0.はじめに
Windows Serverのライセンスは、その複雑さから多くのエンジニアが悩んでいるかと思います。(私もその1人でした。)
特に物理環境と仮想環境、そしてCALの考え方は、知らないうちにライセンス違反に陥るリスクがあります。
この記事では、この複雑なライセンス体系の本質と、現場で本当に役立つ見積もり方を勉強かねてまとめたので少しでも共有・理解できればと思います!
1. Windows Serverのライセンス体系を理解する
Windows Serverのライセンスは、大きく分けてサーバーライセンスとCALの2種類が必要です。サーバーライセンスはWindows Server自体を利用するためのもので、CALはサーバーの機能にアクセスするクライアント(ユーザーやデバイス)に必要となります。
サーバーライセンスの基本:コアベースライセンスとは?
現在、Windows Serverの主要なライセンスモデルはコアベースライセンスです。これは、サーバーの物理CPUに搭載されているコア数に基づいてライセンスを購入する方式です。
最低要件:
①サーバー1台あたり最低16コア分のライセンス
②1CPUソケットあたり最低8コア分のライセンス
これらの要件を下回る場合でも、サーバー1台につき最低16コア分のライセンスを購入しなければなりません。
サーバーライセンスのカウント方法
物理サーバーのコア数を確認する: サーバーに搭載されている物理CPUソケット数と、それぞれのコア数を把握します。
ライセンス数を計算する: サーバーの物理コア数分のライセンスを購入する必要があります。例えば、24コアの物理サーバーであれば、24コア分のライセンスが必要です。
例:
| サーバー構成 | コア数 | 満たすべき要件 | 必要なライセンス数 |
|---|---|---|---|
| 1ソケット8コア | 8コア | サーバーあたり16コアの最低要件に満たない。 | 16コア分のライセンス |
| 1ソケット16コア | 16コア | サーバーあたり16コアの最低要件を満たす。 | 16コア分のライセンス |
| 2ソケット16コア (1ソケットあたり8コア) | 32コア | サーバーあたり16コア、1ソケットあたり8コアの最低要件を両方満たす。 | 32コア分のライセンス |
物理サーバーのCPUソケット数とコア数の組み合わせによって変動します。
下の出展に参考サイトがありますので詳細はそこでも確認してください。
エディションの違い(Standard vs. Datacenter)と仮想化の関係
Standardエディション: サーバーライセンス16コア分(2CPUソケット×8コア)につき、仮想マシン(VM)を2台まで稼働させることができます。もし3台以上のVMを動かす場合は、さらに16コア分のライセンスを買い足す必要があります。
Datacenterエディション: 16コア分のライセンスで、無制限のVMを稼働させることができます。仮想化を積極的に利用する環境では、Datacenterエディションが適しています。
ちなみに
仮想マシンの種類(HyperVかVMware)による違いでライセンスの購入数は変わることはないですが、以下の注意点があります。
①VMの移動(vMotionなど)
VMwareのvMotionや、Hyper-Vのライブマイグレーションのように、稼働中のVMを別の物理サーバーに移動させる機能は非常に便利です。しかし、この際にライセンス監査で指摘を受けやすい点があります。
移動先の物理サーバーも、VMが稼働する可能性があることを考慮してライセンスを付与しておく必要があります。
例えば、3台の物理サーバー(ホスト)からなるクラスターでVMが自由に行き来する環境を構築した場合、クラスター内のすべてのホストの全コアに対してライセンスを付与する必要があります。
もしライセンスが付与されていないサーバーにVMが移動してしまうと、その時点でライセンス違反となります。
②VMのライセンス認証方法
Windows Server DatacenterエディションがインストールされたHyper-V環境では、「自動仮想マシン認証(AVMA: Automatic Virtual Machine Activation)」という機能を利用できます。これは、ホストOS(Hyper-V)がDatacenterエディションで適切にライセンス認証されていれば、その上で稼働する仮想マシン(ゲストOS)が自動的にライセンス認証される仕組みです。
しかし、VMware環境ではこのAVMAは利用できません。そのため、VMware上のVMは個別にライセンスキーを使って認証する必要があります。
2. CAL(クライアントアクセスライセンス)の正しい考え方
CALはサーバーに接続するユーザーまたはデバイスごとに購入が必要なライセンスです。
CALはなぜ必要なのか?
サーバーの機能(ファイル共有、リモートデスクトップ、プリンター共有など)を利用するクライアントは、その利用権としてCALが必要です。サーバーのライセンスだけでは、クライアントがアクセスすることは許可されません。
ユーザーCALとデバイスCALの使い分け
ユーザーCAL: 1人のユーザーが、複数のデバイスからサーバーにアクセスする場合に有効です。
デバイスCAL: 1つのデバイスを、複数のユーザーが共有してサーバーにアクセスする場合に有効です。
自社の働き方やデバイス利用状況に合わせて、どちらがコスト効率が良いかを判断する必要があります。
RDP接続、ファイル共有に必要なCALの具体例
ファイル共有・プリンター共有: Windows Serverの機能を利用する場合、基本的にWindows Server CALが必要です。
リモートデスクトップ接続: リモートデスクトップ機能を利用する場合は、通常のWindows Server CALに加えて、RDS CAL(Remote Desktop Services CAL) が必要です。
ライセンスサーバーとRDS CALの関連性
RDS CALはライセンスサーバーで管理・配布されます。リモートデスクトップセッションホストは、ライセンスサーバーに接続し、接続を許可します。この仕組みを理解していないと、接続が拒否されるなどのトラブルに繋がります。(一応120日の猶予期間はある)
3. 実践!現場でのライセンス見積もりステップ
ステップ1:物理サーバーのコア数を確認する
サーバーの物理コア数を正確に数えます。仮想環境であっても、基盤となる物理サーバーのコア数がライセンス数の基準となります。
ステップ2:仮想化の要件を定義する
VMの台数: 何台のVMを動かす予定か?
VMの利用率: VMの数が頻繁に増減するか?
この要件に応じて、StandardかDatacenterのどちらが適切かを判断します。
ステップ3:必要なCALの種類と数を算出する
ユーザー数/デバイス数: サーバーにアクセスするユーザーまたはデバイスの総数を数えます。
アクセス方法: リモートデスクトップを利用するユーザーやデバイスの数を把握します。
ケーススタディ:具体的なシステム構成でのライセンス見積もり例
物理サーバー1台(2CPUソケット、16コア)
仮想サーバー2台(ファイルサーバー、アプリケーションサーバー)
サーバーにアクセスするユーザー50人
リモートデスクトップを利用するユーザー10人
この場合、必要なライセンスは以下の通りです。
サーバーライセンス: 16コア分のStandardエディションライセンス1セット(VMが2台なのでStandardでOK)。
CAL: ユーザー数が50人なので、ユーザーCALを50本。RDP利用者が10人いるので、さらにRDSユーザーCALを10本。
4. 見落としがちなライセンスの落とし穴と監査対策
ライセンス違反に陥るケース
仮想マシンの追加: StandardエディションでVMを3台以上動かす際に、ライセンスを追加購入し忘れるケース。
CALの購入忘れ: サーバーは導入したが、アクセスするクライアント側のCALを購入し忘れるケース。
RDP接続の無許可利用: リモートデスクトップ機能を有効にしたが、RDS CALを購入していないケース。
ライセンス監査(SAM)で指摘されやすいポイント
・物理サーバー上のVMの数がライセンスの許容範囲を超えていないか。
・サーバーライセンスに対して、必要なCALが揃っているか。
・ライセンスを証明する書類(購入証明書など) が保管されているか。
普段からやっておくべきライセンス管理のポイント
台帳管理: どのサーバーにどのライセンスを適用しているか、CALの購入数はいくつか、といった情報を常に最新の状態で管理すること。
仮想化環境の監視: VMの稼働台数を定期的にチェックし、ライセンス数を超過しないように注意すること。
購入証明書の保管: 監査時には購入証明書の提示を求められることが多いため、大切に保管すること。
5.まとめ:ライセンスは「コスト」ではなく「リスク管理」
Windows Serverのライセンスは複雑ですが、そのルールを理解し、適切に管理することで、ライセンス違反という大きなリスクを回避できます。ライセンスは単なる導入コストではなく、企業のコンプライアンスを守るための重要なリスク管理です。
出展
Microsoftではないけどコアライセンスに関してはこちらの方が理解しやすいかも