ストレージは3AZに6重複製され、高可用性と自動フェイルオーバーを備えます。
【2025〜2026年アップデート】
- Aurora Serverless v2 が「最小0 ACU」に対応し、未使用時は自動的にゼロまでスケールダウンできるようになりました(アイドル時はコストゼロ)。バースト型のAIエージェント用途などに最適。
- 2026年4月に Aurora Serverless v2 は「Aurora serverless」へ名称変更(移行作業は不要)。最新版でパフォーマンスが最大30%向上。
- 超大規模向けに Aurora Limitless Database(自動シャーディング) や Aurora DSQL(分散SQL・クエリ従量型) といった次世代オプションも登場しています。
ElastiCache
インメモリDBサービス。Redis(Valkey) と Memcached をサポートし、DBの負荷軽減・セッションストア・キャッシュに利用します。
| エンジン | 特徴 |
|---|---|
| Memcached | シンプル・マルチスレッドで高速。純粋なキャッシュ向き |
| Redis / Valkey | 永続化・レプリケーション・Pub/Subなど高機能 |
RDS Proxy
DB接続をプールしてmax_connectionsの枯渇を防ぐマネージドプロキシ。Lambdaなど大量の同時接続が発生するサーバーレス構成で特に有効です。
Redshift
ペタバイト級のデータウェアハウス。列指向ストレージとMPP(超並列処理)で、BI・大規模分析クエリを高速処理します。
7. セキュリティ・アイデンティティ
IAM(Identity and Access Management)
ユーザー・グループ・ロール・ポリシーで「誰が・何に・何をできるか」を制御。AWSセキュリティの根幹です。
原則は最小権限(Least Privilege)。ルートアカウントは日常利用せず、MFAを必ず有効化しましょう。
IAM Access Analyzer
IAMポリシーを分析し、外部公開や意図しないアクセス権を検出。修正提案も行い、権限の棚卸しを支援します。
KMS(Key Management Service)
暗号化キーの作成・管理サービス。エンベロープ暗号化により、S3・EBS・RDSなど多くのサービスとシームレスに統合できます。
GuardDuty / Inspector / Macie
| サービス | 検出対象 |
|---|---|
| GuardDuty | 脅威検知(VPCフローログ・DNS・CloudTrailを機械学習で分析) |
| Inspector | EC2・コンテナ・Lambdaの脆弱性スキャン |
| Macie | S3内の機密データ(個人情報など)を機械学習で検出 |
Security Hub
複数のセキュリティサービスのアラートを一元集約し、CIS等のベンチマークに照らして自動評価。セキュリティ状況の全体像を1画面で把握できます。
Shield / WAF
- Shield:DDoS防御(L3/L4)。Shield AdvancedでL7や高度な保護+費用補償。
- WAF:Webアプリ向けFW。SQLインジェクション・XSS・Bot対策などをルールベースで防御。
8. 運用・モニタリング
CloudWatch
メトリクス・ログ・イベントを収集し、アラーム・ダッシュボード・自動アクションを提供する監視の中核。CloudWatch Logs / Alarms / Dashboards をまとめて押さえましょう。
CloudTrail
AWSアカウント内のすべてのAPIコールを記録する監査ログ。「いつ・誰が・何をしたか」を追跡でき、セキュリティ調査やコンプライアンスに必須です。
[!TIP]
CloudWatch(監視・メトリクス) と CloudTrail(操作の記録・監査) は役割が別物。「Watch=状態を見る/Trail=足跡をたどる」と覚えると混同しません。
Config
リソースの構成変更を記録・評価。マネージドルール/カスタムルールでコンプライアンス準拠を継続的にチェックします。
Systems Manager(SSM)
パッチ管理・リモート操作(Session Manager)・パラメータストア・オートメーションなど、運用作業を一元化。踏み台サーバーなしでEC2に安全にアクセスできるSession Managerは特に便利です。
EventBridge
イベント駆動アーキテクチャのハブ。ルールでイベントをルーティングし、Cron式による定期実行やSaaSとの連携も可能です。
9. インフラ管理・ガバナンス
CloudFormation
インフラをコード化(IaC)するサービス。YAML/JSONテンプレートでリソースを宣言的に構築・更新・削除でき、再現性と一貫性を担保します。
マルチクラウド志向なら Terraform / OpenTofu も選択肢。AWS単一なら CloudFormation や AWS CDK(プログラミング言語でIaC) がよく使われます。
Organizations / Control Tower
- Organizations:複数アカウントを一元管理。**SCP(Service Control Policy)**で組織全体の権限ガードレールを設定。
- Control Tower:ベストプラクティスに沿ったマルチアカウント環境を自動構築。
Service Catalog
承認済みのIaCテンプレートをカタログ化し、利用者がセルフサービスでデプロイ可能に。ガバナンスを保ちつつスピードを上げます。
Trusted Advisor / Compute Optimizer
- Trusted Advisor:コスト・セキュリティ・パフォーマンス・耐障害性の観点で改善提案。
- Compute Optimizer:メトリクス分析で最適なインスタンスタイプを推奨し、過不足リソースを検出。
Budgets
カスタム予算を設定し、しきい値超過時に通知。コストオーバーを未然に防ぎます。
Artifact
AWSのコンプライアンス文書(SOC、ISO、PCI DSSなど)をオンデマンドで取得できるポータル。監査対応に使います。
QuickSight
サーバーレスのBIツール。インタラクティブなダッシュボードを作成・共有でき、生成AIによる分析支援(Amazon Q in QuickSight)も提供されています。
まとめ
AWSは膨大なサービス群ですが、「カテゴリ」と「役割の対比」で覚えると一気に整理できます。
- ネットワークは VPC を中心に、出入口(IGW/NAT)と接続(DX/VPN/TGW)を押さえる
- ストレージは EBS / EFS / S3 の使い分けが鉄則
- DBは RDS / Aurora / ElastiCache / Redshift を用途で選ぶ
- 監視は CloudWatch(状態) と CloudTrail(操作) をセットで
- 似たサービス(CloudFront⇔Global Accelerator、GuardDuty⇔Inspector⇔Macie)は違いで覚える
参考リンク
- AWS 公式ドキュメント(日本語)
- AWS クラウドサービス活用資料集(BlackBelt)
- Aurora serverless: Faster performance, enhanced scaling(AWS Database Blog)
- Amazon S3 Express One Zone(製品ページ)
- 週刊AWS(最新アップデートまとめ・AWS公式ブログ)
- AWS Well-Architected フレームワーク
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