目次
- エグゼクティブサマリー
- 1. 5G VoNRとキャリアアグリゲーションの概要
- 2. 主要な5Gシステムコンポーネントとインターフェース
- 3. VoNRのQoSフレームワーク
- 4. 5G NRにおけるRRC測定報告
- 5. キャリアアグリゲーション手順: SCell追加
- 6. メッセージシーケンスチャート: VoNR測定報告とキャリアアグリゲーション
- 7. メッセージシーケンスチャートの分析
- 8. 結論
- 引用文献
エグゼクティブサマリー
本レポートは、Voice over New Radio (VoNR) 通話中のUser Equipment (UE) がRRC_CONNECTED状態にある5Gスタンドアローン (SA) ネットワークにおける、UE測定報告とそれに続くキャリアアグリゲーション (CA) の手順を分析するものです。本分析の中心は、3GPP標準に厳密に準拠して作成されたメッセージシーケンスチャートであり、UE、gNB、および5Gコアネットワーク機能間の動的な相互作用を示しています。本レポートでは、様々なネットワークエンティティの役割、VoNRに不可欠なQoSフローと無線ベアラのマッピング、およびCAを通じてシームレスなパフォーマンス向上を可能にする無線インターフェースメカニズムについて詳しく説明します。
1. 5G VoNRとキャリアアグリゲーションの概要
1.1 5G SAにおけるVoice over New Radio (VoNR) の概要
Voice over New Radio (VoNR) は、5G New Radio (NR) 無線アクセスネットワーク (RAN)、5Gコア (5GC)、およびIPマルチメディアサブシステム (IMS) を利用して、5Gネットワーク上で音声およびビデオサービスを提供することを可能にします。これは、5Gスタンドアローン (SA) データサービスの普及に伴い、モバイルネットワーク事業者 (MNO) にとって不可欠なサービスとなっています [1]。
VoNRは、VoLTEと同様に、通話のセットアップ、維持、および解放を管理するためにIMSに依存しています。UEとIMS間のシグナリングにはSIP (Session Initiation Protocol) が使用されます [1]。VoNRは、SIPシグナリングメッセージには5QI=5の非GBR (Guaranteed Bit Rate) QoSフローを、接続確立後の音声パケット転送には5QI=1のGBR QoSフローを使用します [1]。gNBは、SIPシグナリングにはRLC-AM (Acknowledged Mode) のDRB (Data Radio Bearer) を、音声トラフィック (RTP) にはRLC-UM (Unacknowledged Mode) のDRBを使用します [1]。UEは、NAS登録手順中に「UEの利用設定」情報要素 (IE) を通じてIMS音声サービスをサポートする能力情報を提供します [1]。
IMSがVoNRに依存していることは、VoLTEと同様に、音声サービスアーキテクチャにおける戦略的な継続性を示しています。これは、5Gが新しい無線機能をもたらす一方で、音声の基本的なサービス提供には確立されたIMSインフラストラクチャが活用されることを意味します。このアプローチは、VoLTE向けにIMSをすでに導入している事業者にとって、5G SAでの音声サービス展開の複雑さとコストを削減することに繋がります。これにより、5G SAにおける音声サービスの迅速な展開が可能になります。
1.2 5G NRにおけるキャリアアグリゲーションの原則
キャリアアグリゲーション (CA) は、帯域幅、スループット、およびスペクトル効率を向上させるために、2つ以上のコンポーネントキャリア (CC) を集約する技術です。UEは、その能力に応じて、複数のCCで同時に送受信することができます [2]。
CAは、連続したCCと非連続なCCの両方をサポートします。フレームタイミングとSFN (System Frame Number) は、通常、集約可能なセル間で同期されるか、SpCellとSCell間でスロットの倍数でオフセットが設定されます [2]。
連続および非連続CAの両方をサポートし、柔軟なタイミングアライメントを可能にすることは、5G NRが多様で断片化した周波数帯域の利用を最大化するように設計されていることを示しています。これにより、事業者は、より小さな、ばらばらのスペクトルブロックを組み合わせて、より高い実効帯域幅を達成できます。これは、取得したスペクトルがしばしば断片化されていることを考慮すると、極めて重要な機能です。この能力は、ネットワーク容量とユーザー体験に直接影響を与え、より大きな実効帯域幅は、より高いデータレートと向上したサービス品質に繋がり、VoNRなどのデータサービスと同時に実行される低遅延アプリケーションにとっても重要です。
1.3 VoNRにおけるUEの状態とRRC_CONNECTEDコンテキスト
UEはRRC_CONNECTED状態にあり、これは専用のシグナリングと動的なリソース割り当てに不可欠な状態です [3]。RRC_CONNECTED状態では、UEはgNBとの間で無線リソース制御 (RRC) 接続を確立しており、制御プレーンおよびユーザープレーンデータの効率的な交換が可能です [3]。
VoNRの場合、特定のPDUセッションが確立されます。これには、デフォルトのPDUセッション (非GBR, 5QI=6-9) と、IMS PDUセッション (SIPシグナリング用、非GBR, 5QI=5) が含まれます。音声トラフィック (RTP) 用には、GBR QoSフロー (5QI=1) を持つ専用のPDUセッションが確立されます [1]。
アクティブなVoNR通話中にRRC_CONNECTED状態が維持されることは、5Gが重要なサービスに対して低遅延と高信頼性を維持することを重視していることを示しています。以前の世代では、モビリティやリソース変更が状態遷移を伴う可能性がありましたが、5GはUEを接続状態に保つことでサービスの中断を最小限に抑えることを目指しています。これは音声品質にとって極めて重要です。RRC_CONNECTED状態は、アクティブな通信と動的なリソース管理のために設計されています。測定報告とCA手順が、RRC_IDLEやRRC_INACTIVEへの遷移を必要とせずにこの状態内で発生するという事実は、シームレスなユーザー体験への注力を強調しています。これはVoNRにとって直接的な利点であり、中断は通話の切断や品質の低下につながる可能性があります。重要なサービスに対する「常時接続」の体験は、5G SAの主要な差別化要因の一つです。
2. 主要な5Gシステムコンポーネントとインターフェース
2.1 UEと5Gモデムのアーキテクチャ
UE (User Equipment) には5Gモデムが搭載されており、RRC、NASプロトコル処理、測定報告など、無線インターフェース機能の責任を負います。UEのPDCP (Packet Data Convergence Protocol) レイヤはRTP (Real-time Transport Protocol) およびRTCP (RTP Control Protocol)、RoHC (Robust Header Compression) をサポートし、MAC (Medium Access Control) レイヤはVoNRのためにDRX (Discontinuous Reception) をサポートします [1]。UEは、NAS登録手順中にIMS音声サービスサポートを示す「UEの利用設定」IEなどの能力情報を提供します [1]。
2.2 gNB (次世代ノードB)
gNBは5G基地局であり、無線リソース管理、スケジューリング、UEとのUuインターフェースを介した通信、および5GCとのN2およびN3インターフェースを介した通信を担当します。gNBは、SIPシグナリングDRBにはRLC-AMモードを、音声トラフィック (RTP) DRBにはRLC-UMモードを使用します [1]。
2.3 5Gコアネットワーク機能 (AMF, SMF, AUSF, UDM, UDR, PCF, UPF, DN)
5Gシステムは、サービスベースのアーキテクチャ (SBA) に基づいており、各ネットワーク機能 (NF) が特定のサービスを提供し、相互に連携します。
-
AMF(Access and Mobility Management Function):UEの登録、接続管理、モビリティ管理、およびNASシグナリングの終端を処理します。gNB(N2)、SMF(N11)、AUSF(N12)、UDM(N8)、およびPCF(N15) と連携します [5]。 -
SMF(Session Management Function):PDUセッション、IPアドレス割り当てを管理し、UPF(N4)、PCF(N7)、およびUDM(N10) と連携します [7]。 -
AUSF(Authentication Server Function):UEを認証し、AMF(N12) およびUDM(N13) と連携します [7]。 -
UDM(Unified Data Management): ユーザーのサブスクリプションデータを保存し、認証情報を管理し、AMF(N8)、SMF(N10)、およびAUSF(N13) にサービスを提供します [6]。 -
UDR(Unified Data Repository):UDM、PCF、およびその他のNFの構造化データを保存します。PCFはUDRに保存されたポリシーサブスクリプション情報を使用します [7]。 -
PCF(Policy Control Function):AMF(N15) およびSMF(N7) にポリシー規則を提供し、トラフィックルーティング、QoS、および課金に影響を与えます。UDRからのデータを使用します [7]。 -
UPF(User Plane Function): ユーザープレーントラフィックの転送、パケット検査、QoS強制を処理し、gNB(N3) およびSMF(N4) と連携します [7]。 -
DN(Data Network): サービス (例: インターネット、IMS) を提供する外部ネットワークです。
2.4 NF間参照点とプロトコル
5Gコアネットワーク (N8, N10, N12, N13, N15, N7) 全体でのHTTP/2とJSONによるサービスベースインターフェース (SBI) の普及は、クラウドネイティブ原則への根本的なアーキテクチャの転換を示しています。これにより、従来の密結合なインターフェースと比較して、コアネットワークの柔軟性、スケーラビリティ、プログラマビリティが向上し、サービスの迅速な展開と自動化が促進されます [6]。
以下の表は、主要な5Gインターフェースとその基盤となるプロトコルをまとめたものです。
表1: 主要な5Gインターフェースとプロトコル
| インターフェース | 接続NF | プロトコル | 3GPP TS | 説明 |
|---|---|---|---|---|
| Uu | UE - gNB | RRC, NAS | TS 38.331, TS 24.501 | 制御プレーンおよびユーザープレーンシグナリング用の無線インターフェース。 |
| N1 | UE - AMF | NAS (5GMM, 5GSM) | TS 24.501 | モビリティおよびセッション管理用の制御プレーンインターフェース。 |
| N2 | gNB - AMF | NGAP | TS 23.502, TS 38.413 | RAN-コアシグナリング用の制御プレーンインターフェース。 |
| N3 | gNB - UPF | GTP-U | TS 23.502 | データ転送用のユーザープレーンインターフェース。 |
| N4 | SMF - UPF | PFCP | TS 23.502 | 制御プレーンとユーザープレーン分離インターフェースで、セッション管理に使用。 |
| N7 | SMF - PCF | SBI (HTTP/JSON) | TS 29.512 | セッション管理ポリシー用のポリシー制御インターフェース。 |
| N8 | AMF - UDM | SBI (HTTP/JSON) | TS 29.503 | アクセスおよびモビリティ管理データ取得。 |
| N10 | SMF - UDM | SBI (HTTP/JSON) | TS 29.503 | セッション管理データ取得。 |
| N11 | AMF - SMF | SBI (HTTP/JSON) | TS 23.502 | PDUセッション管理用の制御プレーンインターフェース。 |
| N12 | AMF - AUSF | SBI (HTTP/JSON) | TS 29.509 | 認証サービスインターフェース。 |
| N13 | AUSF - UDM | SBI (HTTP/JSON) | TS 29.509 | 認証データ取得。 |
| N15 | AMF - PCF | SBI (HTTP/JSON) | TS 29.507 | アクセスおよびモビリティポリシー用のポリシー制御インターフェース。 |
| N17 | AMF - 5G-EIR | SBI (HTTP/JSON) | TS 23.502 | 機器識別チェック。 |
3. VoNRのQoSフレームワーク
3.1 5G QoS識別子 (5QI) とQoSフロー特性
5G QoSモデルはQoSフローに基づいており、これはPDUセッションにおけるQoS差分化の最も細かい粒度です。各QoSフローは、PDUセッション内で一意のQoSフローID (QFI) によって識別されます [29]。
QoSフローは、GBR (Guaranteed Bit Rate) または非GBRのいずれかです [29]。VoNRの場合、SIPシグナリングメッセージには5QI=5 (非GBR) のQoSフローが使用され、高優先度で扱われます。接続確立後の音声パケット (RTP) には5QI=1 (GBR) のQoSフローが使用され、特定の保証フロービットレート (GFBR) および最大パケット損失率パラメータが設定されます [1]。
5QIは、優先度レベル、パケット遅延、パケットエラー率などのQoS特性のセットへのポインタであり、これらは標準化されているか、非標準化されているかのいずれかです。5QIの値は、モビリティのためにEPS QCIと整合されています [31]。
3.2 QoSフローからデータ無線ベアラ (DRB) へのマッピング
IPフローからQoSフロー (NASレベル) へのマッピングと、QoSフローからデータ無線ベアラ (DRB) (アクセス層レベル) へのマッピングという2段階のマッピングが存在します [30]。
SMFからgNB (AMFを介してN2経由) に提供されるQoSプロファイルは、無線インターフェースでの処理を決定します。SMFからUE (AMFを介してN1経由) に提供されるQoSルールは、アップリンクユーザープレーントラフィックとUEでのQoSフロー間のマッピングを指示します [29]。gNBは、SIPシグナリングDRBにはRLC-AMモードを、音声トラフィック (RTP) DRBにはRLC-UMモードを使用します [1]。
2段階のQoSマッピング (IPフローからQoSフロー、そしてQoSフローからDRBへ) と、QoSプロファイル (ネットワーク側) とQoSルール (UE側) の区別は、5Gのきめ細かく分散されたQoS管理を示しています。これにより、コアネットワークと無線アクセスネットワークの両方で柔軟かつ動的なQoSの適用が可能となり、ネットワークの状態やユーザーの要求が変化しても、音声のような重要なサービスがエンドツーエンドで適切な処理を受けられることが保証されます。この役割分担により、ネットワークは望ましいQoS特性 (プロファイル) を指定し、UEはそれらの特性をアップリンクトラフィック (ルール) に適用できます。この分散制御は、厳密な遅延とパケット損失の保証を必要とするVoNRのようなリアルタイムサービスにとって特に重要であり、効率的なリソース割り当てとQoSの適用を可能にします。gNBがQoSフローを異なるRLCモード (信頼性の高いシグナリングにはAM、低遅延音声にはUM) を持つ特定のDRBにマッピングできることも、このきめ細かい制御をさらに示しています。
以下の表は、VoNRにおけるQoSフローとDRBのマッピングを示しています。
表2: VoNR QoSフローからDRBへのマッピング
| QoSフロータイプ | 5QI | QoS特性 | QFI | 無線ベアラID | 論理チャネル | トランスポートチャネル | 物理チャネル | RLCモード |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| IMSシグナリング | 5 | 非GBR, 高優先度 | QFI_SIP | DRB_SIP | DCCH | UL-SCH / DL-SCH | PUSCH / PDSCH | RLC-AM |
| 音声トラフィック | 1 | GBR (保証ビットレート) | QFI_Voice | DRB_Voice | DTCH | UL-SCH / DL-SCH | PUSCH / PDSCH | RLC-UM |
このIPフローからQoSフローへ、そしてQoSフローからDRBへのマッピングを実現する上で中心的な役割を果たすのが、5Gで新たに導入されたSDAP (Service Data Adaptation Protocol) 層です。
SDAP層はPDCP層の上に位置し、以下の重要な機能を担います。
アップリンク: UEのSDAP層は、上位レイヤーから渡された各IPパケットのQFI(QoS Flow Identifier)を検査します。そして、そのQFIに対応付けられたDRBへとパケットを振り分けます。これにより、例えば音声パケット(5QI=1)は低遅延が保証されたRLC-UMモードのDRBへ、IMSシグナリングパケット(5QI=5)は信頼性が保証されたRLC-AMモードのDRBへと確実 に転送されます。
ダウンリンク: gNBのSDAP層は、5GコアのUPFから受信したダウンリンクパケット(GTP-UヘッダにQFIが含まれる)を適切なDRBにマッピングし、UEへと送信します。
このように、SDAPは5Gの精緻なQoS制御を無線区間で実現するための「仕分け役」として機能しており、表2で示したマッピングは、このSDAP層によって実行されています。
3.3 QoSフロー識別子 (QFI)
QFIは、N3 (gNBとUPF間) およびN9 (UPF間) のカプセル化ヘッダに含まれて転送され、エンドツーエンドのパケットヘッダは変更されません [29]。UPFは、PDR (Packet Detection Rule) に基づいてダウンリンクユーザープレーントラフィックをQoSフローにマッピングし、カプセル化ヘッダにQFIを含めます [29]。UEは、一致するQoSルールのQFIでアップリンクPDUをマークし、対応するアクセス固有のリソースを使用して送信します [29]。gNBは、N3経由でアップリンクパケットをUPFに渡す際に、カプセル化ヘッダにQFI値を含めます [29]。
4. 5G NRにおけるRRC測定報告
4.1 測定報告の目的とトリガー (例: イベントA3)
測定報告は、モビリティ管理 (例: ハンドオーバー、セル再選択) および無線リソース管理 (例: キャリアアグリゲーション、デュアルコネクティビティ) に不可欠です [4]。ネットワークは、測定設定 (MeasConfig) を使用して、イベント (例: イベントA3) と報告基準をUEに設定します [4]。
イベントA3 (近隣セルがPCellよりもオフセット分だけ良くなる) は、SCell追加の一般的なトリガーであり、集約に適したより強力または適切な候補セルが利用可能になったことを示します。
SCell追加にイベントトリガー型測定報告 (イベントA3など) を使用することは、5Gにおけるリソース管理のプロアクティブで動的なアプローチを反映しています。静的な設定ではなく、ネットワークはリアルタイムのUE測定を活用して動的な無線条件に適応し、パフォーマンスを最適化します。これは、データと同時にVoNRなどのサービスが実行されている場合に、高いデータレートと低遅延を維持するために不可欠です。このメカニズムにより、ネットワークは、UEが観測した無線環境に基づいて、必要な場合にのみ追加の無線リソース (SCell) を動的に識別し、利用できます。これは静的なリソース割り当てとは対照的であり、5Gの無線リソース管理の適応性を強調しています。これは、効率的なスペクトル利用と一貫したユーザー体験を提供するために極めて重要です。
4.2 RRC測定設定 (MeasConfig)
MeasConfigは、様々な測定を設定するために使用されるRRC情報要素 (IE) です。通常、RRCReconfigurationメッセージまたはRRCResumeメッセージで提供されます [34]。
MeasConfigの主要な構成要素は以下の通りです。
-
MeasIdToAddModList:MeasObject(何を測定するか) をReportConfig(どのように報告するか) にリンクします [34]。 -
MeasObjectToAddModList: 測定のターゲットを定義します (例:NR周波数用のMeasObjectNR) [34]。 -
ReportConfigToAddModList: 測定報告を送信する条件と、その内容を定義します (例:NR固有の報告用のReportConfigNR、定期報告用のReportInterval) [34]。 -
QuantityConfig: 測定量 (RSRP,RSRQ,SINR) とそのフィルタリング係数を設定します [34]。 -
MeasGapConfig: 異周波数/異RAT測定を実行するための測定ギャップを設定します [34]。
レガシーSSB (Synchronization Signal Block) 測定設定 (NR SIB2/4) は、早期測定に再利用できます [33]。
4.3 MeasurementReportメッセージ構造と内容
MeasurementReportメッセージは、3GPP TS 38.331で定義されているUL-DCCH (Uplink Dedicated Control Channel) メッセージです [34]。その主要なフィールドはmeasResultsであり、実際の測定結果 (例: サービングセルおよび近隣セルのRSRP、RSRQ値) が含まれます [34]。UEは、ネットワークに正常に報告した後 (例: UEInformationResponseまたはRRCResumeCompleteで)、早期測定結果を削除します [33]。
5. キャリアアグリゲーション手順: SCell追加
5.1 SCellのアクティベーションとデアアクティベーション
セカンダリセル (SCell) は、RRCによって追加時またはハンドオーバー後に、非アクティブ状態またはアクティブ状態に設定できます [33]。SCellは、全体的な容量を向上させ、スループットを改善するために追加されます [4]。
5.2 SCell追加のためのRRCReconfiguration
ネットワークは、RRC接続を変更するために、RRC_CONNECTED状態のUEに対してRRCReconfiguration手順を開始します。これにはSCellの追加が含まれます [4]。
RRCReconfigurationメッセージは、3GPP TS 38.331で定義されているDL-DCCH (Downlink Dedicated Control Channel) メッセージです [34]。
SCell追加の場合、RRCReconfigurationメッセージには、CellGroupConfig内のsCellToAddModListが含まれます。これには、新しいSCellのsCellIndex、sCellConfigCommon、およびsCellConfigDedicatedパラメータが指定されます [4]。
RRCReconfigurationは、新しいSCellのリソースを利用するために、既存の無線ベアラ (DRB, SRB) を確立または変更することもでき、SCG (Secondary Cell Group) 固有のRLC、MAC、および物理層設定を含みます [4]。
RRCReconfiguration (SCell追加/解放) の処理時間は、通常16msです [36]。
RRCReconfigurationメッセージがSCell追加だけでなく、無線ベアラとQoS設定も管理する多用途性は、無線リソースに対する集中型でありながら高度に適応可能な制御メカニズムを示しています。この包括的なアプローチにより、SCellの追加のようなネットワーク変更が、VoNRなどの進行中のサービスとシームレスに統合され、アクティブな通信を中断することなくリソース利用を最適化し、QoSを維持できることが保証されます。gNBは、MeasurementReportを受信し、RRCReconfigurationを開始します。これは、gNBがコアネットワークの常時関与なしに無線リソース割り当てに関する意思決定を行うために必要なインテリジェンスとリアルタイムデータを持っていることを意味します。このRANエッジにおける分散型インテリジェンスは、5Gの主要な原則であり、VoNRのようなサービスに対して超低遅延と高い信頼性を可能にします。gNBは、コアネットワークへの往復遅延なしに無線条件に迅速に対応できるためです。
6. メッセージシーケンスチャート: VoNR測定報告とキャリアアグリゲーション
6.1 ダイアグラム
以下のダイアグラムは、VoNR通話中のUEが測定報告を行い、それに続いてキャリアアグリゲーション (SCell追加) が行われるメッセージシーケンスを示しています。
7. メッセージシーケンスチャートの分析
7.1 UEの測定と報告における役割
UEは、gNBから受信したMeasConfigに基づいて無線条件を継続的に監視します。これには、サービングセルと近隣セルのRSRP (Reference Signal Received Power) およびRSRQ (Reference Signal Received Quality) の測定が含まれます [34]。
設定されたイベント (例: SCell追加のためのイベントA3) を検出すると、UEはMeasurementReportメッセージを生成して送信します [33]。このレポートには測定された量が含まれ、gNBが無線リソース管理に関する情報に基づいた決定を下せるようになります [33]。UEは、ネットワークに正常に報告した後、早期測定結果を削除します [33]。
7.2 SCell追加に関するgNBの意思決定
gNBは、MeasurementReportを分析し、SCellの追加が有益であるかどうか (例: 信号品質の向上、容量の増加、負荷分散) を判断します。gNBは、RRCReconfigurationを開始する前に、UEの能力 (例: 特定のCA組み合わせ、FR1/FR2帯域のサポート)、ネットワーク負荷、および利用可能なスペクトルリソースを考慮します [1]。
gNBがUEからの報告とネットワークポリシーに基づいてSCell追加の主要な意思決定者であることは、5GにおけるRAN内に分散されたインテリジェンスを強調しています。従来のコア中心のアプローチとは異なり、このローカライズされた意思決定により、動的な無線環境への迅速な適応が可能になり、リソース利用の効率化とユーザー体験の向上が実現されます。これは、データと同時に実行されるVoNRなどのサービスにとって不可欠です。gNBがMeasurementReportを受信し、RRCReconfigurationを開始するという事実は、gNBがコアネットワークの常時関与なしに無線リソース割り当てに関する意思決定を行うために必要なインテリジェンスとリアルタイムデータを持っていることを示しています [4]。このRANエッジにおける分散型インテリジェンスは、5Gの主要な原則であり、gNBが無線条件に迅速に対応できるため、VoNRのようなサービスに対して超低遅延と高い信頼性を可能にします。
7.3 ポリシーおよびセッション管理のためのコアネットワークとの相互作用
主要なCAシグナリングはUEとgNB (RRC) 間で行われますが、gNBは新しく追加されたSCellに関連するネットワークコンテキストを更新したり、ポリシー決定を受信したりするために、5GC (AMF, SMF, PCF) と連携する場合があります。
例えば、SCellの追加によってPDUセッション (例: 音声通話または同時データ) の利用可能な帯域幅やQoS能力が大幅に変化した場合、gNBはN2 (NGAP) を使用してAMFに通知し、AMFはSMF (N11) およびPCF (N7) との相互作用をトリガーしてポリシー更新 (Npcf_SMPolicyControl_UpdateNotifyまたはNpcf_SMPolicyControl_UpdateをSBI経由で) を行う可能性があります [5]。
SCell追加時のgNBとコアネットワーク間の相互作用 (N2, N11, N7) の可能性は、無線リソース管理とコアネットワークポリシー間の複雑な相互作用を示しています。これにより、CAのような無線レベルの最適化が、ユーザーのサブスクリプション、事業者のポリシー、およびQoS保証と整合され、エンドツーエンドのサービス整合性が維持されることが保証されます。QoSプロファイルはSMFからAMF (N2経由) を介してgNBに提供されるため [29]、新しいSCellがgNBの約束されたQoS提供能力に影響を与える場合、SMF/PCFへの通知がトリガーされる可能性があります。これは、RANの行動がコアネットワークのポリシーに反映される「クローズドループ」最適化を示しており、一貫したサービス提供を保証します。
7.4 無線インターフェース: 物理チャネル、トランスポートチャネル、論理チャネル、および無線ベアラ
キャリアアグリゲーション手順における無線インターフェースの各層は、データの効率的な転送と制御シグナリングに不可欠な役割を果たします。
-
論理チャネル:
-
DCCH(Dedicated Control Channel):RRC_CONNECTED状態のUEとgNB間でMeasurementReport、RRCReconfiguration、RRCReconfigurationCompleteなどのRRCメッセージを伝送するために使用されます [3]。 -
DTCH(Dedicated Traffic Channel):VoNR音声トラフィック (RTP) やその他の同時データトラフィックを含むユーザープレーンデータを伝送するために使用され、DRBにマッピングされます [3]。
-
-
トランスポートチャネル:
-
UL-SCH(Uplink Shared Channel): アップリンク論理チャネル (例:UL-DCCH,UL-DTCH) を伝送します。動的リンク適応、HARQをサポートします [2]。 -
DL-SCH(Downlink Shared Channel): ダウンリンク論理チャネル (例:DL-DCCH,DL-DTCH) を伝送します。動的レート適応、HARQ、チャネルアウェアスケジューリング、空間多重化をサポートします [3]。
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物理チャネル:
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PUSCH(Physical Uplink Shared Channel):UL-SCHを伝送します。 -
PDSCH(Physical Downlink Shared Channel):DL-SCHを伝送します。
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無線ベアラ:
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SRB1(Signaling Radio Bearer 1):MeasurementReport、RRCReconfigurationなどのRRCメッセージを伝送します。 -
DRBs(Data Radio Bearers): ユーザープレーンデータを伝送します。VoNRの場合、SIPシグナリング (RLC-AMモード) と音声トラフィック (RLC-UMモード) のために別々のDRBが確立されます [1]。
-
7.5 キャリアアグリゲーションのための周波数割り当てとセル/セクタの考慮事項
キャリアアグリゲーションは、通常、450 MHzから7100 MHzまでの帯域を含む周波数範囲1 (FR1) で行われます。FR2 (ミリ波) もサポートされていますが、初期の音声展開ではあまり一般的ではありません [37]。
大規模なモバイルキャリアは、CAに低帯域 (例: n5, n8, n12, n20, n28, n71)、中帯域 (例: n1, n2, n3, n7, n38, n40, n41, n66, n77, n78, n79, n90)、場合によっては高帯域 (FR2) スペクトルを組み合わせて利用することが一般的です。n77 (3300-4200 MHz) およびn78 (3300-3800 MHz) のような中帯域周波数は、カバレッジと容量のバランスが取れているため人気があり、多くの場合、プライマリキャリアまたは強力なSCell候補として機能します [37]。
gNBは、SCellの特定の周波数、帯域幅、およびサブキャリア間隔をUEに設定します。FR1は通常、15、30、または60 KHzのサブキャリア間隔を使用し、15 KHzと30 KHzが最も一般的です [38]。
大規模なモバイルキャリアによるキャリアアグリゲーションのための特定のFR1帯域の選択は、カバレッジと容量のバランスを取る実用的な展開戦略を明らかにしています。中帯域 (容量) と低帯域 (カバレッジ) 周波数の集約により、事業者は広域サービスと、必要な場所でのパフォーマンス向上を両方提供でき、VoNRやその他のデータサービスの知覚品質と可用性に直接影響を与えます。低帯域のプライマリセルが音声通話に広範囲のカバレッジを提供し、中帯域のSCellが動的に追加されてデータレートを向上させたり、高容量が必要なエリアでの音声品質を向上させたりすることができます。これは、スペクトル割り当てがネットワークアーキテクチャとサービス提供にどのように直接影響するかを示しています。
表3: キャリアアグリゲーションのための典型的な5G NR FR1周波数帯域
| バンド | デュプレックスモード | 周波数範囲 (MHz) | 一般的な名称 | 典型的なチャネル帯域幅 (MHz) | サブキャリア間隔 (kHz) |
|---|---|---|---|---|---|
| n1 | FDD | 1920-1980 (UL), 2110-2170 (DL) | IMT | 5, 10, 15, 20, 25, 30, 40, 45, 50 | 15, 30 |
| n3 | FDD | 1710-1785 (UL), 1805-1880 (DL) | DCS | 5, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45, 50 | 15, 30 |
| n5 | FDD | 824-849 (UL), 869-894 (DL) | CLR | 5, 10, 15, 20, 25 | 15, 30 |
| n7 | FDD | 2500-2570 (UL), 2620-2690 (DL) | IMT-E | 5, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 50 | 15, 30 |
| n28 | FDD | 703-748 (UL), 758-803 (DL) | APT | 3, 5, 10, 15, 20, 25, 30 | 15, 30 |
| n41 | TDD | 2496-2690 | BRS | 5, 10, 15, 20,..., 100 | 15, 30, 60 |
| n66 | FDD | 1710-1780 (UL), 2110-2200 (DL) | Extended AWS | 5, 10, 15, 20, 25, 30, 35, 40, 45 | 15, 30 |
| n77 | TDD | 3300-4200 | C-Band | 10, 15, 20,..., 100 | 15, 30, 60 |
| n78 | TDD | 3300-3800 | C-Band | 10, 15, 20,..., 100 | 15, 30, 60 |
8. 結論
本レポートでは、VoNR通話中の5G SAネットワークにおけるUE測定報告とそれに続くキャリアアグリゲーションの手順を分析しました。チャートは、3GPP標準の分析によって裏付けられ、UE、gNB、および様々な5GCネットワーク機能間の重要な相互作用を示しています。イベントトリガー型測定報告からSCell追加のためのRRCReconfigurationに至るまでの手順は、5Gの動的でインテリジェントな無線リソース管理能力を実証しています。
VoNR QoSフローから無線ベアラへの正確なマッピングは、多様なFR1周波数帯域での柔軟なキャリアアグリゲーションと相まって、高優先度音声サービスが最適な品質と信頼性で維持され、同時にネットワーク全体のスループットと効率が向上することを保証します。この包括的な理解は、高性能5G展開を設計および最適化するネットワークアーキテクトやエンジニアにとって不可欠です。
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