前回、AIエージェントに物件探しを任せたら家相で採点を始めた、という話を書いた。
あの記事を書いてから気づいたことがある。あの時AIが勝手に読み漁ったのは、家相のコラムとか間取り図の読み方とか、要するに「日本の暮らしの知識」だった。汎用的なAIの話はどこにでも転がっている。でも玄関の方角を気にして、礼金の月数でセルを黄色く塗って、鬼門を減点する。そういう動作をさせるのは、モデルの賢さじゃなくて、日本の暮らし側の知識とデータだった。
それなら、その「暮らし側」をちゃんと作ればいいじゃないか。
探した。でも、なかった
日本向けのAgent Skill自体はいくつかある。でも、天気、防災、暦、行政、図書館みたいな「日本で暮らす人の日常」を横断してまとめたスキル集は、少なくとも自分が探した範囲では見つからなかった。
日本は材料には困らない国だ。気象庁は、ユーザー登録なしで機械可読な気象・防災データを公開している。祝日は法で決まっている。ふるさと納税の限度額は計算式だ。国会図書館も青空文庫も検索できる。立派な材料が、ただバラバラに置いてある。
だから作る。kurashi-skill。暮らしのスキル集。
作るもの
kurashi-skillは、AIエージェントにそのまま読ませられる、日本の暮らしスキルの詰め合わせだ。天気、防災、暦、行政、図書館。バラバラに置いてあるデータを、エージェントが「調べて」と言われた瞬間に動ける形にする。
- MITライセンスのオープンソース。リポジトリはここ → https://github.com/tahodev/kurashi-skill
- フォーマットはAgent SkillsのSKILL.md形式。
npx skills addで入れられて、コーディングエージェントにそのまま読ませられる - READMEは日本語+英語
スキルを入れる条件は3つ。
- ログインなしで動くこと。最初はAPIキーすら不要なものから。カーリルのように無料キーが要るものは、キーの取り方まで書く
- データの出所を明確にすること。気象庁、国土地理院、e-Gov、国立国会図書館など、公式APIか公共データが基本。カーリルのように民間でも公共性が高く安定して提供されているデータは、出所を明記したうえで使う。出所が曖昧なデータは入れない
- スクレイピングが規約的に怪しいものには、今のところ手を出さない。メルカリ、SUUMO、食べログ、乗換案内などがそれにあたる。ただ、正式にデータを使わせてもらえるなら話は別だ。一緒に取り組んでいただけるなら、ぜひ連絡してほしい。協業を通じて、もっと大きな未来が描けると思っている
30日間のロードマップ
今日から30日間、このリポジトリの育ちを全部ここに書く。コミットがそのまま記事になる。
Week 1 - 基礎と防災
- Day 1 (今日): 宣言。リポジトリ公開、構成の説明
- Day 2: jma-weather - 気象庁の天気予報
- Day 3: bosai-alert - 地震情報と防災情報
- Day 4: japan-holidays - 祝日と連休の計算
- Day 5: furusato-nozei - ふるさと納税の限度額計算
- Day 6: calil-books - 図書館の蔵書検索 (カーリル)
- Day 7: ふりかえり。良いSKILL.mdとは何か
Week 2 - 暦と気象の深掘り
- Day 8: wareki - 和暦変換。「令和何年だっけ」を殺す
- Day 9: rokuyo - 六曜計算。大安と仏滅
- Day 10: postal-code - 郵便番号検索
- Day 11: yubin-fee - 郵便料金の計算
- Day 12: amagumo - 雨雲レーダー (高解像度降水ナウキャスト)
- Day 13: typhoon - 台風情報
- Day 14: ふりかえり。テストとCI
Week 3 - 防災と住環境
- Day 15: volcano - 火山情報
- Day 16: hinanjo - 避難所検索 (国土地理院)
- Day 17: river-level - 川の水位
- Day 18: air-quality - 大気汚染 (そらまめ君)
- Day 19: heatstroke - 熱中症警戒 (暑さ指数)
- Day 20: geocoding - 住所から緯度経度
- Day 21: ふりかえり。ドキュメント育成
Week 4 - 知識系と締め
- Day 22: station-finder - 最寄り駅 (国土数値情報)
- Day 23: ndl-search - 国会図書館検索
- Day 24: aozora - 青空文庫検索
- Day 25: kokkai - 国会会議録検索
- Day 26: egov-laws - 法令検索
- Day 27: nenkin - 年金の概算
- Day 28: garbage-day - ゴミの収集日 (5374系オープンデータ)
- Day 29: v1.0.0 リリース
- Day 30: 総括。30日で何が生えたか
予定は予定だ。動くと思ってたAPIが動かなかった日は、その話がその日の記事になる。ロードマップの順番も、読者の反応次第で平気で変わる。それも公開開発のうちだ。あとは、このシリーズの制作パートナーであるAIエージェント(Astra)のクオータが、30日間無事に持ってくれることを祈るばかりだ。
なぜ公開開発か
理由は2つ。1つは、黙って作ると手を抜くから。もう1つは、家相の時に学んだ通り、日本の暮らしの知識は現場にしかないからだ。鬼門の減点が実は採光と通風の話だったみたいに、この国の「当たり前」は、書きながらじゃないと見えてこない。コメントで訂正されながら作る方が速い。
30日後、このリポジトリが「日本に住むエージェント」の標準装備になっていたらいい。最低でも、うちのAIの標準装備にはなる。