30
12

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

More than 1 year has passed since last update.

スタートアップがグロースに投資するタイミングを計る方法

Last updated at Posted at 2023-01-09

スタートアップにとって、まず重要なことは、顧客にとっての問題を理解した上で、その解決のためのプロダクト開発に力を入れることです。

また、顧客にとって価値のあるプロダクトを開発できたら、次はそうした問題を持っている人たちが多くいるマーケットに集中し、新規ユーザーの獲得と、ビジネスの成長のみに焦点を当てた活動である「グロース」に投資します。

なお、スタートアップの世界では、顧客に価値があるようなプロダクトを顧客に提供できていて、そのマーケットの規模が大きいことを「プロダクト・マーケット・フィット」と呼ぶのですが、「プロダクト・マーケット・フィット」しているかどうかで、グロースに投資するかを決めるため、特にビジネスの立ち上げ当初は「プロダクト・マーケット・フィット」しているかどうかを気にします。

しかし、「顧客にとって価値を提供できているか」を定量的に測る方法については、あまり参考になるような情報がありません。

そこで、Pinterest(訳者注: 米国の写真共有サービス)でプロダクトマネジャーを担当していたCasey Winters氏が、スタートアップがグロースに投資するタイミングを計る方法、言い換えれば、プロダクト・マーケット・フィットを計る方法を紹介する記事がありましたので、こちらに一部を要訳として紹介します。

  • Casey’s Guide to Finding Product/Market Fit - リンク

創業者やプロダクトの担当者は、プロダクトやサービスのグロースに投資する前に、プロダクト・マーケット・フィットがどのようなものかを深く理解するべきです。

この質問に答えるのは非常に難しく、例えば、「プロダクト・マーケット・フィットを達成しているかどうかは、その時がきて初めてわかる」あるいは、「プロダクト・マーケット・フィットを達成すると、全てがうまくいくようになる」といった話はよく聞きますが、こういった話は実用的とは言えません。

私自身、世界一の専門家ではありませんが、新しいプロダクトの立ち上げやビジネスの拡大、多くのスタートアップへの助言・投資を通して学んできたことを紹介します。

プロダクト・マーケット・フィットを測る定量的アプローチ

私はプロダクト・マーケット・フィットを、 「持続的な成長が期待できるほどの、サービスやプロダクトに対する満足度」 と定義します。

一般的にプロダクト・マーケット・フィットは時間の経過と共に高まる傾向があります。しかし、顧客の期待も時間の経過とともに高まり続けるため、顧客に「完全」に満足してもらうことはできません。プロダクト・マーケット・フィットは、彼らがプロダクトやサービスから離れられなくなったときなのです。

image.png

理論上、すべてのプロダクト体験(から得られる満足度)は上記のチャートように、プロダクト・マーケット・フィットのラインより下で始まり、一部のプロダクトがそのラインを超えて、時間の経過とともにその上にとどまり続けます。

そのため、ほとんどの企業にとって、プロダクト・マーケット・フィットを測ることは「顧客満足度」ではなく、「リテンション」を測定することなのです。そして、リテンションを測るときには、サービスの利用開始からの経過時間ごとの顧客のリテンションを可視化した リテンション・カーブ を使ってカーブが平坦になるかどうかを確認します。

ところで、どのようなプロダクトにも、そのプロダクトが提供する価値を顧客が受け取っている、と捉えられる顧客行動があります。

例えばPinterest (訳者注: 米国の写真共有サービス)では、それは「コンテンツの保存」でした。またGrubhub(訳者注: 米国で展開するフードデリバリーサービス) にとっては、「食べ物を注文する」ことでした。

また、プロダクト固有の利用頻度も考慮が必要です。例えば、Pinterest では、興味を持っているトピックを「毎週」閲覧することに決め、Grubhubでは、月に1-2回の頻度での注文にも決めました。

重要な顧客行動と、その実行が期待される頻度を決めたら、それを可視化していきます。

image.png

顧客をサービスの利用開始時期でグループ(色)に分け、プロダクトの主要なアクションを実行したユーザーの割合を経過時間ごとに可視化します。

通常、サービスの利用開始から間もないタイミングでは、急激にカーブを描いて下落することがありますが、プロダクト・マーケット・フィットを達成していれば、(カーブの下落が収束して)一定の顧客が、継続してそのプロダクト価値を見出し続け、サービスの利用を継続します。

顧客のリテンションがうまくいかないことで、成長できないスタートアップは少なくなく、成長できていないビジネスでは、プロダクト・マーケット・フィットを達成できません。リテンションなくして、持続的な成長はありえないので、リテンションが重要なのです。

では、なぜ(経過時間時間ごとの)リテンションが重要かというと、多くの場合、新規顧客の獲得は、サービスの利用を継続している顧客からもたらされるからです。

例えば、リテンションがうまくいっている場合、顧客は以下のような行動を取ってくれます。

  • 他の人にプロダクトの魅力を伝えてくれる
  • 実際にプロダクトを利用するよう直接プロダクトに招待してくれたり、利用するように働きかけてくれる
  • プロダクトの魅力を感じてもらえるようなコンテンツを作成してくれる
  • 製品を購入させるために、有料会員獲得や販売ループに投資できるような十分な資金を会社に提供してくれる
  • 営業や新規顧客の獲得費用のための資金を自社にもたらしてくれる

多くの創業者がこのことを理解せずに、成長を促すためのグロースハックや、PRにばかり注目しているのを見てきましたが、これらのタイプの戦術は、結果的に持続可能な成長戦略に役立つことはありますが、持続可能な成長「戦略」になることは滅多にありません。これが、他の満足度に関する指標が重要な理由です。

顧客がサービスやプロダクトに満足していない場合、成長を促す土台となる前述の行動が生じないため、成長のしようがありません。これらの顧客行動によって、毎月の新規顧客数が増加し、リテンション・カーブが平坦になることで、企業は持続的に成長するのです。

そのため、重要なアクションの頻度を達成している顧客の割合を可視化したリテンション・カーブが平坦になるかとどうかと、新規顧客の獲得数の月ごとの成長をモニターすることが、私が見つけたプロダクト・マーケット・フィットの最良の測り方です。

なお、新規顧客を拡大し続ける獲得ループが生じないほど、リテンション率が低いようであれば、リテンション率を改善する必要があります。

以下のチャートは、(プロダクトの利用開始からの)経過月数ごとのリテンション率と、新規顧客の月間成長を表しています。

image.png

このチャートのように、リテンションカーブが平坦になり、新規ユーザーが毎月増えていくような状態がプロダクト・マーケット・フィットを達成している状態と言えます。

一方でプロダクトの満足度をリテンションで測定できないこともあります。なぜなら、1回しか利用されない、あるいはたまにしか利用されないプロダクトもあるからです。
そういったときには、私はアンケートを作成して、プロダクトに応じて満足度を測定することを好みます。(訳者注: こちらで詳しいやり方を紹介しています)


以上、要約終わり。

あとがき

今回は、スタートアップがグロースに投資するタイミングを計る方法、言い換えれば、プロダクト・マーケット・フィットを計る方法を紹介しました。

記事で紹介されていた可視化の方法は、非常に有益ですが、いざ自分達の持っているサービスやプロダクトの利用ログなどを使って同じことをやろうとすると、データを取得した後にリテンションできているユーザーの数を集計したり、さらに、サービスの経過時間ごとのリテンション率を計算することが必要となるため、コードを書いたり、複雑なデータの加工が必要になることがあります。

そこで、例えば、データの加工、可視化、分析、レポーティングのためのUIツールのEpxploratoryを使うと、簡単に指標の集計・計算・可視化できるだけでなく、その更新の自動化が可能です。

ご自身のデータを使って、こういったチャートを作成したりデータの分析をしたい方は、下記のリンクより無料トライアルが可能ですので、是非、お試しください!

サブスクデータ分析: トライアルツアー

サブスクリプション型のビジネスに特有な指標の作成・可視化や分析の手法を、コードを書くことなく、ハンズオンを通して短時間で学んでいただけるコンテンツをまとめています。

サブスクリプション型のビジネスのご担当者様は、ぜひご覧ください!

サブスク型ビジネスデータ分析のためのページ

SaaSなどを始めとするサブスクリプション型ビジネスにとって重要なKPI、データの加工、可視化、統計・機械学習といった様々なデータサイエンスの手法やシリコンバレーなどでの事例を1つのページにまとめて公開しています。

img

ぜひ、ご覧ください。

30
12
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
30
12

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?