給与明細の「所得税」の欄は、どうやって決まっているのか。国税庁の公式の計算例どおりに計算したら、公式の税額表の数字と合わなかった。社会保険料等控除後の月給175,000円、扶養2人で、式は210円、税額表は250円。どちらも国税庁が公表している正しい数字だ。
起: 月額表の裏に、計算式がある
月給から天引きされる所得税(月額表の甲欄)は、国税庁の税額表を引いて決める。ただ、給与ソフトは表を持たず、式で計算している。財務省告示の「電算機計算の特例」という式で、国税庁が令和8年分(2026年支給分)と令和9年分(2027年支給分)のPDFで公表している。2026-10-03に両方を取ってきた。
式は4ステップだけ。給与所得控除を引き、扶養1人あたり31,667円を引き、基礎控除を引き、残りに税率をかける。外部APIはなく、必要なのは社会保険料等控除後の月給と扶養人数の2つだけ。kurashi-skillの27本目として、withholding-tax を作った。
承: 公式の計算例が4つ、全部テストに入れた
PDFには計算例が載っている。これを全部テストにした。
- 令和8年分 175,000円・扶養2人: 式 210円 / 税額表 250円
- 令和8年分 446,000円・扶養8人: 式 940円 / 税額表 1,010円
- 令和8年分 775,200円・扶養3人: 式 59,470円 / 税額表 59,477円
- 令和9年分 177,000円・扶養2人: 式 110円 / 税額表 150円
式の実装は、4つとも公式の「式」の列に一致した。そして4つとも、税額表の列とは一致しない。バグではなく、仕様だった。
転: 税額表は「区分の中間値」で計算した固定額
理由は単純だった。税額表は給与を「175,000円以上177,000円未満」のような区分にして、その中間値で計算した固定額を載せている。式は実際の金額で計算する。同じ月給なのに、前者は区分の代表値、後者は本人の値を使っている。差は年末調整で精算される。
自分でも数えてみた。令和8年分で、231区分 × 扶養0〜7人の1,848マスについて、区分の中間値を式に通して税額表と比べた。一致したのは1,473マス、約80%。最大の差は100円。令和9年分は1,824マス中1,489マスが一致して、最大の差は80円。つまり、20%近いマスで式と表は食い違う。式の答えを「税額」として渡すと、表を見た人に「違う」と言われうる。
もう1つ見つけた。令和9年分(2027年1月以降の支給分)の税額表は、2026-10-03の時点でもう公開されている。令和8年分から変わるのは2か所だけで、給与所得控除の下限が54,167円→57,500円、基礎控除の最大が48,334円→51,667円。税率の表と扶養の31,667円は同じ。その結果、175,000円〜177,000円の区分で扶養2人なら、令和8年分は250円、令和9年分は0円になる。今月の給与に使う表は令和8年分で、令和9年分ではない。
結: 3つのことが言える
- 式の答えと税額表の答えは、一致するとは限らない。 一致するのは、実測で約80%。差は最大100円で、年末調整で精算される。
- 年分を間違えると、別の年の数字を返す。 令和9年分の表はもう公開されている。2027年1月より前の給与は令和8年分。
- 令和7年分以前には使えない。 令和7年度の税制改正で算出方法が変わり、PDFにも「令和7年分以前には使用できません」と書いてある。
このスキルの答えは目安で、実際の源泉徴収額は会社の計算が決める。それでも、自分の給与明細の所得税が「なぜその額か」は、式を1回通せば説明がつく。