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「同じ内容・構成違いのExcel」を5つの生成AIに照合させてみた

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「同じ内容・構成違いのExcel」を5つの生成AIに照合させてみた

TL;DR

  • 同じデータを異なる構造で表した2つのExcelファイル(明細データ/集計レポート)を用意し、意図的に4箇所の不一致を仕込んだ
  • Copilot・ChatGPT・Grok・Gemini・Claudeの5つに「この2つのファイルの内容は一致しているか」と尋ね、検出精度を比較した
  • 結果、4箇所すべてを正確に検出できたのはClaudeのみ(コード実行によりpandasで実ファイルを読み込み再集計)。Grokは4箇所中3箇所を検出し、出題側が意図していなかった構造的な矛盾まで指摘した
  • 一方で、5つ全てのAIが見逃した項目が1つあった。数値ではなく、識別子となる文字列の表記ゆれ("On the Rocks Café" vs "On the Rocks Cafe")
  • 「照合しました」という宣言と、実際に正確な照合ができていることは別物。回答が整然としているかどうかは、検証の正確さを保証しない

きっかけ

業務でAIを使っていて、ふと気になることがあった。

「データの突き合わせ」をAIに任せたとき、その回答はどこまで信用していいのか。表計算ソフトの数式と違って、AIの回答は"それらしく"見えてしまう。本当に1セルずつ照合しているのか、それとも雰囲気で「一致しています」と言っているだけなのか、見た目では区別がつきにくい。

そこで、検証用のサンプルデータを用意し、同じ問い「この2つのファイルの内容は一致しているか」を、Copilot・ChatGPT・Grok・Gemini・Claudeの5つに投げてみた。

検証方法

検証データの設計

用意したのは、同じ実績データを異なる構成で表した2つのExcelファイル。

  • 明細データ.xlsx:月×アルバム×配信プラットフォームごとの生データ(正規化された一覧形式、12行)
  • 集計レポート.xlsx:月をヨコ展開したピボット形式の月次サマリー(手動集計を想定、2行)

行数・列数・レイアウトがまったく異なる、「内容は同じはずだが見た目の構造は別物」という、実務でもよくあるパターンだ(システムからの出力 vs 手動で組んだ報告書、のような関係)。

このレポート側に、わざと4つの不一致を仕込んでおいた。

検証条件

  • 各ツールに、両方のファイルをアップロードし、同一のプロンプト(「この2つのファイルの内容は一致しているか確認してください」)で問いかけた
  • 回答内容(検出できた不一致の数・箇所・根拠の示し方)を比較した

結果

ツール 検出数(4箇所中) 特記事項
Copilot 実質0 検算式を提示していたが、答えは仕込んだ誤った数値と一致(後付けの疑いあり)
ChatGPT 1 提示した比較表自体の数値にズレがあった
Grok 3 出題側が意図していなかった構造的矛盾も指摘
Gemini 0 ファイルの中身を見ず、一般的な照合方法のハウツーを回答
Claude 4(全て) コード実行(pandas)で実ファイルを読み込み再集計

各ツールの振る舞いから見えたこと

Copilotは「検証した体」で終わっていた。 回答の中で明細データの数字を足し算する過程を見せていたが、その足し算自体の答えが、実は仕込んでおいた誤った数字と一致していた。つまり実際には計算しておらず、レポート側の数値を結論として先に置き、それに合わせて検算式を後付けした可能性が高い。

ChatGPTは部分的に正しかったが、これも危うい。 1箇所(Bar合計収益)は正確に検出できた一方、提示した比較表の「一致」欄に書かれた集計レポート側の数字が、実際のファイルの値とズレていた。見た目は整然とした表でも、土台のデータ読み取りが不正確だと、結論の信頼性は揺らぐ。

Grokは群を抜いて精度が高かった。 4箇所中3箇所を正確に検出しただけでなく、「集計レポートの合計セルは、同じ行の月別セルを単純に足した数字と一致しない」という、出題側が意図していなかった構造的な矛盾まで指摘してきた。これは実際にコードでファイルを読み込んで再検算しないと出てこない発見で、相当踏み込んだ照合をしていたことがうかがえる。

Geminiは出発点でつまずいた。 「2つのシートが一致するか確認する一般的な方法」というハウツー記事を返しただけで、渡したファイルの中身には一切触れなかった。皮肉なことに回答の最後で「行の順番がバラバラだけど内容が一致しているか調べたい、など特殊なケースなら教えてください」と書いており、まさに今回がその特殊なケースだったのだが、そこに気づかなかった。

Claudeはコード実行(pandasで実ファイルを読み込んで再集計)を介して照合した結果、4箇所すべてを正確な差分・符号付きで検出できた。 さらに「合計欄の数字自体は正しいのに、月別の内訳セルだけがズレている」という、データ入力ミスの起き方そのものへの言及もできていた。

全員が見逃した共通の盲点

精度に差はあったものの、1点だけ、5つすべてのAIが見逃した項目があった。

アルバム名の表記ゆれ:"On the Rocks Café"(明細データ)と"On the Rocks Cafe"(集計レポート、アクセント抜け)。

数値の突き合わせには強くても、データを紐づける「キー」となる文字列が完全に一致しているかどうかは、誰も検証していなかった。おそらくどのツールも「2つの表の対応する行は同じアルバムだろう」と暗黙のうちに位置で対応づけてしまい、識別子そのものの一致確認という、ある意味一番基本的なチェックが抜け落ちたのだと思う。

実務のデータ突合せでは、こうした表記ゆれ(全角/半角、スペースの有無、アクセント記号、大文字小文字など)がVLOOKUPや結合処理で「データが消える」原因になりやすい。数値計算の精度が高いツールでも、ここを見落とすことがあるというのは収穫だった。

まとめ

  • 「照合しました」という宣言と、実際に正確な照合ができていることは別物。自信満々な口調や整った表組みは、検証の正確さを保証しない
  • 実際に計算(コード実行や数式)を介したかどうかが、結果の信頼性を大きく左右する。今回、最も精度が高かったのはコード実行を伴うClaudeと、深く踏み込んで再検算したと見られるGrokだった
  • どんなに精度が高いツールでも、「当たり前すぎて疑わない部分」には盲点が残る。今回でいえば、数値ではなく識別子(アルバム名)の表記ゆれがそれだった
  • 重要なデータ突き合わせをAIに任せる際は、結論だけでなく、根拠となる個別の数値や差分まで開示させ、可能であれば自分でも1〜2箇所サンプル検算するのが安全だと感じた

検証に使用したサンプルファイル(明細データ.xlsx/集計レポート.xlsx)は、架空の音楽配信実績データを模した数値です。


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